2015年08月30日

西洋の近代工業化は佐賀山中にルーツあり No3

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43800

お互いを刺激し合った日本と欧州
多くの日本人は、日本が西洋から近代工業を取り入れて今の発展を手にしたと思っているが、300年前にはドイツが日本の技術を必死で取り入れていた――。冒頭に触れた軸受の話も含め、私たちは日本という国のポテンシャルにもっと自信を持っていいのかもしれない。伊東先生のこの記事には、日本からヨーロッパへ、ヨーロッパから日本へ文化が交流することで科学技術が大きく発展していった歴史の中で、なぜか中国や朝鮮半島が取り残されてしまった理由にも考察が加えられている。ここでは次の2文を引用するだけにとどめたい。

「中国のお家芸は強力なイノベーションの展開よりも、商機を読んで廉価な製品を売り尽くし、あとに残るものが少ないといった形であるような気が私にはするのである」 「発想とビジネスにおいて優れる中国は、
同時に腰を落ち着けて本質的に強力な技術革新を成し遂げることに、必ずしも長けていない」 経済発展に伴って地球上で存在感を増している中国だが、本当に世界のリーダーになれるのか――に世界の注目は集まっている。
しかし、リーダーの資質として致命的な欠点が実はここにあるような気がしてならない。


さて、ドイツに伝わってマイセン陶器として発展する有田焼は、ドイツに真似された一方でありがたいお土産をもらうことになる。これについても伊東先生が書いている(「ドイツが有名にした世界の葛飾北斎」)(「現代日本の繁栄は、江戸時代の鎖国に源流あり」)。 その内容をかいつまんで説明すると、マイセンの近くにザクセン銀山という銀を大量に産出する貴重な山があった。そこでは銀を取ったあとに大量のごみの山ができていた。

ドイツの人たちは厄介なゴミだととらえていたが、東インド会社を経営し世界事情に長けていたオランダの人たちには宝の山に映った。そしてただ同然で買い取り、船に乗せて東へ東へと運んで行った。そのゴミは酸化コバルトが多く含まれていることをオランダ人は知っていたのだ。イスラムの国々ではガラスにそれを混ぜてステンドグラスとなり、日本では有田焼の藍色を出す呉須となる。まさに貴重な素材がドイツからもたらされたのだ。

それだけではない。葛飾北斎の有名な「富嶽三十六景」などは、このドイツからもたらされた酸化コバルトの顔料によって実現できたという。ヨーロッパ人を魅了した北斎の有名な絵の数々は、実はドイツの銀山のゴミが原料だったのである。佐賀県の山の中の小さな町に、世界史を変えるだけの力があったという事実は、何とも興味深い話と言えないだろうか。

 

 

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2015年08月29日

西洋の近代工業化は佐賀山中にルーツあり No2

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43800

そして日本の輸出入拠点である長崎を押さえていた佐賀藩は、幕府に内緒の密貿易で有田焼をヨーロッパに輸出し多大な利益を得、これが幕末の反射炉や蒸気船、アームストロング砲などの技術革新につながったことも書いた。
しかし、有田焼が欧州でい人気を得たのは、中国、朝鮮半島の鎖国のおかげだけではもちろんなかった。有田では磁器の技術革新を短期間の間に次々と重ねていく。その高い技術がヨーロッパの人たちを魅了したのだ。

特に有名なのが有田で最も古い窯元の1つ柿右衛門の初代・酒井田柿右衛門が開発した「赤絵付けの技法」と呼ばれるものである。中国から朝鮮半島を経て有田に伝わった磁器は、その白さが特徴で白磁と呼ばれる。
素焼きにされたものに呉須(ごす)と呼ばれる黒い色をした顔料を使って模様を描き、その上に釉薬(ゆうやく=うわぐすり)をかけて本焼きすると、白い素材の上に藍色の模様が現れる。

呉須の主成分は酸化コバルトであり、1300度という高い温度で焼く過程で化学反応を起こしてコバルト特有の青い色を出し、白地に藍色の模様という伝統的な白磁製品となる。 ここまでは中国、朝鮮半島から伝わった技術だが、初代柿右衛門は、藍色の模様だけに満足することなく赤い色の絵付けを加えることによって、中国発祥の白磁の価値を一気に高めた。その模様と色合いがヨーロッパの人たちの心をとらえたのである。

柿右衛門の技はノーベル賞級
赤絵付けは、本焼きが終わって青い色の模様をつけた製品の上に赤い顔料を使って絵を加え、本焼きより低い700〜800度の温度で再び焼いて絵柄を定着させる。 2014年に3人の日本人が青色ダイオードの発明でノーベル賞を受賞したが、初代柿右衛門はこの時代のノーベル賞級の開発をしたと言えるかもしれない。発光ダイオードの場合は周波数の低い赤から高い青へ、白磁の場合は焼成温度の高い青から低い赤へ領域を広げたことによって・・・。

それはともかく、白磁に新しい息吹を吹き込んだ柿右衛門は、さらに赤だけではなく黄色や緑、さらには金色の絵付けも加えた。こうして中国伝統の素朴な白磁は、一気に色彩豊かで豪華絢爛な磁器となったのである。 
そして、徳川時代に唯一貿易が許されていたオランダの東インド会社によって1650年代にヨーロッパに伝わり、貴族たちの間で引っ張りだこの人気商品となり、有田焼は世界一流のブランドとなった。

さて、これまで有田焼と日本の歴史についてまとめると、次のような流れになる。中国・朝鮮半島から技術導入→佐賀藩で有田焼が誕生→ヨーロッパで飛ぶように売れ佐賀藩の財政を潤す→幕末に佐賀藩が真っ先に反射炉を導入し蒸気船やアームストロング砲を開発し明治維新のもう1つの立役者となる→明治維新後の日本の急激な発展の礎を築いた。しかし、実はこれとは全く別の流れが存在した。それは次のようなもので、これまた極めて興味深い。

ヨーロッパに伝わった有田焼は宝石のように扱われ憧れの対象だった→有田焼のコピーを何としても作りたいとドイツのマイセンの人たちが考えた→有田焼に遅れること約100年でマイセン陶器を生み出すことに成功→マイセンで陶器産業が発展→ドイツで窯業から化学、近代工業が発展する礎となる。つまり、ドイツが工業国家として発展する基礎は有田焼が作ったとも言えなくもないのである。これについては、東京大学の伊東乾・准教授がすでに書いている(「ドイツの近代工業は日本のレプリカから始まった」)ので、まだお読みでない方はご一読をお勧めしたい。

 

 

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2015年08月28日

西洋の近代工業化は佐賀山中にルーツあり No1

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43800

有田焼について理解を深める意味もあって、これまで本題から脱線を重ね佐賀藩の歴史について触れてきた。しかし、アームストロング砲や反射炉などについて触れてしまったせいで、思わず"虎の尾"を踏んでしまったようである。 
戦時中、日立製作所で空母用のエレベーターを設計していた老父の目にこの記事が止まり、呼びつけられて潤滑の歴史について講義を受ける羽目になってしまったのだ。

第2次世界大戦末期、大砲や機関銃の弾などに銅合金が大量に消費されてしまい、日本国内で深刻な銅不足を招いた。その結果、様々な機械部品の軸受に使われていた砲金とよばれる銅と錫の合金が手に入りにくくなってしまったという。 この場合の軸受は、自動車や自転車などによく使われている金属球を使う転がり軸受ではなく、回転軸を金属製の円筒に通しその間に注油して軸受とするすべり軸受けのこと。船にスクリューを通す部分を想像すれば分かりやすい。耐摩耗性、耐浸蝕性、潤滑性に優れた砲金はこのすべり軸受けにぴったりだった。

技術者が考えた苦肉の策
一方で、幕末に欧米でも十分に普及していない段階で佐賀藩がいち早く開発・実用化に成功たアームストロング砲には砲身にらせん状の切込みがしてあり、弾が回転して飛び出すようになっていることは前に書いた。
このらせん状の切込みがある鋼鉄製の砲身内を弾が回転しながら進んで行く際にも、砲身を傷つけず、自らも傷ついて暴発しないためには、やはり砲金の優れた特性が必要だった。この結果、大砲や機関銃の弾頭の材料として大量に使用されることになり、第2次世界大戦末期にはついにすべり軸受けとして使う分にも不足するようになってしまったわけである。

困った技術者たちは別の金属で代替する方法を早急に考え出さなければならなくなった。しかも戦時中のこと、使える材料は限られている。そこで知恵を絞った結果生まれたアイデアが、鉄の鋳物を軸受に使えないかというものだった。鋳鉄は脆く耐摩耗性にも乏しいから、普通なら軸受に使おうなどとは考えない。しかし、鋳鉄には無数の巣(す)と呼ばれる細かい空洞がある。この空洞に鉛筆の芯などに使われるカーボンの粉を詰め込んだらどうだろう・・・。

カーボンの粒子は表面が滑らかで、いわば粒子一つひとつが転がり軸受の鉄球のような存在である。軸受に使えば滑らかな回転が得られるのではないか・・・。それに、カーボンの細かい粒子は油と同じような働きも期待できるので、
軸受に油を使わなくてすむのではないか・・・。 日本で実際に油を使わない軸受が実用化されるのは戦後になってからだが、当時、貴重な砲金が使えないためにこんな開発が進められていたというのだ。まさに必要は発明の母と言われるゆえんである。

ちなみに当時、米国は日本やドイツの戦闘機から迎撃を受けないように高度1万メートル以上を飛べる爆撃機(B-29)を戦場に大量投入していた。この高高度を飛べるようにしたブレークスルーの1つが潤滑だったと言われている。

シリコーンをすでに実用化していた米国
気温が摂氏マイナス50度にもなる1万メートルの高度では、常温でさらさらの油でも固くなってしまい潤滑油の働きができなくなる。このため日本が誇ったゼロ戦もB-29をなかなか迎撃できなかった。B-29にはこの時すでに、シリコーンを使った潤滑が使われていたという。さて、寄り道もこのくらいにして創業400年を迎える有田焼の話に戻る。朝鮮半島から技術が伝わった磁器の生産が有田で始まり、一方で中国と朝鮮半島が非常に厳しい鎖国によって世界市場から閉ざされた結果、有田焼が欧州で大人気商品となったことは前回書いた。

 

 

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2015年08月27日

時給8000円を稼ぐ「ビール売り子」の超仕事術 No2

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トップ売り子さんとの違いは何か?
売り子さんを長年研究している「売り子さんファンクラブ」に取材を続けた。すると、この「時給8000円」を稼ぐ売り子さんにはいくつかの特徴があった。というより、売るための戦略が徹底しているのだ。

@ 魚の目、木の目、鷹の目
彼女たちは、いくつもの目を持っている。近くにいる目の前のお客さん。先ほど買ってくれた少し離れた場所にいるお客さん。そしてこれからお代わりを頼みそうな遠くのお客さん。お客様に対する目線、目の届き場所を適宜変えている。
ビールを頼むお客さんを逃さずキャッチしている。もちろん、そのためには、試合の展開を読んだり、買ってくれたお客さんを覚えていたり、ビールを飲むペースを把握していることが必要だ。

A自分の“しるし”=特徴を魅せろ
売り子さんがお客様を見つけていくことは大事だ。しかし、それ以上に必要なことは、お客様から声をかけて頂くこと。そのためには、「選ばれるしるし」が必要である。トップの売り子さんは、実に様々な、個性的な“しるし”を用いている。例を挙げよう。

・髪飾りに、花のモチーフや、キャラクターを付ける

・名札に、手描きのPOPやイラストを加えて、特徴づける

・首に巻くタオルを、球団カラーと合わせる、巻き方を目立たせる

と、実に様々な方法を各自でアレンジしている。自分という売り子を覚えてもらい、また買ってもらうことを考えている。

B販売効率を高めるドミナント戦略
トップの売り子さんは、あちこち歩きまわって、広くお客様を集めているのか。いや違う。(そもそも、売り子さんによって販売エリアが区切られている。)トップ売り子さんは、あまり、広く歩きまわらない。これは、筆者もオドロキの事実だった。実は、彼女たちも歩き回わらずに効率的に売りたい。それはそうだ。重いタンクをあちこち、昇り降りしていては体力が持たない。ビールやガスの補充にだって行かなくてはならない。

ではトップ売り子さんは、どうしているか。自分からまた多く買ってくれるお客さんを、絞って固めていくのだ。あるプロ野球ファンが最初1回ビールを買うとする。その際に、周囲のお客様にも合わせて宣伝・営業する。「今日は○○チームが勝つといいですね!」と元気よく一声添えて。「今、ビールのタンクを替えてきたばかりだから、新鮮ですよ!」と大きな声で勢いを伝える。さらにAで紹介した「覚えてもらうための」特徴を必ず伝えて、魅せる。買ってもらったお客だけでなく、周囲5メートル四方のお客を、自分のファンエリアにしていく。

こうすると、「またあの娘から買いたい」「私も買いたい」「じゃあ、私も」という価値の連鎖が起こっていく。あちこちのお客様を刈り取るのではなく、あるエリアを集中的にファンにしていく。これは、コンビニエンスストアの出店政策、ドミナント戦略そのままだ。後は勝手に売れていく 話を戻そう。ドミナント化で固定のファンができた、エリアも
定着した。すると後は試合展開次第ではあるが、ビールは勝手にどんどん売れていく。いや、ビールが売れるというより、あの売り子さんから買いたくなっているだけか。

時給8000円を達成することは、並大抵ではない。しかし、トップ売り子さんが実践しているエッセンスは、われわれのビジネスにも必ず役立つ。そんなことを考えながら、野球場で楽しみたい。

 

 

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2015年08月26日

時給8000円を稼ぐ「ビール売り子」の超仕事術 No1

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「球場の華」が緻密に組み立てる3つの戦略
http://toyokeizai.net/articles/-/69901

5月も半ばを過ぎ、夏場のように暑い日も珍しくなくなってきたこの時期。プロ野球がいよいよシーズンの本格的な戦いに入ってきている。そんな野球選手と同じように、野球場で奮闘する娘たちがいる。ビールの売り子さんだ。正しくは、「立売スタッフ」という職業名である。プロ野球シーズンだけの季節限定のアルバイトだ。 「ビール、いかかですか〜?」元気のい
い声とともに球場の客席を上へ下と歩き回る彼女たち。艶やかな服装、屈託のない笑顔、キビキビとした対応。

一見すると、華やかな職業、仕事のように見える。「球場の華」といってもいいだろう。だが、そんな彼女たちは、現場の3つの苦労と戦っている。背負うだけでも一苦労 まずは、背中に背負うビールサーバー。
その重さは、15〜18キログラムともいわれる。この仕事に就いた当初は背負うだけでも、一苦労。スタジアムの通路を往復するだけで精一杯だそうだ。2つめの苦労は、急勾配なスタジアムの階段。野球場に行ったことのある方はご存知かと思うが、結構な角度の階段が上から下まである。

お客さんから手が上がれば小走りに駆け上がり、タンクのビールがなくなれば取り替えにバックヤードへ帰る。修行僧のように何度も何度も昇り降りするのだ。最後は天候。2月から始まるオープン戦の頃の寒い風。梅雨時の突然の土砂降り。夏の直射日光――。天候の影響をモロに受けながらも、懸命に販売している。暑くても寒くても笑顔でいなくてはならない。そんな過酷な販売現場ではあるが、ビール売り子さんのアルバイトは若い女性に人気の職業だそうだ。この人手不足の時代でも、人材集めにはそれほど困らないらしい。

歩合制により3時間で3万円稼ぐ売り子も
魅力の1つは、頑張った分だけ得られる、歩合制の給与システムだ。球場や契約している酒店にもよるが、給与体系は大きく分けて以下のような内訳だ。固定給=出勤したことによる手当。ごく少額(交通費500円という名称のこともある)

歩合給=1杯○円、1杯の販売価格の○%がフィードバックされる。販売杯数が増えていくと、歩合の単価が上がったり、ボーナスが支給される

連続勤務給=野球が3連戦でその3日間連続で出勤すると手当追加

皆勤ボーナス=毎月全試合出勤するとボーナス追加

こうした各種成果給が組み合わさっている。歩合給の世界と言われる給与体系である。では、一体この過酷な現場で、この給与体系で、「何杯売って」「いくら稼いでいるのか」。気になるところだろう。
最近、テレビでよく見かけるタレントの「おのののか」さん(プラチナムプロダクション所属)は、以前ビールの売り子さんだったという経歴がある。彼女も、以前は東京ドームで伝説的な販売結果を残したと有名だ。本人の発言によれば、彼女の公式記録は1日に400杯。筆者は、リアルな売り子さんへのインタビューやネットでの情報を探してみたが、400杯というのは、どうやら圧倒的な数字のようだ。

通常は、初級者は50〜80杯。1日100杯前後、これが経験者の中での“平均的な売り子”さんだ。結果、1日の報酬は、9000円前後。時給にすると、2,000〜3,000円となる。これが、各球場に数人は存在する、トップ売り子さんになると、200から多いときで300杯売る。すると1日に2万〜3万円稼げる。時給にすると5,000〜8,000円だ。これは、「とても」いや「かなり」高い給与水準ではないだろうか。月収、年収まで追ってみよう。

月に、12日(3連戦を4回、毎週金曜〜日曜)出勤するとすれば平均的な売り子さんは、月収10万8千円。これも悪くない。トップ売り子さんは、日収2.5万円とすれば、月収30万円だ!時給だと、大企業の役員クラスと遜色ない時給を叩き出していることになる。年収で比較すると、企業の主任〜課長と同じレベルなのだ。

 

 

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2015年08月25日

急激な円安進行が日本経済にもたらすリスク No2

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円安でかさ上げされる企業利益 連動して株価も上昇
円安傾向が進むことによって、海外からの旅行者が大幅に増加しており、旅行者がわが国で落としてくれるお金は、見逃すことができない景気の下支え役を果たしている。円安は、自動車や機械、化学、繊維などの大手企業にとっては輸出代金の手取り額が増えるなど重要なプラス要因となる。同時に、生産拠点を海外に移転したり、M&Aで海外売上比率が高まっている企業にとっても大きな福音になる。

生産拠点などを海外に構築している企業は、円高の局面で海外投資を行った格好になっており、投資額が円安によって膨らむことになる。単純に考えれば、1ドル=70円台で投資を行った場合、1ドルにつき50円以上の差益が出ている勘定だ。それと同様に、海外展開を積極的に進めてきた企業は、海外での売り上げが円安によって、自動的に大きく膨らむことになる。例えば、1ドル=100円の為替レートの下では、1億ドルの売り上げは円換算で100億円だが、120円の水準まで円安になると、売り上げは単純に120億円になる。これは利益についても同じ効果がある。

そうした効果が見込める大手企業の決算では、海外子会社との連結ベースで財務諸表を作成するため、利益がかさ上げされるケースが多い。そのため、大手企業の業績は実態以上に回復して見えることもある。企業業績が改善すると、それに直接反応するのは株式市場だ。株価水準は、基本的に企業の収益と連動するはずである。足元でわが国の株式市場が安定した展開を続けている背景には、日銀や年金資金の株式投資があることに加えて、円安メリットが重要な役割を果たしている。株価が堅調な展開になると、株式保有者を中心に資産効果のパスを通して、個人消費を刺激することも期待される。

家計と中小企業への負の影響 地方と都市の格差も拡大
さらに円安傾向が長期間続くかについては色々な見方がある。ただ、米国の政策金利の上昇ペースは、かなり緩やかになるとみられることを考えると、円安・ドル高は7合目、8合目まで来ていると見る。足元の市場動向を観察すると、
ヘッジファンドなど投機筋がドルを買い上がっている兆候が見られ、彼らはどこかで利益確定の売りを仕掛けてくる可能性が高い。円売り・ドル買いのポジション巻き戻しが始まると、ドルの上値が限られると予想する。

今回のように短期間に円安・ドル高が進むと、日米両国の経済にとって不都合な要素が顕在化する。米国から見ると、ドル高は米国の輸出企業にとってマイナスだ。また、海外売り上げのドル換算額が減価する。それらはいずれも、米国の企業業績に逆風となる。米国の産業界から、そろそろドル高に対する懸念が本格化するだろう。米国政府としても、それに対して何らかの方策を講じるはずだ。一方、わが国にとって急激な円安はプラス面ばかりではない。

輸入価格が上昇すると、食料品や衣料品などの値上げを通して家計部門を直撃することも懸念される。家計の消費マインドが冷え込むと、個人消費の伸び悩みが一段と鮮明化することも考えられる。円安で最も大きな影響を受けるのは、海外からの原材料に依存して作った製品を、国内市場に出荷している中小企業だろう。国内市場に特化しているため円安メリットを受けにくく、原材料の上昇によるコストアップを価格転嫁できないからだ。

地方経済を見ると、円安や株高のメリットがあまり波及しておらず、少子高齢化の影響で成長に向けてのエネルギーを見出すことが難しいケースが多い。今回の急激な円安は、そうした地方と都市圏の経済活動の格差を拡大することになる。わが国の産業は構造変化が進んでおり、円安で輸出が大幅に伸びる状況ではなくなっている。むしろ少し長い目で見れば、急激に円安が進んだ後の反動を、リスク要因として頭に入れておくべきだ。

 

 

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2015年08月24日

急激な円安進行が日本経済にもたらすリスク No1

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http://diamond.jp/articles/-/72773

円安がわが国にもたらすのは プラス面ばかりではない
米国金利の先高観などを背景に、足元で円安・ドル高が急速に進んでいる。5月下旬には、約12年半ぶりの水準となる1ドル=124円台に至った。円安傾向が続くと、自動車等のわが国の主力輸出企業の業績は一段と改善することもあり、株式市場は安定した展開が続いている。一方、急激に円安になると、海外から輸入する製品などの価格が上昇しやすくなる。食料品など原材料を輸入に依存する業界などでは、コストアップ要因につながることが懸念される。

コストアップ要因を価格に転嫁できる大手企業には、それほど大きなマイナスは及ばないだろうが、製品価格を上げにくい中小企業などには大きな痛手になるはずだ。また一般消費者にとっても、輸入製品が急激に上がると財布のひもを締めざるを得なくなる。わが国のGDPの約6割を占める個人消費の伸び悩みが顕在化すると、ようやく回復してきた景気の腰を折ってしまうことも考えられる。

もう一つ無視できない点は、大手企業など円安のメリットを享受できる分野と、国内市場中心の中小企業などデメリットを受けやすい分野で大きな格差が生じることだ。原油価格が低位に安定している現在、
円安傾向はわが国全体にとってみればプラス要因として働くものの、その恩恵を受けにくい分野が存在することは十分に頭に入れておくべきだ。

急激な円安・ドル高の背景には ヘッジファンドのキャリートレード
各通貨間の交換レートである為替は、短期的には金利の動向が大きく影響する。世界の投資資金は、基本的に、金利の低い通貨から金利の高い通貨に流れる。そのため、金利が上がりそうな通貨に対する需要は高まりやすくなる。
大手投資家であるヘッジファンドなどは、相対的に金利の低い通貨で資金を調達し、それを為替市場で高金利の通貨に替えて運用することが多い。有体に言えば、金利差を取るためのオペレーションだ。“キャリートレード”と呼ばれる手法である。

彼らは、“キャリートレード”を時に数百億円単位で行うこともある。その取引量は、年間を通して世界の為替市場の半分程度を占めると言われている。そのため、彼らのオペレーションがどうしても為替市場を動かしてしまう。円とドルの金利の動きを考えると、日銀の黒田総裁が頑張っている間、恐らく円の政策金利が上昇することはないだろう。一方、米国のイエレンFRB議長は、今年中に政策金利を引き上げる可能性が高いことを示唆した。ということは、円とドルの金利差は、今年中にさらに拡大する可能性が高い。

そのビジネスチャンスを、海千山千のヘッジファンドが見逃すはずはない。今年、彼らの多くは、ユーロ売り・ドル買いのポジションで損失を被ったようで、年明け以降の成績はあまり芳しくないと言われている。その損失を取り戻すべく、ヘッジファンドや為替ディーラー連中は、ここへ来て一斉にドル買い・円売りに走った。その勢いはかなり迫力があり、世界の主要為替市場ではドルが買い込まれる展開になった。それに加えて、国内の輸入決済資金を手当てしなければならない、一部のメーカーなどもドルを買いに加わり、ドル上昇を加速する結果となった。

 

 

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2015年08月23日

続く円安、政府による為替介入はあるのか?

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150605-00000004-wordleaf-bus_all

為替市場では円安が続いており、一時1ドル=125円台まで下落しました。これまで基本的に円安は歓迎されてきたのですが、ここまで円安が続くと、行き過ぎを懸念する声が出てくる可能性があります。過度な円安を防ぐために、
政府が為替介入を行うということはあり得るのでしょうか。
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続く円安、政府による為替介入はあるのか?
為替介入とは、為替相場の急激な変動を防ぐため、政府が取引に参加し、相場の安定化を図る措置のことです。具体的には財務大臣の命令によって、日銀が介入の実務を行います。日本はこれまでかなりの数の為替介入を行ってきました。しかしそのほとんどは、ドル買い円売りの介入、つまり円高に対応するための措置でした。為替市場は1973年から変動相場制に移行していますが、短期間、円安になることはあっても、基本的には40年にわたって円高が続いてきました。

急激な円高は日本の輸出産業に打撃を与えると考えられていましたから、積極的に介入が行われていたのです。  1985年のプラザ合意をきっかけに、1ドル=約240円だった円は、わ
ずか1年で150円台まで上昇することになりました。
当初、日本政府はプラザ合意に沿って円買いドル売りの協調介入を行ったのですが、あまりに急激な円高に方針を変更、大規模な円売りドル買い介入を実施したものの、ほとんど効果はありませんでした。

2003年からは再び円高圧力が高まり、為替は110円まで円高が進んでいます。日本政府は2003年に20兆円、2004年には15兆円にものぼる巨額のドル買い介入を実施しましたが、やはり目立った効果はなく、2012年にはとうとう70円台まで円高が加速してしまいます。 ドル買い介入を実施する場合には、国債を発行して円を調達してドルを買い入れます。しかし円高(ドル安)が進んでいますから、購入したドルの価値はどんどん下がっていきます。

借金をして値下がりする資産を買い続けていることになりますから、こうした介入は日本の財政に悪影響を与えます。1995年、大蔵省(現財務省)の国際金融局長だった榊原英資氏(のち財務官)が、米国と歩調を合わせドル買い介入を実施、80円台だった円を100円以下まで下落させることに成功した例もあります(これがきっかけで榊原氏はミスター円と呼ばれるようになりました)が、多くの場合、市場の動きに逆らった介入はあまりよい成果を上げていません。 
こうした教訓もあり、2011年以降、日本政府は為替介入をほとんど行わなくなりました。


また自由市場を重視する考え方が年々強くなっており、過度な介入は国際的にも許容されなくなっています。スイスは行き過ぎたスイスフラン高を回避するため為替介入を行っていましたが、購入したユーロの値下がりで中央銀行の資産劣化が激しくなり、今年の1月、突如介入を停止し、相場が大きく乱れるという出来事もありました。 円安が政治問題に発展した場合には、政府は介入を検討するかもしれません。

しかし、円安は製造業にとってマイナスにはなりませんし、物価目標に対してはプラスに作用します。仮に介入に踏み切ることがあっても、以前のような大規模なものにはならないでしょう。

 

 

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2015年08月21日

超高収益の秘密は「牛丼」にあり No1

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http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150609/284056/?rt=nocnt

ファナックのビジネスモデルを徹底解剖

孤軍奮闘していた「ファナック」特集の取材に、春先から1個下の後輩(飯山辰之介、記者8年目)が加わった。最初に話した時は「製造業に詳しくありません」と言うから不安だったが、筆者(佐藤浩実、記者9年目)が今年4月後半にドイツへ出張している間、日本の機械見本市の取材をカバーしてくれていたそうだ。ファナックの機械を使っている顧客にも、話を聞くことができたという。モノ作りに関心を持つ仲間が増えるのは純粋に嬉しい。帰国早々、会社近くの牛丼屋で取材成果の報告会を開くことにした。

「薄利多売じゃないんですか」
「先輩、ちゃんと取材してきましたよ。都内で開かれた産業機械の見本市『インターモールド』にファナックが出展していたんです。今回はファナックの機械を使っている取引先の話も聞いてきました」 牛丼屋の席に着くや否や、後輩がこうまくしたてる。4月頭に忍野村を散策した時は、眠たそうな顔で、やる気があるのかどうかよくわからなかった彼だが、筆者が日本を離れていた2週間のうちに何かのスイッチが入ったようだ。

ドイツ出張直前、ファナックの「新商品発表会」に連れて行った時に、刺激を受けたのかもしれない。帰国直後でもあり、本当は久しぶりの日本食を堪能したいところだけど、まずは後輩の取材成果を聞こうじゃないの。「どうだった?」
「実は、ちょっと想像と違っていたんです。ある電動工具メーカーの役員によれば、『ファナック製の機械の加工精度はほどほどで、競合の方が良い』そうなんです。先輩、前に忍野村で『ファナックはフェンスで最新鋭の技術を守っている』とか自信満々に話してたじゃないですか。これ、どういうことなんですか」

フェンスの「豆知識」までちゃんと覚えていてくれたのね。感心していると、後輩が続けた。「しかも、いろいろな取引先が『ファナックの商品は安い』って言うんです。『安いから使ってる』なんて話す中小企業の社長もいましたよ。
これで売上高営業利益率40%も稼げるんですかね。薄利多売じゃないですか」 なるほどね。期待していた以上に、後輩は的を射た話を聞き出してきたようだ。日経ビジネス6月8日号特集「孤高の製造業 ファナック 利益率40%を
生む異様な経営」でもドイツで見た具体例を交えて詳報しているが、ファナックの商品は競合製品と比べた時に決して高くはない。

プラスチック部品を作る射出成型機のような例外もあるけれど、むしろ、「総合的に考えると安い」という評価をよく耳にする。そして、出来立てほやほやの新技術を搭載している機械は多くない。なのに、利益率は高い。これには、ファナックの開発思想が大きく影響している。かつて同社の「商品開発研究所」の壁に「ALWAYS KEEP IN MIND(常に意識せよ)」という言葉と
ともに貼られていた、3つの言葉が象徴的だ。 そうだ、この話も後輩にシェアしなくては!

「ファナックの研究開発には、WENIGER TEILE(部品点数を少なく=ドイツ語の造語)、RELIABILITY UP(信頼性を上げる)、COST DOWN(コストを下げる)という3つの指針
があるのよ」

「安い」を作る、3つの研究開発指針
キョトンとした表情の後輩に、もう少し補足する必要がありそうだ。 「WENIGER
TEILEから教えるね。ファナックは部品が増えてしまうような特注品はいたずらに受注せず、シンプルな設計の標準品を販売するの。
特注品だらけの競合メーカーと比べて1品種の生産量が多くなるから、生産工程を自動化するメリットが生まれやすいでしょ。COST DOWNにもつながるよね。あと、新しすぎて不確かな技術では
なく、できるだけ使い慣れた技術を使うのも特徴。モノ作りのための機械だからRELIABILITY
UPをすごく重視していて、8年に1回ぐらいしか故障しないんだとか…」

 

 

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2015年08月20日

潜入、ファナックの「主戦場」 No3

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忍野村には寮が完備されていて、魅力的で高給高学歴の若手がたくさん住んでいるのだ。ついでに質問してみた。「合コンとか、行きますか」「私はあまり行かないですが、結構行ってる人もいますよ。この辺りだと、ファナック社員というだけで合コンでもモテるんです。『男である前に、ファナック社員』なんですよ」 どんな質問にも答えてくれる若手社員さんに改めて感謝申し上げたい。だが、こんなことばかり質問していたら、若手社員さんは取引先との重要な仕事の話ができなくなる。別の方に話を聞こう。

次は「寮も会社も黄色いけど、うんざりしないのか」だ。この辺りは特集に掲載しているので参考にどうぞ。

奥深い世界に入り込む
約束の16時。発表会もお開きの時間に。エントランス前にはバスが何台も連なり、取引先が次々と乗り込んいく。だが先輩の姿がやっぱり見えない。最終バスの発車時刻が迫る。出発の時と同じシチュエーションにうんざりしつつ、エントランスをウロウロしていると、来た。小走りに、満面の笑みで、言った。「やっぱり出資比率の50対50は健在だったよ!」 いきなり何が50対50なのか。何がそんなに嬉しいのか。分からないが、重要な発見だったことは間違いなさそうだ。先輩は続ける。「あっちの奥のほうで、『ファイバーレーザー発振器』を見てきたのね」。

ファナックの新商品、ファイバーレーザー発振器が搭載された産業機械
確か、今日付の新聞に載っていた。ファナックは古河電気工業と共同出資会社を設立し、ファイバーレーザーの製造販売に乗り出すらしい。ファイバーレーザーとは何か。さっぱり分からないが、これまでの経験上、黙っていれば先輩が教えてくれることは分かっている。「・・・『レーザーカッター』って分かる?」。 ほら、来た。「板金をレーザーで焼き切るための
機械なんだけど、そのレーザーを作り出す装置をレーザー発振器と言うの。

これまでは『CO2レーザー発振器』と言われるものが主流だったんだけど、ここ3年ぐらいで『ファイバーレーザー発振器』というのが一気に増えた。実は緑のロボットもそうだったんだけど、以前のファナックはファイバーにも否定的だったのね。でも想定以上に市場が広がったために参入したと私は見ている」。「それと50対50に何の関係があるんですか」「古河電気工業との出資比率が50対50だったんだよね。ファナックって昔から、法律が許す限り出資比率を同じにすることにこだわってきた。

古くは米ゼネラル・モーターズや、米ゼネラル・エレクトリックとの合弁もそうだった。海外にサービス会社を作る時も、現地の有力企業とまず50対50で組む」「その心は?」「『助けてもらおうとか、助けてやろうという意識を排して対等に成長する』というポリシーがあるからなの。今回もそれは健在みたい」 「黄色は戦いの色」とか「合弁は50対50」とか、ファナックには面白い決まりが色々あるようだ。「ところで、そっちは何かいい話はあったの」 と先輩に尋ねられた。

数少ない珠玉の取材成果を披露しよう。「ありましたよ。ファナックの社員はね、モテるんです!」「そうなの?モテるの?面白いじゃない。特集に入れてみよう!」「いいですね!まずはどんなネタでもファナックに関するものなら調べてみましょう。この会社、面白い話がまだまだ出てきそうですもんね!」。 先輩に乗せられて、いつのまにか筆者もファナックの奥深い世界に入り込んでいくのだった。

 

 

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2015年08月19日

潜入、ファナックの「主戦場」 No2

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「緑のロボット」になぜか違和感
会場では黄色いジャケットの社員が、黄色いロボットの説明をしている。この黄一色の世界のなかで、異彩を放つロボットがあった。緑色なのだ。 異彩を放つ「緑色のロボット」「あれ、こいつだけ
なんか色が違いますね。動きも遅い」。先輩に尋ねてみた。黄色いロボットに目が慣れてくると、緑色に違和感を覚えてくるから不思議だ。「初めて見た時は私もその色に衝撃を受けたわ。重たい物を運ぶ時とか、人を助けるような用途を考えているんだって。人と離れて作業する黄色いロボットと区別するために緑色にしてるんだよ」

「人と一緒に働くロボットなんですね。こういうのって珍しいんですか」「いいえ。『協働ロボット』というコンセプトはここ数年いろいろなところで語られている。ちょうど(4月13日から)ドイツで始まっている展示会『ハノーバー・メッセ』でも、スイスのABBが『Yu-Mi』という2本腕のロボットを紹介しているし、独クーカ(KUKA)のブースも協働ロボットで溢れていて、ロボットがビールまで注いでいた。ファナックはどちらかというと、こういうコンセプトに消極的だったんだけど、ついに参入したのよ」

当初は「ファナックイエロー」に引き気味だった筆者だが、緑色を前にすると、「ファナックなんだから黄色くあるべきなんじゃないか」とか思えてくるから不思議だ。正直に先輩にも話してみた。「黄色いロボットじゃないと、ファナックって感じがしないですね」「ふふふ、甘いわね。気づかない?これ、既存の黄色いロボットに緑のスポンジを被せたような設計になっているでしょ。競合メーカーが開発している協働ロボットは、通常のロボットとは設計からして全然違うけど、ファナックの場合は黄色いロボットと共通の部分を増やして、設計開発や製造面での工数増を極力抑えようと工夫してるみたい」

「合理性を極限まで極めようとしているところが、ファナックらしいですね!」
知ったかぶりをしてみた。今回は先輩も満足そうに頷いてくれた。「こういう商品が出てくるところは変わったなと思うけど、確かに利益を出す設計、という軸はぶれない。根本的なポリシーは何十年も変わらないのがファナックなのよね」。
エントランスで先輩から聞いた「ファナックの変化」。その象徴が緑色のロボットらしい。初めて忍野村を訪れた日、先輩からファナックの業績は絶好調だと教わった。ではなぜ、今変化する必要があるのか、これはきちんと取材した方がよさそうだ。

黄色い人たちはモテるらしい
「それじゃあ、ここからは別行動にしましょう。後は勝手に取材してきて。私も聞きたいことがたくさんあるから。16時にエントランス集合で。じゃーね!」 ・・・危惧はしていたが、やっぱり取り残された。誰に何を聞こうか。とりあえず優しそうな若手社員を探す。単独取材の開始だ。「すみません。日経ビジネスという雑誌の者です。一つ質問させて下さい。これは・・・その・・・何ですか?」。取引先に交じって質問してみる。素人丸出しなのは承知しているが、本当に素人だから仕方がない。

「これはワイヤカットと呼ばれる機械です。タービンなど刃物加工ができない細かい加工に向いていて、金型メーカーや部品加工メーカーさんに使ってもらっています」。 呆れられるかと思いきや、若手社員はとまどいながらも、一生懸命、丁寧に説明してくれた。見慣れない黄色い制服のせいで、最初は近寄りがたいと思ったが、話してみれば普通だ。お礼を言って次の取材先を探す。腹をくくって、機械とは関係ない質問を別の若手社員に振ってみた。

機械関連は先輩が根掘り葉掘り聞き回っているに違いない。聞きたいことを聞こう。「すみません。ファナック社員はモテますか」「・・・は?(一瞬の沈黙の後)モテるかモテないかでいえば、多分この辺りではモテるんじゃないですか」。
とんでもない質問にも応じてくれてありがたかった。しかも大きな発見もあった。ファナック社員はモテるのだ。後で調べてみると、ファナックには高学歴の理系社員が多いらしい。給料もいい。

 

 

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2015年08月18日

潜入、ファナックの「主戦場」 No1

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http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150605/283958/?rt=nocnt

初めて黄色い壁の内側に入る機会を得たのは4月14日。ファナックが取引先向けに開く「新商品発表会(オープンハウス)」の取材だった。

「新製品」じゃなくて「新商品」ね
「10時半に新幹線の三島駅に集合ね。ここからファナックが取引先向けにバスを用意しているから一緒に乗っていきましょう。2人で申し込んでおいたからね」先輩との前日の約束通り、10時半に駅に到着するも姿は見えない。電話にも出ない。駅前で待つ2台のバスは既に関係者を乗せ、発車準備を整えている。うち1台は既に満席だ。もしかして先輩寝坊か。一人であの黄色い会社を取材するのは正直心細い。どうしようとオロオロしていると、バスが発車するギリギリの時間に電話が鳴った。

「何やってるの?私もう満席のバスの方に乗っちゃってるよ」。 まだ席が空いていた2台目のバスに慌てて乗り込む。あと少し電話がかかってくるのが遅かったら、取り残されるところだった。 三島駅からファナック本社までは1時間程度。「ファナック通り」から敷地に入り、林を抜けると会場が見えてきた。エントランスは取引先の関係者や黄色いジャケットを羽織ったファナック社員でごった返している。遠方から訪れる取引先も多そうだ。

「こうした新製品発表会は頻繁に開かれているんですか?」「いいえ、年に1度だよ。国内だけじゃなくて、国外からも取引先を招いて、新商品や試作機を紹介しているの。ちなみに『新製品』じゃなくて『新商品』発表会ね。
ファナックでは『商品』と『製品』を明確に区別しているらしいわ。『製品』はただ作ったもの。抜群の競争力と高い利益を生み出す製品だけを『商品』と呼ぶんだって」 相変わらず先輩の「ファナック豆知識」はとどまることを知らない。

もう先輩だけで特集を作れるんじゃないだろうか。存在意義を自問していると、横で先輩がささやいた。「この発表会に4回ほど来てるけど、最近ちょっと雰囲気が変わったんだよね。うまく言えないんだけど、明るくなった感じがする」。
先輩がほのめかした「ファナックの変化」、これは特集の主要テーマである。詳細は本誌をご覧いただきたい。

「落穂拾い」が稼ぎ頭に
発表会場に足を踏み入れる。筆者には見慣れぬ機械が所狭しと並べられている。巨大なロボットが自動車を軽々と持ち上げ、ドリルが猛烈なスピードで正確に金属を削っている。
黄色い制服のファナック社員と取引先関係者とでごった返す新商品発表会場 「さて、これが先々週に少し話した『ロボドリル』ね。この機械、普通の工作機械より少し小さいの。主軸のサイズから『主軸30番』と呼ばれていて、昔はあまり作りたがる会社がなかったんだ」

ファナックの産業機械「ロボドリル」
「工作機械メーカーが主力で作っているのは、もっとサイズが大きい『主軸40番』なのね。40番は、仕様にもよるけど、数千万円するのが当たり前。一方で、30番のロボドリルは数百万円と単価が安い。だから『うまみが少ない』機械って言われていたわけ。ファナック自身も画家ミレーの作品になぞらえて、ロボドリルは『落穂拾い』だと公言していたよ」 もっとも、今はこの「落穂拾い」の機械がファナックの稼ぎ頭に育っているらしい。なぜなのだろうか。疑問を察したかのように先輩は続けた。

「うまみが少ないはずのロボドリルなんだけど、台湾とか中国でEMS(電子機器の受託製造)という業態が成長したことで流れが変わったのね。米アップルが『iPhone』を開発したでしょ。
彼らはデザインを重視して、スマートフォンのケースをプラスチックでなくアルミを削り出して作ることにした。これに韓国のサムスン電子や中国の新興スマホメーカー、小米(シャオミ)など、多くのスマホメーカーが追随したのね。金属を削ってケースを作るのが一般的になったわけ。これで安くてアルミを正確に削れるロボドリルの需要が一気に伸びた」

 

 

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2015年08月17日

黄色い最強製造業、ファナックの謎 No3

なぜ工場建設が自社株買いを要求するサード・ポイントへの回答と見られたのか、そうでないとすれば、今回の新工場建設の意図は何なのか。疑問が、少しだけ湧いてきた。富士通の「打ち出の小づち」だった 「ファナックの全景
を見てみたいですね」 冗談で言うと、先輩は「待っていました」とばかりに目を輝かせた。「実は前にここに来た時、タクシーの運転手さんから、全体が見渡せる場所を教えてもらったの。近くの高台に行ってみましょ!」

クルマで10分程度走ったところに、その高台はあった。霞の向こうに黄色いファナック工場群が浮かび上がる。視線を左に移せば山中湖と富士山が目に入る。雄大な自然のなかに、人工的な黄色の巨大な建屋。非現実的な光景だ。
「見て、山中湖まで一望できるわ。最高のロケーションね。数年前までファナック社員の名刺に書かれている住所が『富士山麓 山中湖畔』だったことがあるんだよ。それでも郵便物は届い
たらしいの。今も『山梨県 忍野村』で届いちゃうんだって。

だけど、敷地があまりにも広くて、敷地内で手紙が迷子になっちゃうこともあるらしいわ」 スケールの大きい話だ。富士山の裾野にこれだけ目立つ建物が並んでいれば、配達する側は迷いようがないだろう。ただ中に入ったら、自分も郵便物同様、迷子になっちゃいそうだ。

いつからファナックは、富士の樹海にほど近いこの場所に根を張ったのか。「ファナック発祥の地がここなんですか」と尋ねてみた。「ううん、違うよ。かつては東京都日野市に本社があった。ファナックは富士通の1部門が分離独立して1972年に出来た会社だからね。1980年代に約10年の歳月をかけて、都心から富士山麓へと徐々に本社機能を移していったの。その過程で、寮や居酒屋、体育館といった福利厚生施設も作っていった。何もない場所だから、社員が移ってきやすいように配慮したと聞いているよ」

「なるほど、つまりファナック(FANUC)のFは富士通のFなんですね」。 飲み込みの早い後輩風の相槌を打ってみたが、予想は外れた。 「それも違う。『Factory Automation NUmerical Control』の頭文字を
取ったもの。富士通が母体ということを知らない人も増えているんじゃないかな。一方の富士通にとって、高値が付いたファナック株は『打ち出の小づち』と呼ばれていて、経営が苦しくなると保有する株を売却して資金を得ていたんだよ。2009年には富士通の持ち株比率はゼロになったから『小づち』の役割も終えたけど」

意味深な笑みを浮かべたワケ
散策とカメラマンの撮影も終え、一休みかと思いきや、先輩は午後に都内で別取材があるという。食事も取らず、トンボ返りだ。車中で改めて訪ねてみた。「なぜ今、ファナックの特集をやる意味があるのか」。スマホの画面を見せながら先輩は言った。「これ、決算短信。2015年3月期の売上高営業利益率は40%前後になる見通し(4月1日時点ではまだ前期決算発表はされていない)。東証1部に上場している製造業の営業利益率が平均8%程度だから、異様に高いのがわかるでしょ。

リーマンショック後の2010年3月期でもファナックは20%以上の利益率を確保した。さっき話した、NC装置の世界シェアがざっくり50%あって、高収益の源泉だと言われている。ロボットのシェアは約20%。ロボマシンは色々だけど、調査会社の資料なんかを見ると、スマホを削る『ロボドリル』は瞬間風速的に8割ぐらいを占める時もあるみたい」「とにかく、超高収益で世界シェアが高い商品が沢山あるのがファナックなの。米国の大物投資家、サード・ポイントが関心を持つのも分かるわ。

それにも関わらず、この会社について詳しく触れた記事は古いものばかりなんだよね。今は株式市場でも注目が集まっているし、何よりファナック社内も大きく変わろうとしている。その実情を今、深く広く読者に伝える価値はあると思うんだよね」「何でファナックはそんなに強いんですか。何を変えようとしているんですか」 さっきまでおしゃべりが止まらなかった先輩記者が、この時ばかりは意味深に微笑むだけだった。後は自分の足で取材しろということらしい。先輩に振り回されている気もしたが、筆者も「黄色いファナックワールド」に足を踏み入れることになった。

 

 

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2015年08月16日

黄色い最強製造業、ファナックの謎 No2

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あれが工作機械。実際には工具を付けた軸が動いて金属を削っているんだけど、X軸方向にこれだけ、Y軸方向にこれだけ、Z軸方向にこれだけってのを、数値で制御し続けているんだよね。だから機械は、加工データ通りにモノを削ることができる。それを司っているのが、NC。『Numerical Control(数値制御)』の頭文字だよ。ファナックの場合はモーターも作っていて、コンピューター部分とセットにして『NC装置』って呼んで販売しているの」

引き気味の筆者に満足気な先輩
次々と登場する専門用語についていくのがやっとだ。適当に相槌を打っていると、予定よりも早く忍野村に到着した。中央自動車道を降りて10分ほど一般道を走ると、突如林の中から黄一色に塗られた工場群が姿を現す。黄色いのは建物だけではない。通りを往来するクルマもトラックも黄色い。歩道には「ファナック通り」と書かれた看板が立っている。「ファナック通り」を往来する黄色い自動車とトラック
「うわ、なんか全部黄色い!なんで工場もクルマもこんな色してるんですか」

異様な光景に引き気味の筆者を見て先輩はなぜか満足そうだ。「そう。黄色はファナックの『戦いの色』なのよ!ファナックの実質的な創業者、稲葉清右衛門氏がそう定めて、何でも黄色に統一したのよ。たとえば・・・」 クルマを下り、先輩の説明という名のウンチクを聞きながらそぞろ歩いていると、黄色い軽自動車が横切った。間髪入れずに先輩が叫び出す。「あ、見て!『ハスラー』まで黄色いじゃない!私、ハスラー好きなんだよね(注:ハスラーはスズキのヒット車)。

クルマも全部黄色いけど、よく見ると車種はバラバラなんだよ。沢山の自動車メーカーにロボットなんかを納入しているから、色んな会社のクルマを購入しているんだって」 先輩の興奮が収まらない。目を輝かせ、小さく飛び跳ねながら今度は自動車向けロボットの話を始めた。「ファナックはロボットで世界シェア20%を占める大手なの。特に強いのは米自動車メーカー。ゼネラル・モーターズとかフォード・モーターとか、いわゆる『米国ビッグ3』向けね。YouTubeでフォードの紹介VTRを見ると、出てくるロボットが黄色いでしょ。

一方で、トヨタ自動車の工場だと、川崎重工業や不二越のロボットが多く目に付くよ。ドイツ系の自動車メーカーはオレンジ色のロボットで知られるクーカ(KUKA)製を採用することが多いけど、最近は変わってきてるみたい」 先輩は新聞記者として5年前からファナックなど機械産業の取材を続けてきた。ビジネス編集部に出向中の今も、特集を組むために準備を進めてきたそうだ。たぶん、その知識をシェアするのが嬉しくてたまらないのだろう。

「この柵を見て。英国スコットランド、エディンバラのホリールード宮殿にあるメアリー女王の浴室脇のフェンスを清右衛門氏が気に入って、参考にしたそうよ。これでファナックは『最新鋭の技術と森の自然』を守っているんだって」 先輩は工場を囲う柵にまで説明を加え出した。ファナックそのものへの関心すらまだ薄いのに、ファナックのフェンスにまで興味を持てと言われても無理な相談だ。この先輩に特集校了までついていけるんだろうか。不安は膨らむばかりだが、まずはフェンスとは別の話題を振らなければ。

「もしかして、ファナックは忍野村以外にある工場も全部黄色で統一してるんですか」 「そうね。少なくとも国内拠点の壁は黄色いよ。そもそもファナックの場合、工場はノックダウン生産を除いて国内だけなの。日本メーカーが生産拠点を海外に移して『地産地消』を進めている中で、国内一極生産を貫く会社は珍しいんじゃない?忍野村が一番大きな拠点で、49万坪の敷地に20棟以上の工場がある」

確かに珍しい話だ。今でこそ円安が進み、生産拠点を国内に戻す動きが出始めているとは聞く。ただ長年続いた円高局面でもファナックは国内生産を貫いたらしい。どうやら変わっているのは外観ばかりではないようだ。 「あとは、鹿児島県霧島市にもセンサーの工場があるよ。比較的新しいところでは2012年に筑波山に近いつくば地区(茨城県筑西市)にロボドリルの工場を建てている。

当時はあんまり景気もよくなくて、多くの人が投資に懐疑的だったんだけど、2014〜2015年にかけて盛り上がったスマホ需要を掴むことができたのは、この工場のおかげと言われているよ。今年2月には、栃木県壬生町に1000億円規模の工場投資をすると発表したよね。自社株買いを求めるサード・ポイントへの回答とも言われたけど、実はあれは昨年から計画されていたことなんだよ」 景気の良くない時に投資したのはなぜなのか。

 

 

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2015年08月15日

黄色い最強製造業、ファナックの謎 No1

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http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150604/283890/?P=1

日経ビジネス本誌6月8日号の特集「孤高の製造業 ファナック 利益率40%を生む異様な経営」では、高収益、高シェアを誇りながら、情報開示が少なく実態が掴めなかったファナックを徹底取材した。 今年2月に米国の「物言う投資ファンド」、サード・ポイントが株式保有を発表して以来、株式市場ではファナックの一挙手一投足に注目が集まっている。だが産業用ロボットや「NC装置」など、一般に馴染みのない商品を開発製造する同社を詳しく知る機会は少ない。

米国の投資家はファナックのどこに目を付けたのだろうか。ファナックとはそもそもどんな会社なのだろうか。 オンライン連載では5回に渡って、本誌特集では描ききれなかったファナックの強さの秘密に迫っていく。実は筆者(飯山辰之介、記者8年目)も2カ月前まで、ファナックについて何一つ知らなかった。長年同社を取材してきた先輩記者(佐藤浩実、記者9年目)に(半ば無理やり)特集班に組み込まれ、謎多きファナックと向き合うことになる。

テンション高い一本の電話
「初めまして!突然だけど、ファナックって会社知ってる?」 3月末、日本経済新聞社への出向が解ける直前、ビジネス編集部の先輩女性記者から突然電話がかかってきた。電話口から彼女のテンションの高さが伝わってくる。 筆者はこれまでインターネット業界を中心に取材してきた。製造業には疎い。さらに業界でも謎が多いといわれるファナックについての知識など皆無だ。

「株価が上がっていることと、情報をほとんど出さない会社で、実態がよく分からない、ってことぐらいなら知ってますが・・・すみません、ほとんど知りません」「あ、そう。まあいいわ。4月1日にはビジネス編集部に戻ってくるんだよね。2人で特集やるから、とりあえず1日は朝7時に日本橋に集合!カメラマンのクルマで富士山の麓にあるファナックの本社に行くからね。よろしく!」先輩は用件を一気に伝えて電話を切った。編集部への復帰初日に早朝出張に出る羽目になる。気は重いが、仕方がない。

黄色い工場、止まらないウンチク
翌朝7時、前日の送別会のアルコールがまだ残る身体を引きずり、日本橋の待ち合わせ場所までたどり着いた。既に先輩は到着している。眠気を抑えつつ尋ねた。「そもそも今回は何をしにファナックに行くんですか?社長インタビューか何かですか?」「予習よ。(ファナック本社がある)忍野村は空気がおいしいよ。楽しみね!」 先輩は朝から元気だ。そしてやっぱりテンションが高い。 都内からファナック本社がある山梨県忍野村へは首都高速道路、中央自動車道を乗り継ぎ1時間半程度かかる。なぜわざわざ「予習」だけのために、忍野村まで行く必要があるのか。この時はまだ理由がわからなかった。

「ファナックって何を作ってる会社でしたっけ」
ファナックについての情報は少ない。同社は決算会見を4年以上開いていない。会社を知るための資料も極端に少ない。これまでメディアの取材も最低限しか受けていなかったという。東証1部の上場企業のなかで、ファナックほどメデイア対応に後ろ向きだった企業はないだろう。 先輩はこの質問を待っていたかのようにまくしたて始めた。 「『NC装置』を世界一売っている会社だよ。あと、『ロボット』と『ロボマシン』も作ってる。

でもロボットって言っても、ホンダの『ASIMO(アシモ)』みたいなマスコット的なロボットじゃなくて、クルマの工場で車体を溶接したりするのに使われる、腕みたいな機械ね。ロボマシンには色々と種類があって・・・。金属を削ったり、ワイヤーで切ったりする機械とか、プラスチックの部品を成形する機械とか・・・。そうそう、スマートフォンを削っているのも『ロボドリル』って呼ばれているファナックの機械だよ」

「・・・・NC装置?」 ロボドリルやらロボマシンやら、意味の分からない単語を連発する先輩に面食らう。一番分からないのはNC装置だ。こっそりとスマホを取り出し、インターネットで検索してみる。「NC装置とは数値制御装置のこと」とある。どうしよう、全く分からない。不安を察してくれたのか、先輩は教えてくれた。 「そうだよね。あまり馴染みはないよね。簡単に言うと、工作機械を動かすコンピューターね。工場で金型とか金属の部品を『ガリガリガリー!』って削っている機械を見たことがあるでしょ。

 

 

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2015年08月14日

中国が民主主義導入を嫌う本当の理由 No2

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44213

中国の人口は13億人だが、都市戸籍を持つ人は4億人、農民戸籍が9億人だ。9億人のうち、都市に出稼ぎに来た3億人の「農民工」は、レストランなどの従業員として働いている。その多くは若者である。農村には老人や子供だけが残されており、都市に比べて著しく貧しい。中国で奇跡の成長の恩恵を受けたのは都市戸籍を持つ4億人だけである。農民戸籍を持つ9億人は取り残されている。彼らは都市に出ても低賃金でこき使われるだけ。

レストランの従業員になっても大した給料が得られないために、働いている店で食事をすることすらできない。それは、昔の奴隷に近い境遇である。

民主化をあえて進めないインテリや中産階級
日本でも飲食チェーン店の劣悪な労働条件が問題になることがある。ただ、そのようなチェーン店で働く人々も、休日に仲間と類似の店で食事をすることはできよう。その程度の賃金は貰っている。格差社会などと言って騒いでも、日本の格差などかわいいものだ。 中国では都市戸籍を持つ4億人が、農民戸籍を持つ9億人の犠牲の上に立って繁栄を謳歌している。中国共産党はここ数年、内需を拡大するために農民工の給料を上げる政策をとってきた。

それによって農民工の給料は少々上がったのだが、その一方で中国の輸出競争力が削がれてしまった。その結果、日本でも「China+1」などと言う言葉が聞かれるようになった。このことからも分かるように、中国の経済発展は農民を安い賃金でこき使うことによって成り立っている。農民を安い給料でこき使うことができなくなれば、大した技術を持っていない中国は成長し続けることはできない。中国が民主主義の導入を嫌う真の理由がここに隠されている。

そして、民主化が叫ばれているにもかかわらず、第2の天安門事件が起こらない理由もここにある。現在、中国の都市の生活水準は先進国並みになった。そんな国で共産党はかなり強引な統治を行っている。それでも都市に住むインテリや中産階級が黙って共産党に従っているのは、彼らが現行のシステムにおける利益の享受者であるからに他ならない。真に民主的な政府ができれば、その政府は9億人もいる農民の意見を代弁することになる。

それでは都市に住むインテリや中産階級の望むところではない。本来、民主化運動は都市に住むインテリや中産階級がその担い手になるはずなのだが、彼らは真の民主化が進めば都市戸籍という特権を失ってしまう。だから、民主化運動が盛り上がらない。これが、いくら非難されても、中国で共産党体制が続く真の理由である。

 

 

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2015年08月13日

中国が民主主義導入を嫌う本当の理由 No1

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44213

北京のレストラン事情から垣間見えた中国の真実
近代的なビルが林立してその間をたくさんの自動車が行き交っている。その街並みは東京やニューヨークなど先進国の都市となんら変わるところがない。北京は世界有数の都市になった。 中心部のオフィス街の地下にはサラリーマンが昼食を取る小奇麗なレストランが並んでいる。一昔前は中国料理が中心だったが、今ではイタリア料理、日本料理などを提供する店も多い。スターバックスやケンタッキーフライドチキンなどもある。

そこで普通に昼食を取ると40元から50元ほどかかる。1元を20円とすると800円から1000円。もはや、北京の物価は東京と変わらない。ものによっては北京の方が高いくらいだ。北京のオフィス街に店を構える飲食チェーン店の経営者の話を聞く機会があった。その話から、中国が抱える深い闇が見えてくる。

自分が働く店に、客としては入れない従業員
昼食時に訪ねたその店は、満員で入り口には行列ができていた。ところが、経営者の話を聞いて驚いたのは、従業員の賃金の低さである。注文を取って料理を運んでいる人の月給は1600元から2000元程度(約3万2000〜4万円)でしかない。それは周辺のレストランでも変わらないそうだ。ボーナスは年2回出されるが、支給額は年間で1カ月分の給料程度に過ぎない。ただ、社員寮に住んで賄い飯がついているために、それでも何とか暮らせると言っていた。

アルバイトも雇っているが時給は16元(約320円)。バイトの場合には寮を用意する必要がなく、社会保険を払う必要もないので、その分、安く済む。ただ、定着率が悪いために、アルバイトを無暗に増やすことは難しいとも言っていた。
経営者は「店の従業員たちは休日などに、自分が働くチェーン店で昼飯を食べたことはないはずだ」と言う。従業員たちには高すぎる。昼食の代金が3時間の労働の対価だとすれば、そんな昼飯は食べないだろう。

日本の飲食店で働いている人が3000円の昼食を取るイメージである。それは他の店でも同じことで、レストランで料理を運んでいる人々の多くは、その店の料理を食べたことがないという。まあ、日本でも超一流の店であれば同じことが言えるかも知れない。だが、中国では昼飯時にサラリーマンが行列を作るような店でも、その店で働く人は、自分が働く店の料理を食べることができない。

都会のOLと出稼ぎ従業員の格差
それでは、店で昼食をとっているサラリーマンは、どれほど収入を得ているのだろうか。店の経営者は、北京では大卒の初任給は3000元程度(約6万円)であるが、中心街のオフィスに働く人々は1万元から2万元(約20万〜40万円)はもらっているだろうと言っていた。女性でも30歳ぐらいの人であれば、数千元はもらっている。そして、オフィスで働く女性の多くは親元から通勤しているので、給料を小遣いとして使うことができる。独身貴族であるとともに、都市戸籍を持っている。

ここがミソだ。そんな彼女たちが小奇麗なレストランで昼食を取っている。ここまでの話に、現代中国を理解する上で重要な情報が多く含まれている。 レストランで働いている人々は農民の子弟である。多くは高卒。北京には出稼ぎで来ている。都市戸籍は持っていない。農民戸籍である。そのために、北京で働いても年金や医療保険の面で、北京の戸籍を持つ人に比べて著しく不利になっている。

 

 

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2015年08月12日

中国株バブル崩壊で見せた共産党政権の狼狽ぶり No2

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強引な対応策は一時しのぎにすぎない
6月12日、上海総合株指数は約5166ポイントの高値を付けた後に下げに転じ、7月8日までに約32%下落した。“上がるから株を買う”から、“下がるから株を売る”という逆回転が始まったのである。その間、中国政府はなりふり構わぬ株価対策を講じた。6月28日には4度目の金利引き下げを行い、29日には年金基金に株式運用を認める方針を発表した。しかし、それでも株価の下落に歯止めがかからず、株価押し下げの要因となり得る新規上場を停止し、証券大手などによる株式の買い支えの方針を打ち出した。

さらに、中国人民銀行は、証券市場に潤沢な資金を供給することを明言し、国有企業や大手企業に株式の購入を求めた。さらに、7月9日には証券当局の高官が、「悪意のある空売りを厳しく取り締まる」との姿勢を明言した。極めつけは、株式の取引停止を申請可能にする制度を導入した。これは、企業自身が「自社の株式が売られて株価が下がりそうだ」と考えると、当局に申請して株の取引を停止することができる仕組みだ。

この制度によって、中国株式市場では一時、上場企業の約半分は取引することができなくなっていた。株式売買を大きく制限する措置で、市場の本質的な機能を不全化する行為だ。これらのなりふり構わぬ対策によって、7月9日〜13日はとりあえず、株価は10%以上反発した。しかし、これで問題のすべてが解決したとは言えない。投資家の中には、売りたくても売れない株式を保有せざるを得なくなっている人もいる。

そうした投資家は、停止措置が少しでも緩めば保有株式の売却に走ることが想定されるからだ。ということは、政府の強引な方策は一時しのぎにすぎず、今後、株価が不安定な展開を続ける可能性が残っていると見るべきだ。

共産党の政権基盤が盤石でないことが浮き彫りに
今回の一連の株価動向とそれに対する政府の対応策を見て、より明確になったことは、中国の株式市場の未成熟さだ。同国の株式市場は主要先進国の株式市場と異なって、投資理論などに基づいて効率的な投資を狙う機関投資家の存在が極めて少ない。逆に、相場の勢い=モメンタムに動かされやすい個人投資家が中心であるため、どうしても株価の振れ幅の大きなマーケットになりやすい。一方、市場の動きをコントロールすべき当局が、本当の意味で市場の本質を理解していない懸念がある。

それは、一連の首をかしげたくなるような力技の政策発動を見ても分かる。これによって、中国の株式バブルの問題が完全に片付いたとは考えにくい。それらを総合して考えると、同国の株式市場は未成熟と言わざるを得ない。世界第2位の経済大国の株式市場と監督当局がそうした状況にあることを、われわれ自身が十分にリスク要因として頭に入れておくことが必要だ。もう一つはっきりしたことは、中国政府の対応のまずさだ。

習近平主席の表情を見ていると常に自信に満ち溢れているようだが、実のところ、共産党政権のコントロールがすべての分野に及んでいるわけではないのだろう。6月中旬以降、株価が下落する局面では、政府の狼狽ぶりと強引な政策が目立った。その背景には、株価が大きく下落して多くの人々に不満が蓄積すると、政府の政策運営に支障が出る懸念があるのだろう。あるいは、さらに進んで共産党政権を維持するのが難しくなることも考えられる。

中国の友人に尋ねても、「景気が落ちていることや異民族のテロなどで、共産党政権に対する人々の信認は低下しているかもしれない」と指摘していた。その意味では、共産党政権は盤石の政権基盤を持っているとは言い難いのかもしれない。今回の株価動向はそうした状況を浮き彫りにしていると言えそうだ。

 

 

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2015年08月11日

中国株バブル崩壊で見せた共産党政権の狼狽ぶり No1

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未成熟な投資家層と市場を理解していない政府
足元で、ギリシャ問題と並んで中国の株式市場の動向が世界中の注目を集めている。人民銀行の金利引き下げなどの影響もあり、同国を代表する上海総合株指数は6月12日までの一年間で約2.5倍にまで跳ね上がった。まさに“株式バブル”の状況だった。バブルは永久に続くことはない。その後、上海の株式市場は下落に転じ、一時は下落に歯止めがかからない状況となった。株価の急落に対して、共産党政権はなりふり構わぬ株価下支え政策を打ち出し、7月9日〜13日、株価はようやく10%以上反発した。

今回の中国株式市場の動向の背景には、個人投資家が取引の約8割を占めるという特性がある。主要先進国の株式市場には、大きく分けて二通りの投資家がいる。一つは機関投資家で、投資理論などの専門知識を持ち、それなりの合理性を持って運用に当たることが多い。もう一つのカテゴリーは個人投資家で、彼らの多くは、どちらかというと機関投資家のように理論には精通していない。その時の相場の雰囲気などに影響されることもある。

中国の個人投資家は、最近、口座を開設して投資を始めた人たちが多いと言われている。彼らは、株式投資で儲かると思えば、資金を借りてでも投資を行う傾向が強いという。同国の経済専門家の友人にヒアリングすると、「一種のギャンブル感覚で株式の売買をしている」と嘆いていた。そうした売買が多いと、今回のように、どうしても株式市場は上下幅が大きくなる。もう一つの注目ポイントは、株価急落に対して、共産党政権が慌てて、なりふり構わぬ“力任せの対策”を打ったことだ。共産党政権は本当の意味で、市場の機能を理解していないのかもしれない。常に自信に満ちているように見えた、中国共産党政権の狼狽ぶりがよく分かる。

政府の株価押し上げ策が バブルを発生させた
今年1〜3月期、4〜6月期の中国のGDP成長率はともに7%だった。ただし、この数字を鵜呑みにしている専門家は少ない。同国経済の総責任者である李克強首相でさえ、実際はさらに下振れ要素があると発言している。重要な経済指標である電力消費量や鉄道の貨物輸送量などを見る限り、中国経済の現状はかなり厳しいと捉えるべきだ。そうした実体経済からすれば、株価が大きく上昇することには疑問符が付く。それにもかかわらず、株価は1年間で2.5倍にも上昇した。

その不思議を解く重要な鍵は二つある。一つは中国政府の政策だ。政府は景気下支えのため、矢継ぎ早に利下げを行うと同時に、株価を押し上げる方策を取った。昨年11月、上海と香港の株式市場は取引の相互乗り入れを可能にした。これによって、従来、制限されていた香港や海外投資家の中国本土への株式投資と、本土の投資家の香港株式投資が解禁された。そうした措置は、中長期的に投資家層を広げる方策として相応の効果がある。

一方、短期的に資金流入が活発になることで、株式市場が活況を呈する場合がある。今回の緩和措置は、中国株式バブル発生の引き金の一つになった。そうした市場環境の変化に加えて、投資の習熟度がそれほど高くない国内の個人投資家が、一緒のギャンブル感覚で株式売買を行った。しかも、人民銀行の金利引き下げによって、資金を借りて投資を行う“信用取引”のコストが大きく下がった。個人の信用取引の拡大が、上昇し始めていた株価をバブルの水準まで押し上げる重要な要素となった。

投資に精通した機関投資家が多ければ、個人投資家の動きを幾分かは抑えることができたかもしれない。しかし、中国の株式市場では、そうした思慮深い投資家の割合は低かった。

 

 

posted by タマラオ at 06:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2015年08月10日

テクノロジー失業 No2

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ロボットが癌の手術をする時代に
製造業一般でも状況は同じだ。ロボットの導入などによって、同期間に約270万人の職が奪われている。特に今後はロボット技術の進展によって、多くの分野で人間がロボットに取って代わられていく。カリフォルニア大学バークレー校の研究者は、ロボットが癌細胞の切除手術の全行程を行う実験をすでに始めているし、ドイツのダイムラーは今年5月、米ネバダ州で無人トラックの走行運転を行った。米国ではトラックの運転手は約290万人もおり、男性の間では最も雇用者数の多い職業である。

将来、トラックや車の運転が完全に無人化されるかどうかは疑問が残るが、少なくとも一部で無人化・ロボット化が進むだろう。ただロボットが人間を凌駕するとの見方は何もいまに始まったわけではない。福岡県北九州市にある安川電機の社長にインタビューしたのはずいぶん前のことだ。産業用ロボットの生産台数で世界1位を誇る同社は、特に自動車を組み立てるロボット製造で業績を伸ばした。いまではロボットがロボットを製造する段階に達している。

今後は産業用だけでなく、家庭内にロボットが入り、職場でロボットが幅を利かせるようになる。逆の見方をすれば、テクノロジーに脅かされない職種は必ずあるはずで、そこに21世紀に生きる人間が磨くべきスキルが見い出せそうだ。前出のコルビン氏は、「もしロボットに置き換えられる職業があるなら、そうすべき」と前置きしたうえで、人間らしい創造力や判断力を必要とする仕事はずっと残ると述べる。企業や団体などのトップは組織をまとめてリードしていかなくてはいけない。

軍隊の指揮官も同じだ。集団をまとめて方向を示す仕事は人間ならではのものだ。 コミュニケーションを必要とする職業もロボットには任せられない。弁護士や裁判官といった司法関連の職業や教育者は人間のものだろう。外科手術はロボットに任せることができても、患者と目と目を合わせて話を聞き、さらに診断をするという作業は人間の医師の方が患者は安心するはずだ。

人間関係の構築は苦手
英オックスフォード大学の研究では、今後5年から10年で人間の左脳が担当する業務、例えば社内の損益計算書の作製や経営分析などはロボットに取って代わられるとしている。だが右脳がつかさどる業務、社内でのチーム作りや企画、商品開発などはロボットにはなかなか及ばない。 となると、21世紀にロボットに負けずに生き抜ける人間は、人とのコミュニケーション能力に優れ、創造力と統率力があり、人の心に共感できる人材のようだ。円滑な人間関係を築くスキルはロボットにはないものだ。

コルビン氏は「21世紀に必須の究極的なスキルは共感」と断言している。これはともすれば、ネットやゲームに熱中し過ぎて1人の世界にこもりがちな現代人の苦手とするスキルなのかもしれない。IT業界のSE(システム・エンジニア)は当分仕事をしていけるが、将来有望な職種は人を動かし、統率していける人物らしい。 これだけを聞くと、21世紀は合理主義からロマン主義に逆戻りするようにも思えるのだが・・・いかがだろうか。

 

 

posted by タマラオ at 06:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記