2015年08月17日

黄色い最強製造業、ファナックの謎 No3

なぜ工場建設が自社株買いを要求するサード・ポイントへの回答と見られたのか、そうでないとすれば、今回の新工場建設の意図は何なのか。疑問が、少しだけ湧いてきた。富士通の「打ち出の小づち」だった 「ファナックの全景
を見てみたいですね」 冗談で言うと、先輩は「待っていました」とばかりに目を輝かせた。「実は前にここに来た時、タクシーの運転手さんから、全体が見渡せる場所を教えてもらったの。近くの高台に行ってみましょ!」

クルマで10分程度走ったところに、その高台はあった。霞の向こうに黄色いファナック工場群が浮かび上がる。視線を左に移せば山中湖と富士山が目に入る。雄大な自然のなかに、人工的な黄色の巨大な建屋。非現実的な光景だ。
「見て、山中湖まで一望できるわ。最高のロケーションね。数年前までファナック社員の名刺に書かれている住所が『富士山麓 山中湖畔』だったことがあるんだよ。それでも郵便物は届い
たらしいの。今も『山梨県 忍野村』で届いちゃうんだって。

だけど、敷地があまりにも広くて、敷地内で手紙が迷子になっちゃうこともあるらしいわ」 スケールの大きい話だ。富士山の裾野にこれだけ目立つ建物が並んでいれば、配達する側は迷いようがないだろう。ただ中に入ったら、自分も郵便物同様、迷子になっちゃいそうだ。

いつからファナックは、富士の樹海にほど近いこの場所に根を張ったのか。「ファナック発祥の地がここなんですか」と尋ねてみた。「ううん、違うよ。かつては東京都日野市に本社があった。ファナックは富士通の1部門が分離独立して1972年に出来た会社だからね。1980年代に約10年の歳月をかけて、都心から富士山麓へと徐々に本社機能を移していったの。その過程で、寮や居酒屋、体育館といった福利厚生施設も作っていった。何もない場所だから、社員が移ってきやすいように配慮したと聞いているよ」

「なるほど、つまりファナック(FANUC)のFは富士通のFなんですね」。 飲み込みの早い後輩風の相槌を打ってみたが、予想は外れた。 「それも違う。『Factory Automation NUmerical Control』の頭文字を
取ったもの。富士通が母体ということを知らない人も増えているんじゃないかな。一方の富士通にとって、高値が付いたファナック株は『打ち出の小づち』と呼ばれていて、経営が苦しくなると保有する株を売却して資金を得ていたんだよ。2009年には富士通の持ち株比率はゼロになったから『小づち』の役割も終えたけど」

意味深な笑みを浮かべたワケ
散策とカメラマンの撮影も終え、一休みかと思いきや、先輩は午後に都内で別取材があるという。食事も取らず、トンボ返りだ。車中で改めて訪ねてみた。「なぜ今、ファナックの特集をやる意味があるのか」。スマホの画面を見せながら先輩は言った。「これ、決算短信。2015年3月期の売上高営業利益率は40%前後になる見通し(4月1日時点ではまだ前期決算発表はされていない)。東証1部に上場している製造業の営業利益率が平均8%程度だから、異様に高いのがわかるでしょ。

リーマンショック後の2010年3月期でもファナックは20%以上の利益率を確保した。さっき話した、NC装置の世界シェアがざっくり50%あって、高収益の源泉だと言われている。ロボットのシェアは約20%。ロボマシンは色々だけど、調査会社の資料なんかを見ると、スマホを削る『ロボドリル』は瞬間風速的に8割ぐらいを占める時もあるみたい」「とにかく、超高収益で世界シェアが高い商品が沢山あるのがファナックなの。米国の大物投資家、サード・ポイントが関心を持つのも分かるわ。

それにも関わらず、この会社について詳しく触れた記事は古いものばかりなんだよね。今は株式市場でも注目が集まっているし、何よりファナック社内も大きく変わろうとしている。その実情を今、深く広く読者に伝える価値はあると思うんだよね」「何でファナックはそんなに強いんですか。何を変えようとしているんですか」 さっきまでおしゃべりが止まらなかった先輩記者が、この時ばかりは意味深に微笑むだけだった。後は自分の足で取材しろということらしい。先輩に振り回されている気もしたが、筆者も「黄色いファナックワールド」に足を踏み入れることになった。

 

 

posted by タマラオ at 06:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記