2015年07月05日

なぜ流行る、電機大手の野菜づくり No2

025.JPG
いまだかつてない「垂直立ち上げ」 その後は順調に進みましたか。

今井:いやいや。経営会議でゴーサインが出たのが2013年4月。政府の補助金は9月に出ることが決まりました。即座に植物工場へ衣替えするための工事が始まり、最初の種まきが年末。2月に試験出荷というスケジュールでした。半導体の世界で工場を作り、一気に生産を始めることを「垂直立ち上げ」というけれど、それと同じ。スケジュールのタイトさでいえば、今回の方が大変でした。

同時に味わった苦労は野菜を育てることの難しさです。植物工場と聞くと、野菜を工業製品のように作るというイメージがあるかと思います。最終目標はそうなのですが、プロセスは大変。温度や湿度の管理は当然で、1400平方メートルもの巨大な敷地でレタスを均質に育てるというのは極めて難しい。そもそもレタスは高原野菜で、育成するのに風の流れは結構重要です。これを人工的にどう作り出すか。工場だから土はないけれど、野菜生産の工業化は試行錯誤の連続、まさに「泥まみれ」でした。

富士通が野菜を売る。商流を築くのも大変だったのではないですか。

今井:低カリウムレタスは腎臓病の患者さんにはうってつけの野菜です。そこで病院に自分たちで売り込みをかけましたが、最初はどこでも「なぜ富士通が野菜?」という反応でした。しかし富士通が農業とITを結び付けて効率的な野菜づくりができるようにしよう、そういったノウハウやシステムを農業法人などに提供するビジネスを展開していることを説明し、本業とかかわりがあると言うと興味を持ってくれる。

 もっとも大変なことばかりでもないんですよ。うちのレタスはスーパークリーンルームで作っていますから鮮度が長持ちします。包装を解かなければ冷凍保存で1か月半ぐらいは大丈夫。だから数週間にわたって世界中を航海する大型クルーズ船とかでは重宝される。身近なことでいえばネット通販で売りやすいんです。ネットで野菜を買っても鮮度は保証されているから評判は上々です。先月は楽天市場で予想を上回る170万円の売り上げがありました。

ベンチャー精神の孵化器 事業は軌道に乗ったと。

今井:まだまだですね。初年度1億5000万円の売り上げを目指していましたが、実績は数千万円でした。ただ「富士通の野菜」という物珍しさもあって、メディアなどで取り上げられ、ブランドが浸透し始めました。勝算はあると思っています。

苦労が多いようですけれど、今までまったく手掛けたことのないビジネスを一から立ち上げていることを楽しんでいるようにもみえます。

今井:1年間に2700人ぐらいの工場見学がありました。補助金をもらっているので政府関係者もいますけれど大企業の見学者も多い。どうして見学に来たのか理由を聞くのですが、ある会社の方から聞いた話が面白かった。この商売は儲かるのかを見に来ているというより、大企業が全く未知の分野で新規事業を立ち上げると、どのようなことが起きるのかを知りたいんですね。 各社とも大きな組織ですから成熟分野というのを抱えている。

成長を遂げるには何か新しいことをやらなければならない。既存事業とのシナジーが見込める分野とかいうけれど、門外漢の分野に乗り出した場合はどうなのか。大企業にベンチャースピリットは芽生えるのか。それが会社全体にどのような影響をもたらすのか。そんなことが知りたいと言っていました。同業他社も野菜作りをやっています。それぞれ見学会を開いたりして交流もあります。それぞれ固有の事情があると思いますが、各社ともベンチャー精神の孵化器という側面もあるのかもしれません。

 

 

posted by タマラオ at 07:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記