2015年06月26日

日立製作所の「年功賃金廃止」 No1

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http://diamond.jp/articles/-/60219

企業人事の先頭ランナー日立製作所の「年功賃金廃止」
読者は、日立製作所という会社にどのようなイメージをお持ちだろうか。筆者は、良くも悪くも日本的で家族主義的な会社だというイメージを長らく持っていた。電機業界なので、率直に言って賃金水準はそう高くないが、年金をはじめとする福利厚生が手厚く、社員は会社の傘の下で真面目に働いてさえいれば、堅実で不安のない生活が送れるイメージの会社だった。

管理職に一定以上のTOEICの点数を求めるなど、近年、国際化を意識した動きを見せてきた同社だったが、今回の管理職の年功賃金を廃止するという発表には、正直なところ驚いた。「日本の企業もここまで来たのか」という感慨を覚える。日立は、もともと人事政策に熱心な会社であり、日本企業の人事制度の先頭ランナー的な役割をしばしば果たす会社だった。たとえば企業年金では、厚生年金基金の充実に務め、運用にも熱心だったし、運用が努力では上手く行かないことがわかると、代行返上、さらに確定拠出年金の導入などの手を打ってきた。そして、その後多くの企業が追随した。

今回の年功賃金の廃止も、同業他社ではパナソニックやソニーなどが追随する見通しを報じられているが、異業種も含めて多くの会社が追随することになるだろう。今回の日立の人事制度変更は、後から日本企業の人事制度全体にとって、エポックメイキングな出来事として振り返られることになりそうだ。付け加えると、日立製作所は前期決算で史上最高益を更新するなど、業績的には絶好調だ。日立に限らず、日本企業ではこれまでこの種の制度変更は、業績が不調の際にやむなく実施されるのが常だった点でも、今回の人事制度変更には驚きがある。

それだけ切迫した必然性があった、ということだろう。
日立製作所の管理職の年功賃金の廃止の背景を、同社の国際化と結びつけて説明する報道が多かったが、国際化ということと賃金に年功要素がなくなって個々人に対して個別化することとの間には、それほど強い必然性は感じられない。より重要なファクターは、人材の流動化だろう。いったん就職した社員が辞めにくく、中途採用で有能な人材をスカウトすることもほとんどないということであれば、年齢と共に賃金が上がる安心感と対前年比較の満足感、さらに将来の報酬を期待して当面の賃金が安いと思っても社員が働く年功賃金制は、社員の満足度のわりに人件費の総額を抑えやすい、行動経済学的にも良くできた仕組みであった。

人材流動化と賃金の個別化 年功賃金廃止の真の原因は?
しかし、特に有能な人材が企業間で移動するようになると、年齢とキャリアで賃金の大筋が決まる「給与テーブル」の存在は、人材争奪戦の制約になる。個人差が大きく、また会社を移っても同様に仕事をしやすい金融業、特に外資系の金融の世界では、個人に対する報酬は一応成果に(稼ぎへの貢献に)結びつけられてはいるものの、人材の需給に応じて個別に決定される「個別化」に向かわざるを得なかった。

日立製作所はテクノロジー企業だ。テクノロジーの世界では、本来個人の能力差が大きく、かつそれが明確に表れやすい面がある。国際化に付随して、人材の流動性が高まる面もあろうが、年功賃金廃止の真の原因は人材の流動化だろう。そして、経済的な必然性から言ってこの流れが元に戻ることはないだろう。日立製作所の管理職賃金は、これまで約7割が年功的な要素で決まってきたと報じられているが、これがなくなることで今後変化しそうなのは、「定昇」(定期昇給)が形骸化することだ。

年齢が1年進むだけで給料が上がる「定昇」は、これとセットに「ベア」(ベースアップ)の交渉をすることで、グループとしての社員の経済条件を組合などが一括で交渉することを可能にしてきたが、報酬の全てが個々の社員の仕事ぶりによって決まるようになると、こうした交渉ができなくなる。

 

 

posted by タマラオ at 05:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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