2014年10月20日

巨大市場の底流 No8

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反対者がいたらカネを握らせるか、最終的には強制的に追い出せば済む。それでも逆らうなら犯罪者である。デベロッパーに資金が必要なら銀行に命じて融資させればいいし、マンションを造り過ぎて大量の空室が出たら公務員住宅ということにして関係者を住まわせればいい。そうやってとにかくなんとかしてしまうのが全知全能の権力者なのである。 となれば投資する方は安心だ。
失敗する可能性がないからである。だからデベロッパーはどんどん造るし、人民はどんどん買う。

そうやって不動産の値段が上がっていく。値段が上がれば、それを目当てにまた買う人が現れる。そうなると、権力者としては相場を下げるわけにはいかないので、持てる全知全能を動員して市況を支える。だから買うほうは安心してまた買う。
キリがないのでこのへんでやめておくが、要は中国の経済成長はこういう「何でもできる」権力に支えられている部分が多分にある。

思考停止を助長した「4兆元」
こうした中国社会の「権力頼み」の構造を一段と強固なものにしたのが、2008年からの2年間で4兆元、現在のレートで約70兆円という超大型の景気刺激策だった。70兆円の効果はさすがに凄まじく、中国の経済成長率は09年1〜3月に底を打ってV字回復。08〜09年の2年間で中国の輸入は2割も増加、「世界経済の救世主」として各国から高く評価された。そして10年には日本を抜いて世界第2位の経済大国に駆け上がる。

これはまさに「何でもできる」権力者の力業の最たる例といえるだろう。これによって中国経済は確かに成長を維持したのだが、その副作用も大きかった。それは前述したような権力者と人民双方の「権力頼み」の構造をさらに助長したことである。人民にしてみれば「世界がどうなろうと安心して投資してよい。権力の力でなんとかする」というお墨付きを得たようなものだ。これで投資をしないのは愚か者だといった風潮が広がり、不動産価格は再びぐんぐん上昇した。

私の友人の1人はリーマン・ショック後に上海市内の130平米ほどのマンションを処分しようとしたのだが、タイミングを逸して売り損なった。その時に付けた値段が380万元(約6500万円)である。やむなく賃貸に出して保持していたのだが、それがみるみる値上がりして現在では600万元(1億円強)になっている。先日会ったら、「売らなくてよかった。まだまだ上がる」とニコニコしていた。権力とはありがたいものだ。
だが、これでは社会の効率は低下する一方で、いつか必ず破綻する。いずれはどこかで止めなければならない。

制約が強まる権力者の「カネ」と「力」
このように中国経済は「何でもできる」権力者と、それに乗って儲けようとする人民という構造の上に成長している。改めて言うまでもないが、これは甚だ危なっかしい構造である。権力者が「何でもできる」ことが経済成長の重要な要素だとすれば、権力者が「何でもできるわけではない」ことが明らかになれば、成長の土台は崩れる。平たく言ってしまえば、中国が常識ある「まともな」体制の国になればなるほど、経済成長の条件が崩れていくと言っているのに等しいからである。

そもそも権力者が「何でもできる」源泉はカネと力(強制力、暴力)の2つである。そのうちカネについては、中国政府はすぐカネに困る状況ではないが、地方政府の債務は急増している。中国審計署(日本の会計検査院に相当)は昨年末、13年6月末時点での地方政府の債務残高が約17兆9000億人民元(約311兆円)に増加、10年末比で67%も増えていると発表した。だいたいこういう具体的な数字を政府自身が発表するようになったこと自体、政府が「まともな」方向に進みつつあるひとつの証左といえる。

 

 

posted by タマラオ at 05:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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