2015年01月15日

JAXA宇宙飛行士・油井亀美也 No2

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――自衛隊で学んだリーダーシップ、フォロワーシップのポイントを具体的に教えてください。
自衛隊には「指揮の要訣」というリーダーシップの鉄則があります。リーダーとしての重要なポイントは、まず部下をしっかりと掌握しておくことです。そのうえで状況を把握し、部下に対して明確な目標を示すことが必要です。掌握にも関係しますが、部下の能力を見て、どうすれば仕事がやりやすくなるかを考えることが求められるのです。また、「幕僚の心得」のようなフォロアーシップの鉄則もあります。結局のところ、指揮官が出す指示を理解するには、指揮官が何を考えているかわかっていなければなりません。

そのためには、みずからが指揮官になったつもりで考えることが求められます。リーダーの立場に立って状況を分析し、自分なりの行動方針を探したうえで、その案をリーダーに提示するのです。つまり、フォロワーであってもリーダーと同じプロセスで考えることになり、それがリーダーシップを強化することにつながっているのです。ただし、あくまでも意思決定をするのはリーダーです。リーダーの決断と自分の考えが異なった場合は、すぐに自分の考えを捨て去り、リーダーの決定に従うのがフォロワーの極意ですね。

――自分の意見を通したいこともあると思いますが、引く「コツ」はあるのでしょうか。

昔から私は、自分の意見は必ずリーダーに伝えるようにしています。それでもリーダーが異なる考えを示すということは、それなりの理由があるはずです。そのときはリーダーの意見を尊重しようと思ってやってきました。理由に納得できない場合はもう少し議論を重ねるかもしれませんが、基本的にはリーダーの意見に従うのが前提です。フォロワーは、自分の意見が通らなかったことを引きずってはいけません。リーダーが決定した意見を吟味し、その欠点を探すべきです。

ただし、決してあら探しをすることが目的ではありません。少しでも欠点を補い、リーダーの考えをより良くするために自分ができることを考え、先回りして動くのが理想的なフォロワーだと思うからです。自衛隊では、リーダーに意見具申をするときにはルールがあります。それは、自分の意見の利点と欠点をオープンにすることです。さらに、欠点を欠点として投げ出してしまうのではなく、欠点を補うための方策まで言うべきだとされています。

テスト・パイロットと宇宙飛行士は似ている
――ここからは宇宙に関するお話を聞かせてください。若田光一さんに続いて国際宇宙ステーションに行くことが決まったときの、油井さんの率直な気持ちをお聞かせください。

私は、小さいころからずっと宇宙を目指してきましたし、宇宙飛行士の候補者に選ばれてからは宇宙飛行のための訓練を受けてきたので、やっと来たかという気持ちでした。ただ、楽しみなことが大部分を占める一方で、まったく知らない世界で自分がしっかりと仕事ができるのか、という不安も少なくないのが本音です。テスト・パイロットの仕事と宇宙飛行士の仕事はよく似ています。テスト・パイロットは、試作機ができたときに、その試作機が安全に飛べるか、計器
類の正しく表示されているか、どのように操作すれば間違いを犯さないかなどを、一つひとつ確かめていく仕事です。その結果として、手順書も作らなければなりません。普通のパイロットは、テスト・パイロットがチェックしたうえで作成した、「この手順通りやってください」という指示書を信じて、その通りに運用することになります。そのため、テスト・パイロットの責任は重大です。

宇宙に当てはめて考えると、私が滞在する「きぼう」は試作機のようなものだと思います。宇宙に浮かぶ「きぼう」を運用するにあたり、本当に安全か、どのように運用すればいいか、使ってみておかしなところがないかを確認します。必要あれば改良し、手順書を書き直すというのは、テスト・パイロットとまったく同じ仕事なのです。「きぼう」は完成したと言われていますが、細かいところは改良や修正を重ねているところです。

たとえば、ロボット・アームの操作をする時に見る画面がありますが、表示される部分を少しずつ修正しています。その修正は、実際に計器に触れる宇宙飛行士の要請に基づいて行われます。仕事のやり方がテスト・パイロットと似ているのは、映画『ライトスタッフ』でも描かれたように、アメリカの宇宙開発がテスト・パイロットから始まっていることが理由の一つなのかもしれません。

――宇宙飛行士に指名されたことで、チームワークやリーダーシップを発揮するための準備もされているのでしょうか。
私はコマンダー(船長)ではありませんが、リーダーの役割を果たさなければならない局面は必ずやってきます。特に「きぼう」の運用に関わるところは、他国の宇宙飛行士たちよりも詳しいので、コマンダーも私に任せてくれるでしょう。その時は、私がしっかりとリーダーシップを発揮したいと考えています。冒頭でお話ししたように、リーダーが何を考えているかわからないと、フォロワーもうまくサポートすることができません。だからこそ、機会があるごとにコマンダーと話をするようにしています。

コマンダーの考えを把握しながら準備することで、宇宙に飛んだ時に、より良い仕事ができるはずだと考えています。

 

 

posted by タマラオ at 06:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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