2014年06月21日

なぜ外国人シェフは「日本の包丁」に惚れ込むのか No4

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「そやからうちは日本で一番在庫がある店違いますか」冗談ではなく、真面目な口調で信田専務はそう言った。和泉利器製作所の信田専務。ほがらかな大阪弁で、包丁について説明してくれた 「海外では日本の包丁の評
価は定着してますね。僕もここがなければ海外で包丁屋をやったほうが儲かるんちゃいますか。でも、日本の包丁、言うて売ってるところもありますけど、経営してるのは中国人というケースもあるんで、例えば研ぐというところをはじめ、メンテナンスまでちゃんと情報発信できてないんです。そこのところは今後の課題ですね」

信田専務はスペインで開かれたマドリッドフュージョンという世界最大級の食の学会で、日本の包丁をPRしてきたばかり。歴史ある会社を引き継いでいくのは大変な苦労があると思う。先にも触れたように、日本の包丁の需要が先細りしていっているという現状があるからだ。

飲食店で働く人は増えているのに プロ用の包丁の需要が増えない現状
この箱に入っているのはすべて商品。そちらは写真撮影不可だったが、建物にはこんな風に在庫商品が並んだ棚がいくつもある和包丁を家庭で見かけることはまずなくなった。かつては出刃包丁の一本くらいは家にあったのかもしれないが、魚を切り身で買ってくることが増えた今では家に備える必要性もないのだろう。では、プロ用としての需要はどうか、というと、それも明るい材料はない。堺市が公表している数字によると平成18年度に9.31億円だった生産額は、平成20年度には6.1億円まで減少。

わずか2年で3億円も数字が下がるということは相当なものだ。それにあわせて従業者数も332人から290人と減少している(堺刃物商工業協同組合連合会調べより)。深刻な不況で料亭などの閉店が相次いでいることなどが、その理由として挙げている。総務省「経済センサス・基礎調査」によると飲食業界で働く人の数自体は増加している。にもかかわらずプロ用の包丁が売れないのは零細な小規模店が減少し、一店舗当り従業員の多い大型のお店が増えたことがその理由だ。

セントラルキッチンなどを備えた店では必要なのはパックされた袋を切る『はさみ』くらいなのだろう。例えば飲食店のなかでもっと早い速度で減少し続けているのは「すし店」である。反面、大型の回転寿司などは増加傾向にある、とのこと。回転寿司店などでは切られたネタを各店鋪に供給しているため包丁の必要性はやはり高くない。後継者の問題等もあり、和包丁の未来は明るいものとは言えない。本連載のタイトルどおり、遺産化する日も遠くないかもしれない。

業界全体の仕組みをどこかで変えていかなければならないのだろう。それも包丁文化を支える職人がもっと報われる形で。
僕=樋口の意見としては、家庭に高級な包丁は必要ないと思う。それよりもきちんと研ぐことのほうが重要だ、という旨を記しておきたい。切れ味や使い心地といったものは主観的なものだが、そこそこの値段の商品なら上手に研げば、それなりの切れ味にはなる。ただ、高級な包丁は切れ味が長持ちするので、いいものを使うに越したことはないというだけだ。そもそも包丁文化は単体では存続しえないものである。道具として包丁を使うには『研ぐ』というメンテナンス作業が必要だ。

しかし、きちんと研いだ包丁を使っている家庭、あるいは飲食店がどれくらいあるか、というといささか心もとない。海外に向けての情報発信は課題だが、それ以前に足元が揺らいでいる感がある。今回の包丁取材で僕の気持ちを明るくさせてくれたのは、普段、包丁の表に名前が出ることのない(もちろん伝統工芸士という立派な肩書を持つ人達なのだが)職人、鍛冶と研ぎ師の仕事だった。自らの仕事に誇りを持ち、手の内を隠すことなく披露してくれる人たちと接して、救われたような気がした。

 

 

posted by タマラオ at 07:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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