2015年08月25日

急激な円安進行が日本経済にもたらすリスク No2

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円安でかさ上げされる企業利益 連動して株価も上昇
円安傾向が進むことによって、海外からの旅行者が大幅に増加しており、旅行者がわが国で落としてくれるお金は、見逃すことができない景気の下支え役を果たしている。円安は、自動車や機械、化学、繊維などの大手企業にとっては輸出代金の手取り額が増えるなど重要なプラス要因となる。同時に、生産拠点を海外に移転したり、M&Aで海外売上比率が高まっている企業にとっても大きな福音になる。

生産拠点などを海外に構築している企業は、円高の局面で海外投資を行った格好になっており、投資額が円安によって膨らむことになる。単純に考えれば、1ドル=70円台で投資を行った場合、1ドルにつき50円以上の差益が出ている勘定だ。それと同様に、海外展開を積極的に進めてきた企業は、海外での売り上げが円安によって、自動的に大きく膨らむことになる。例えば、1ドル=100円の為替レートの下では、1億ドルの売り上げは円換算で100億円だが、120円の水準まで円安になると、売り上げは単純に120億円になる。これは利益についても同じ効果がある。

そうした効果が見込める大手企業の決算では、海外子会社との連結ベースで財務諸表を作成するため、利益がかさ上げされるケースが多い。そのため、大手企業の業績は実態以上に回復して見えることもある。企業業績が改善すると、それに直接反応するのは株式市場だ。株価水準は、基本的に企業の収益と連動するはずである。足元でわが国の株式市場が安定した展開を続けている背景には、日銀や年金資金の株式投資があることに加えて、円安メリットが重要な役割を果たしている。株価が堅調な展開になると、株式保有者を中心に資産効果のパスを通して、個人消費を刺激することも期待される。

家計と中小企業への負の影響 地方と都市の格差も拡大
さらに円安傾向が長期間続くかについては色々な見方がある。ただ、米国の政策金利の上昇ペースは、かなり緩やかになるとみられることを考えると、円安・ドル高は7合目、8合目まで来ていると見る。足元の市場動向を観察すると、
ヘッジファンドなど投機筋がドルを買い上がっている兆候が見られ、彼らはどこかで利益確定の売りを仕掛けてくる可能性が高い。円売り・ドル買いのポジション巻き戻しが始まると、ドルの上値が限られると予想する。

今回のように短期間に円安・ドル高が進むと、日米両国の経済にとって不都合な要素が顕在化する。米国から見ると、ドル高は米国の輸出企業にとってマイナスだ。また、海外売り上げのドル換算額が減価する。それらはいずれも、米国の企業業績に逆風となる。米国の産業界から、そろそろドル高に対する懸念が本格化するだろう。米国政府としても、それに対して何らかの方策を講じるはずだ。一方、わが国にとって急激な円安はプラス面ばかりではない。

輸入価格が上昇すると、食料品や衣料品などの値上げを通して家計部門を直撃することも懸念される。家計の消費マインドが冷え込むと、個人消費の伸び悩みが一段と鮮明化することも考えられる。円安で最も大きな影響を受けるのは、海外からの原材料に依存して作った製品を、国内市場に出荷している中小企業だろう。国内市場に特化しているため円安メリットを受けにくく、原材料の上昇によるコストアップを価格転嫁できないからだ。

地方経済を見ると、円安や株高のメリットがあまり波及しておらず、少子高齢化の影響で成長に向けてのエネルギーを見出すことが難しいケースが多い。今回の急激な円安は、そうした地方と都市圏の経済活動の格差を拡大することになる。わが国の産業は構造変化が進んでおり、円安で輸出が大幅に伸びる状況ではなくなっている。むしろ少し長い目で見れば、急激に円安が進んだ後の反動を、リスク要因として頭に入れておくべきだ。

 

 

posted by タマラオ at 06:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記