2015年07月15日

あの英国人一家も驚嘆!? 日本料理に欠かせない小道具「うちわ」の凄さ No2

042.JPG
──料理に使ううちわの特徴を教えていただきたいのですが?
「焼鳥屋さんや鰻屋さんで使われる鰻うちわは表面に柿渋を塗っています。鰻屋さんなんかは匂いで客を呼ぶと言うけれど、叩いて音でもお客さんにアピールするでしょう。柿渋を塗ると強度と防虫、防水性が高まります。それと同じでこちらは七輪の窓口を扇ぐうちわ。狭い口に風を送るための形で、。やわらかいと下の土を叩いてしまうでしょう。だから、こういったしっかりした造りになっています」

──ピンポイントに風を送りたいときに適している、ということですね。
「そうです」 最初に述べたように職人は風で熱を操る。例えば脂が多いうなぎを焼くと、落ちた脂が燃えて味を損ねるので、常に下方向に落としこむように風を送る。そうすることで火が上がることを防ぎながら焼き上げることができる。焼き鳥の場合は表面が凸凹しているので、串に刺さった肉をなでるように風を送る。そうすると熱が均等にあたり、上手に火が入るのである。ガスや電気の熱源ではできない芸当なのだ。

夫婦で作り上げる1本のうちわ細部にこだわった美しさ
製造工程を見学させていただく。ノコで切り込みを入れて、肩骨を打ち込んでいく。天然素材である竹は1本1本、太さや性質が異なるので、加減が必要だと言う。

──できあがった製品は完全に揃っているのに、1本、1本こんなに違うんですね。
5代目当主、島野博行氏と奥様。実は島野さんは次男なのだが、先代の体調が悪くなった折、兄と話しあって継ぐことになったという。「子どもの頃から手伝ってましたからね。抵抗はなかった」 「ナイフ、一回舐める
かどうかだけで変わってくるからね。次は編みこみ。この紐は昔使っていたものが手に入らなくなって、これにしたんだけど、最初白くて浮いちゃったんですよね。それで梅の小枝で草木染めして、こういう色にしてあります。梅はこのあたりたくさん育てているので剪定で小枝が出るんですよ」

神は細部に宿る、という言葉があるが、こうした細かな部分が全体の美しさをつくる。骨を紙ひもで編み、「網竹」といううちわ型に成形する。 「この工程は修正しながら形をつくるのが大事。
編みながらどっかの指で引っ張っているんですよ」
紙ひものテンションで形を保っているからか、緊張感があって美しい。この後の紙を貼っていく作業は奥様の担当。民芸和紙の図版は様々だ。他には押し花もあるし、また島野夫妻が十年前からはじめたという手ぬぐいというパターンもある。
手ぬぐいを張ったうちわをつくりはじめた理由を奥様に訊ねると「楽しいから(笑)」という答えが返ってきた。「色々なかわいい柄があって楽しいので、いいのがあると買ってしまうの。亀田さんという名前の人が亀の絵が入ったうちわを買っていったこともありました。とても喜んでくれましたよ」貼り終えたら、特殊な形の刃物で縁を一気に切り下ろす。これはやり直しのきかない一発勝負である。そして、最後に縁と柄に型紙を貼って完成である。

涼を呼び、調理にも欠かせない日本人の暮らしの知恵

──うちわの良さはなんでしょうか?
押し花のうちわ。光が透けている様子も涼しげだ 「うーんとね。まず風をイメージできる涼を感じるアイテムだということ。実際に使うと手軽で個人個人、自分で自由に調節できる。生活必需品から嗜好品になったとは思いますけれども、今は持ち歩いていただけるような小さなうちわもつくっています。そういうのは喜ばれますね」 『うちわ工房しまの』では伝統文化を
残したい、という想いから、うちわ作り体験も開いている。頼めば持ち込んだ手ぬぐいも貼ってもらえるという。

工房に足を運べば驚くほど種類のあるうちわから自分の好みの1本を購入することもできる。体験教室、押し花やてぬぐい、持ち歩ける小さなうちわ……伝統文化のなかにごく自然な形で新しさがあり、どのうちわも高価すぎず、質の高い日用品として使える。手元に置くならプラスチック製の大量生産品よりずっといい。うちわでおこした風は扇風機やクーラーよりもずっとやさしい。日本人の暮らしに対する知恵を感じることができる。涼を呼び、調理にも欠かせないうちわ。梅雨が過ぎるとこれから熱い夏がやってくる。

 

 

posted by タマラオ at 06:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記