2015年09月16日

なぜ「寝かせた肉」はおいしいのか?    No1

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44699

「熟成肉」の人気が高まっている。まだ食べたことはなくても、気になっている人も多いのではないだろうか。また、熟成肉がどんな肉かをあまり知らずに食べている人もいるかもしれない。かくいう筆者も気になるけれど、これまで食べたことがなかった。熟成肉とはどんな肉なのかを探ってみた。

熟成肉ブームが到来
ステーキハウスや焼肉屋の店頭に「熟成肉」の文字が並ぶ。牛丼チェーン店でも熟成肉を使ったメニューが登場した。 熟成肉とは、より長く寝かせた肉のこと。熟成していない肉に比べて旨味や風味が増している上に、肉はやわらかい。 欧米で熟成肉は「エイジングビーフ」としてよく知られたメニューだ。日本での熟成肉ブームは、食肉販売業の日本人がニューヨークのステーキハウスで、肉を包装せず、専用冷蔵庫で風を当てて水分を飛ばしてつくる「ドライエイジングビーフ」を食べたことに端を発する。

「これはおいしいし、目新しい」と目をつけ、数年前に技術を取り入れたことで日本でも火が付いた。 なお、ウェットエイジングという方法もある。これは肉を布でまいたり、真空包装をしたりして冷蔵庫で保管する方法だ。どちらの製法も酵素の働きによりタンパク質が分解し、アミノ酸やペプチドに変化することで、旨味が増す。

「熟成肉」の定義とは?
「肉は腐る直前がおいしい」というが、熟成肉は腐りかけの肉ではない。腐るとは、腐敗細菌が繁殖し、タンパク質などが分解されて悪臭や有害物質が発生すること。一方、熟成肉では、温度や湿度をコントロールして肉を寝かせることにより、腐敗細菌の働きを抑えつつ、肉が本来もつ酵素や有用細菌を働かせて肉の熟成を進めるのである。 ドライエイジングでは、水分を蒸発させるため、うまみが凝縮する。熟成後は、肉のまわりにびっしりカビが生え、表面の色も変わるが、外側をきれいに取り除くときれいな赤い肉が現れる。

「熟成香」とよばれるナッツのような独特な香りも生まれる。ただし、熟成と腐敗は紙一重。取り扱いが悪いと、あっという間に腐敗する。よい熟成肉をつくるには、細心の品質管理と熟練の技が必要だ。 「ドライエイジングでは、食用にできる部分の割合は50〜60%くらい。その上、手間もかかるので、価格が高いのです。ただ、現時点では熟成という加工について共通の定義はなく、会社により加工時の温度や湿度、さらに熟成日数もまちまちです」と、東京食肉安全検査センターセンター長の中島和英さんは話す。

現時点では、熟成肉の定義がはっきりしていないので、手間暇かけたドライエイジングビーフも、冷蔵庫で数日寝かせただけの牛肉も、「熟成肉」といえてしまう。人気の高まりを受けて多くの加工業者が熟成肉に参入しているが、味も衛生状態もまちまち。熟成肉が出回るほど、品質の差は広がり、粗悪な品では食中毒も出かねない。 そこで、農林水産省はドライエイジングビーフを日本農林規格(JAS)に加えた上で、製造方法などに一定のルールを設ける検討を始めた。今秋から検討を始め、早ければ来年度中にルールが決まる予定だ。

昔から日本にも熟成肉はあった
「日本でも、昔から『枝を枯らす』といって、肉を熟成させる方法はあったのですよ」と中島さん。枝肉(内臓を取り除き、背骨から2つに切り分けた状態の肉)を吊るしておいて、熟成させる。昔の肉屋の店先でよく見られた光景だ。 解体直後の肉は死後硬直により硬くなるので、肉がやわらかくなるまで普通の肉でも10日ほど吊るしておくが、枝枯らしでは、枝肉を1カ月から2カ月も吊るしておく。すると肉のまわりに白いカビがびっしり生えるので、食べごろを見極めて肉をおろし、カビを取り除く。肉の色は黒っぽくなるが、脂肪やすじ、肉が一体となっておいしさが増す。

肉の種類によってノウハウがあり、手間もかかるので職人技が求められるが、よりおいしく食べさせるための工夫だった。 一方、欧米では、硬い赤身肉をおいしく食べ、保存性を高めるための工夫がドライエイジングだった。「和牛ならランクの低い赤身の肉がドライエイジングに向いています。乳牛などでもいいでしょう。ドライエイジングは価格の安い肉に付加価値をつけることができるいい方法なのです」と中島さんは話す。

 

 

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2015年09月15日

絶滅危機のウナギは庶民の食卓に戻るのか     No3

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44004

水産総合研究センターウナギ統合プロジェクトチーム(神奈川県・みなとみらい)の田中秀樹氏らがアブラツノザメの卵が餌として有効であることを見つけたことがターニングポイントとなり、2002年には、仔魚をシラスウナギにまで変態させることに成功。2010年には、長年の努力が実を結び、ついに完全養殖が実現した。とはいえ、これは実験室レベル。次の目標は、シラスウナギの量産化である。 これまでは、10リットル
のボール型の水槽に仔魚を飼育し、1日に5回、アブラツノザメの卵にビタミンなどを加え、ペースト状にした餌を与えていた。

餌を与えると、水が汚れるので、毎日仔魚をサイホンやピペットで新しい水槽に移しかえる。この方法は、大変な労力を伴う上に、得られるシラスウナギ1つの水槽に10尾程度だ。 「飼育システムを効率化し、シラスウナギを1万尾規模で安定生産できる飼育方法を開発しています」と同センター主任研究員の増田賢嗣氏は話す。水槽の形から、給餌方法や水槽の洗浄方法など各プロセスを詳細に検討し、地道な工夫を重ねることで、少しずつ飼育規模を大型化させた。その結果、2014年には1 トンの大型水槽での飼育が可能になった。この水槽
で2万8000尾の仔魚を飼育し、441尾をシラスウナギにまで変態させることができ、量産化への展望が大きく開けた。

「大型水槽での飼育に成功しましたが、実用化に向けては、生存率を上げることや飼育日数を短くすることが必要です」と同センター資源生産部部長の桑田博氏は話す。現在の飼育条件では、仔魚がシラスウナギになるまでに、10カ月ほどを要し、天然のウナギよりも時間がかかっている。生存率も実験レベルより低い。生存率が低く、飼育期間が長ければ、当然、飼育コストが高くなる。コスト削減は実用化に向けた重要な課題だ。さらに、アブラツノザメの漁獲量が激減し、エサの卵が手に入りにくくなっていることから、餌の開発も必要だ。

「量産化に向けて、手に入りやすい原料を探し、栄養価の高い新たな餌を開発しています」と桑田氏は話す。 「工業製品と違って、生物を量産する技術は本当に難しいです。まだ課題はたくさんありますが、一刻も早く安定的にシラスウナギを量産する技術を完成させ、生産現場で使ってもらいたいです」と増田氏。完全養殖の成功には40年もの年月がかかったが、シラスウナギ量産化に向けての技術開発は急ピッチで進んでいる。

ウナギが普通に食べられる日を待ち望んで
私たちが、ウナギを食べてきた背景には、需要のままにシラスウナギを獲り続けてきたことがあった。その結果、シラスウナギは激減してしまった。しかし、シラスウナギの量産化が実現すれば、これまでシラスウナギの不足で不安定だったウナギの養殖業も安定するだろう。天然のシラスウナギに頼る必要がなくなれば、私たちも安心してウナギを食べることができる。なんとも待ち遠しい話だが、しばし時間がかかりそうだ。先に述べたように、ウナギの減った原因は、乱獲の他にも自然破壊が進んだことで、天然ウナギの餌が減り、生息できる川が少なくなったことも考えられている。

ただ、ウナギの生態は複雑で、不明な点が多く、資源回復の糸口を見つけるのは難しい。そこで、日本だけではなく、中国や台湾などウナギをめぐる東アジアの国々が力を合わせてウナギを守っていこうという動きもある。このような資源回復の努力や、シラスウナギ量産技術の開発によって、ウナギが普通に食べられる日が来ることを期待したい。

 

 

posted by タマラオ at 06:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記