2015年01月16日

鉄より強い人工血管  No1

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カイコの謎を解き明かし、鉄より強い絹で人工血管をつくる    東京農工大学大学院工学研究院教授 朝倉 哲郎氏

カイコはどうやって体内で絹をつくっているのか――半世紀もの間、世界中の研究者が挑み続けてきた謎を20年かけて解き明かした日本人研究者がいる。東京農工大学教授の朝倉哲郎氏だ。現在、朝倉氏はその成果を応用し、絹製の人工血管を開発。医療分野での絹の新しい可能性を生み出しつつある。

絹の人工血管は血栓ができにくい
体を巡る血管が何らかの問題で機能しなくなってしまった際、その代替として生体組織とは異なる物質で出来た人工血管が使われることがある。朝倉氏が取り組んでいるのは、絹を用いた直径6ミリ未満の小口径の人工血管の開発だ。
人工血管は、血管が閉塞した場合や血管に瘤(りゅう)ができた場合などに、もとの血管の代わりとして使われるものです。血管の大きさは部位により様々で、直径6ミリ未満の小口径の人工血管が使われる部分としては、心臓の冠動脈や下肢の細動脈が考えられます。

心臓の冠動脈が詰まれば心筋梗塞になったり、膝下の細動脈が詰まれば脚を切断せねばならなくなったりするケースもあります。ところが、現在主に使われているポリエステルやフッ素樹脂製の人工血管は、直径6ミリ未満だと血栓ができやすいという問題があります。理由ははっきりと解明されていませんが、材質が影響しているのかもしれません。私は長く絹を研究してきました。絹は丈夫な上に生体適合性が高く、昔から外科手術の縫合糸として使われてきました。そこで、絹で小口径の人工血管をつくったところ、血栓ができにくいという結果が得られたのです。

絹が生体組織に置き換わる「リモデリング」
朝倉氏の研究グループは、絹を編んでつくった直径1.5ミリの人工血管を27頭のラットに移植し、フッ素樹脂製の人工血管の場合と比較した。フッ素樹脂製の人工血管では短期間で血栓ができたのに対し、絹の人工血管は85%のラットで1年後も詰まらず機能した。さらに、興味深い現象が起こっていたのだ。ラットの体内で、絹が生体組織に置き換わり、血管が再生される「リモデリング」が起きていました。血管の主な成分はコラーゲンです。

絹が分解して、その代わりにコラーゲンに置き換わり、血管が再生されたのです。この実験では繭から直接取った非常に細い糸を使いました。それで絹の分解性が高くなり、リモデリングが起きたのだと考えられます。1年で約7割の絹が分解して生体組織に置き換わっていました。これまで人工血管の開発においては、生体内では基本的に「分解しない」というのが要求される性質でした。分解してもろくなっては、瘤ができたり、血液が漏れたりするからです。しかし、生体組織に置き換わり、血管が再生されるのなら話は別です。一定期間ごとに人工血管を取り換える必要もなくなります。私たちは従来の発想を転換し、分解性が高く生体組織にスムースに置き換わる人工血管の開発を目指しています。

 

 

posted by タマラオ at 06:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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