2015年07月18日

「かんずり」はタバスコを超えるか No1

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http://diamond.jp/articles/-/65909

僕の目の前に一本の瓶がある。ラベルの表面には不思議な書体で『かんずり』と書かれている。瓶はちょうど掌サイズだ。蓋を開けるとガラスが厚いことがわかり、それが質実剛健な印象を与える。辛味調味料である『かんずり』は、『唐辛子と麹、塩、柚子を混ぜあわせ、数年間かけてつくられたもの』だということは知っているが、この商品をはじめて目にしたのはいつだったか。ある日、それは冷蔵庫の棚にあったと記憶しているが、いつだったかはわからない。この商品自体にはずっと昔からそこに存在していたかのような雰囲気がある。

『かんずり』という名称も不思議な響きだ。調べてみると「寒づくり」がその由来だという。そう聞くと寒い季節に薬研やすりばちで唐辛子をする姿が浮かんでくるようである。さらに調べてみると新潟県妙高市の特産であることがわかる。なるほど、たしかにそうラベルにも書かれている。『かんずり』は地方発の調味料なのだ。地方の調味料が全国に広まった例に柚子胡椒があるが、それはいくつものメーカーが製造している。メーカーのなかにはもちろん、大手も含まれている。

ところが『かんずり』を製造できるのは妙高市にある「有限会社かんずり」一社だけである。ところで、増え続けている訪日外国人の来日目的の1位は「日本食」(53.3%)らしい。次いで温泉(46.9%)、ショッピング(40.1%)と続く。細かな数字は年によって違うが、日本食の1位はすでに不動のものとなっている。さらにはお土産としては調味料が好まれているという。世界無形文化遺産に登録された日本食は遺産などではなく、日本人が今も平等に持っている無形の財産だ。

そんな日本食は時折、外国人からあくまで美味しいと前置きしつつも「味が薄い、淡泊、単調」と指摘されることがある。味が薄いということは塩分濃度が少ないという意味ではない。不満の原因は香辛料にある。諸外国の料理文化は元々、腐りやすい食べ物を長く持たせるための香辛料とともに発達してきた歴史があり、それに比べると日本料理は穏やかにうつるのかもしれない。しかし、日本の食文化にも諸外国に誇れる香辛料、調味料がある。『かんずり』はその代表だ。

1本の製品になるまで約4年 新潟の冬の寒気を生かした『かんずり』
妙高市は新潟県南西部、長野県と接する場所にある。実際に足を運んでみると東京から意外と近いという印象だ。今年の3月に北陸新幹線が上越妙高駅に開通すれば、1時間50分たらずで着いてしまうためさらにアクセスは容易になる。
新井駅で電車を降りると、冬の空気が冷たく澄んでいるのがわかる。降り積もった雪が埃の舞い上がりを防ぐためだ。この雪がかんずり造りには重要な役割を果たす。

元々、新潟県妙高市では古くから辛味調味料を手作りしている家庭があった。歴史は上杉謙信の時代まで遡ると言われる。手前味噌ならぬ、手前かんずりが今でも残っているそうだ。もっとも伝統的な形はすりつぶした唐辛子に塩を混ぜただけの多分に郷土色的な風合いが強いものだったようである。有限会社かんずりの社屋があるのは、駅から歩いて15分くらいの場所だ。数年前に新しく建てられた社屋には販売所と見学スペースが併設されている。

販売所には各種、定番の商品の他、他メーカーとコラボレーションした『かんずり酒盗』や『かんずり柿の種』などの商品も並んでいる。訪れた日は大寒の1月20日とあって、僕らを含めた見学者の数も多かった。雪晒し。雪があっての作業なので積雪量が少ない時は車で2時間かけて、山まで唐辛子を運んだこともあったという。「仮設のトイレまでつくって大変だったですよ。でも、熊も唐辛子は食べないみたい(笑)」

見学者の目的は毎年、大寒からはじまる『雪晒し』の工程だ。社屋から歩いて数分の場所に雪晒しのスペースがある。晴れていれば遠くに妙高山を望むことができる見晴らしのいい場所だ。 『雪晒し』とは前年の夏から
秋にかけて収穫し、塩漬けにした唐辛子を雪の上にさらす作業だ。雪が塩分を吸いとり、唐辛子のアクが抜け、さらには辛味がマイルドになる効果があるという。憶測だが緩慢凍結することにより繊維が柔らかくなること、雪が余分な細胞液を吸い込むこと、などの効果が考えられそうだ。

 

 

posted by タマラオ at 06:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記