2015年09月26日

「ベンツはもう、誰でも持ってるでしょ?」 No2

181.JPG
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/276757/083100005/

しかし、FTAは成立したものの、完成車の輸出となると、どこも自国の産業を守るためにさまざまな税金をかけてくる。結局、価格的には日本から輸出するのと変わらなくなるんですね。これではタイで作って輸出する意味がない。かといって、進出したこと自体を否定してしまうと何も残らなくなる。そこで、昨年からタイでの販売に注力し、身の丈に合ったビジネスにシフトしました」 ゼネラルマネ
ジャーの平野葉流架氏。以前は日本でクレイモデラーを担当していたが、4年前からタイに赴任。

ヨントラキットの工場内に設けた光岡車用の生産ラインは年間150〜160台のキャパシティを備えていたが、これを3分の1に縮小。工員も減らし、さらには販売も合弁会社への委託から直営に切り替えた。光岡自動車が重視するメンテナンスやアフターサービスが委託先では思うようにできなかったためだ。 「我々が扱っている車は安くはない。それなりのサービスが求められるのに、対応が悪く、修理にも時間がかかりすぎていた。これはもう自分たちで主導権を握り、日本と同レベルとまでは行かなくても、近い水準に持っていかなければ未来がないと判断しました」

平野氏がまず手をつけたのは、光岡の車を熟知した整備士の育成だ。日本からベテラン整備士を呼び、1年以上もの時間をかけてタイ人整備士を教育し、自分たちで請け負えるメンテナンス体制を整えた。 部品の在庫を持たず、その都度日本から輸出していたやり方も見直した。到着までに時間がかかる上に、代理店が何社も介在して価格が高くなり、客の不評を買っていたからだ。

最上位車種は日本以上の売れ行き
「いまは主要な部品は直で輸入し、ストックしています。タイで作り始めた部品もありますよ。日産のディーラーと交渉して、『ミツオカの車で使っていいパーツ』として認証してもらいました。値引きも可能になりました。お客様からは、『ようやく普通の体制になったね』と言われます(笑)」 セールスの手法もガラリと変わった。委託販売の時代は、「1台売ってなんぼ」のインセンティブ制度。「売ったら終わり」で、その後の顧客へのフォローはほぼ皆無だったが、平野氏はここにも全面的にメスを入れた。

車を売りつけるのではなく、客のライフスタイルを聞く。値引きの話に終始するのではなく、なぜ光岡の車に興味を持ったのか、どんな生活シーンに使うのかをヒアリングする。販売員というよりもアドバイザー的な役割を果たすセールススタッフの育成だ。顧客との時間を大切にしたいと、郊外のバンナーに開設したショールーム。8割は予約客。飛び込みで入店する客も2割ほど。 「例えば、ゴルフがお好きなお客様であれば、それにふさわしい提案をしていく。好みを把握して、内装の提案をする。

日本では当たり前の販売方法ですが、タイでそこまでしている会社はないんですね。光岡の知名度はまだ低い。手間はかかりますが、ここで差別化しなければ選んでもらえません。この8月にショールームをグランドオープンしたのもお客様との会話の場を確保するため。近いうちにカフェも併設する予定です」

いったん信頼関係を築けば、タイ人客はプラスアルファのオプションには前向きだ。4万バーツ(約14万円)かかるガラスコーティングのメリット(洗車が楽)を伝えれば、ほとんどの客が「じゃあ、お願いします」とオプションを追加する。「ヒミコ」を買ったついでに「ガリュー」も買うといった「車のついで買い」するユーザーも、全体の2割を占める。車にそこまでお金をかけたくないシビアな客が多い日本とは違い、客の心に響くアドバイスをすれば目に見えた効果が出るのがタイのマーケット。平野氏がセールススタッフのアドバイス力を強化する理由はここにある。

ショールームで圧倒的な存在感を誇る「ヒミコ」。平野氏の隣にいるのは、タイの自動車業界の超大物。ショールームのグランドオープンにはたくさんのVIP客が足を運んだ。ヒミコはタイの超リッチ層の心をつかみ、年間の販売台数は日本を上回っている。購入後も、スタッフは手書きのDMを発送したり、機会を見て電話を入れて、『お車の調子はどうですか』と尋ねたりするなど、顧客との関係維持に努めている。保証期間が切れた後で入るクレームにも、「対応できません」と突っぱねたりはしない。

要望を聞き、可能な範囲で対応し、歩み寄りの姿勢でクレームに臨む。 「前に、タイで最初に『ヒミコ』を購入された超VIPのお客様から『ドアから風の音が漏れる』というクレームが入ったことがありました。ところが、タイ人スタッフがあたふたしてしまい、『オープンカーだから音がするのは当たり前だ』と言って、お客様を怒らせしまったんですね。僕が出て行って、同乗してみたら確かに音がしたので、お預かりして修理をしたら、信頼していただけるようになった。

それ以来、同じような立場のお客様を紹介いただいたり、VIPが集まるパーティに呼んでいただいたりと応援してもらっています」顧客が自身のネットワークで光岡自動車の良さを伝え、顧客開拓に力を貸す。この傾向は、特に375万バーツ(約1300万円)する一番の高級車「ヒミコ」で強い。年間の販売台数はいまでは日本より上だ。

 

 

posted by タマラオ at 07:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2015年09月25日

「ベンツはもう、誰でも持ってるでしょ?」 No1

172.JPG
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/276757/083100005/

どこでもいいので、バンコクの中心部にあるちょっと高級な商業施設に車で乗りつけてみよう。 スタッフが現れ、駐車場へと車を誘導してくれるはずだ。 だが、誰もが同じ場所に駐車できるわけではない。 高級車は専用のVIP車ゾーンへ、そうでない車はその他のゾーンへ。車のランクによって容赦なく振り分けられる。タイは厳然たる階級社会であると同時に、見た目で判断される社会だ。金持ちは金持ちらしい格好をし、ブランド品を身につけ、高い車に乗る。そして快適な待遇を得る。

重要人物のカンバンとしての自動車
自分の「カンバン」として、威力抜群なのはなんといっても高級車だ。渋滞では道を譲られ、空港の駐車場が「満車」表示で入れない場合でも、別のスペースに案内され、難なく停められることも多い。具体的に言えば、ベンツ、BMW、ポルシェ、フェラーリ。こうした車なら、まず間違いなくVIP車として扱われる。 この華やかな顔ぶれに食い込み、タイの富裕層の支持を着々と獲得している日本車がある。日本で十番目に生まれた自動車メーカー、光岡自動車だ。主に日産の市販車をベースにカスタマイズした車両を販売する光岡自動車は、ここタイでは3つの車種を販売している。2人乗りオープンカーの「ヒミコ」、クラシック型セダンの「ガリュー」、コンパクトセダンの「ビュート」。それぞれ独特のデザインで、存在感は抜群だ。

2015年8月、富裕層の子弟が多く通うバンコク大学で、光岡自動車は車の展示イベントを開催。車をバックに自撮りする学生が続出した。 ミツオカモータータイランドのゼネラルマネジャー・平野葉流架氏は言う。 「タイはヨーロッパの文化が入っているためか、クラシックカーに対して拒絶反応がないんですね。注目されたいという意識も強く、見るからにクラシックな車が売れる。『人目を引きすぎると恥ずかしい』という日本人とは対称的です」

乗るからには目立ちたい。関心を集めたい。それは本当なのか。光岡自動車のユーザーに実際に聞いてみた。 5年前にモーターショーで見かけて以来、「ガリュー」が気になっていたというチラポンさんは、今年ようやく購入を決意。現在、納車を待ちわびているところだ。といっても予算の工面がつかなかったわけではない。工面がつかなかったのはお金ではなく駐車スペース。機械メーカーの社長を務めるチラポンさんは、ベンツ2台にプジョー、シボレーの計4台を所有する超リッチマンだ。

「ベンツは誰でも持ってるでしょ?」
「少し迷っていましたが、やっぱり買ってよかった。ベンツはどこにでもある車ですが、『ガリュー』はそうじゃない。とてもラグジュアリーなので、フォーマルなイベントに出かける際に利用するつもりです」 「ガリュー」購入にあたっては、車体の色は黒、内装はベージュ、サンルーフ付きの仕様に変更した。いずれも自身の好みを生かしたカスタマイズオーダーだ。「内装についてはリアルウッドのパネルやハンドルに変更することも考えています」とチラポンさんは楽しそうだ。

「ビュート」を愛用しているマダム、チダーパーさんにも話を聞くことができた。 「ビュートで走っていると、皆、こちらを見るのよ。ヴィンテージ感のあるクラシックなデザインが目立つので、本当に気に入っています。ほかの車? ベンツも持っているけど、もうありふれちゃって、誰でも持ってるでしょう? その点、ビュートは希少で、注目度は高いですよ」 チダーパーさんの愛車は
クリーム色の「ビュート」。「ベンツ」も所有しているが、現在のお気に入りは圧倒的に「ビュート」だ。

そう言いながら、外装はクリーム色、内装は真紅の色でカスタマイズした「ビュート」に乗ってチダーパーさんは笑顔でポーズを取ってくれた。ベンツは誰もが持つ車ではないが、光岡ユーザーの常識では「持っていて当然」なのだろう。光岡自動車が、タイのマーケットで独自のポジションを確立し始めているのは間違いないようだ。内装は、チダーパーさんの好みを反映して真っ赤に統一。今日はバッグも内装の色に合わせてコーディネート。タイの中間層がターゲットの「ビュート」。価格も手頃でデザインもカジュアル。日本ではこのモデルが一番人気がある。

頓挫した最初の挑戦
だが、その突出した個性ゆえに、容易に成功をつかむことができたかというと、それは違う。光岡自動車がタイに進出して5年。当初掲げていた計画は頓挫し、なかなか受注に結びつかない時期が長かった。 実は、成果が出始めたのは今年、2015年に入ってからだ。マーケットを絞り、あえて工場の機能を縮小し、サービス全般を見直す中で光が見えてきた。 2010年9月、光岡自動車はタイの車体組み立てメーカー・ヨントラキットと合弁会社を設立。初の海外生産に乗り出した。

タイを拠点にしたのは、タイ国内での販売を開始すると同時に、FTA(自由貿易協定)を利用してASEAN域内への輸出を促進するためだ。だが、計画はもろくも崩れ去った。タイの工場の責任者として赴任した平野氏は振り返る。 「当初はタイで生産した車の8割をシンガポールやマレーシア、インドネシア等に輸出しようと考えていました。合弁先も、『近隣諸国のディーラーが買ってくれますよ』と景気の良いことを言ってましたし(笑)。

 

 

posted by タマラオ at 05:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記