2015年06月18日

シャープが考え抜いた「失敗の本質」 No4

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「アホとちゃいますか。真剣に考えたら死にますよ」
高橋は言う。「仮に私がものすごいビジネスの方向を思いついたとします。『次はこれだ』と号令をかけて、それが巨大な事業になっても、10年か20年の寿命でしょう。シャープがその時代、時代に応じて新しい事業を生み出せる会社に変わらなければ、危機を脱しても、また同じことの繰り返しで行き詰ります。だから、おかしな企業文化を変えようと言っているのです」。 高橋と水嶋、大西の3人は議論を重ねるうちに、シャープの失敗の本質について認識が一致した。

それを体した高橋が、先輩たちに翻ろうされた奥田に代わって社長になり、社員がチャレンジ精神を発揮できるように企業文化刷新の先頭に立つことになったわけである。 もっとも本人は「オレがやらなければなんて思いませんでした。逃げられないなという気持ちですよ。他に道が無かった」と言う。「僕が社長になれと言われた時は、資金繰り上必要だった1500億円の銀行融資はまだ確約が得られていなかった。

5月14日に内定して記者発表した時には融資が何とか決まったけれど、もし駄目だったら私は1カ月でつぶれてます。そんな社長を誰がやりたいと思いますか」。 冗談も交えて、あけすけにものを言い、時に開き直る。運命のいたずらで社長になったが、性格は結構タフなようだ。どん底をはう会社のかじ取り役には向いているのかもしれない。「アホとちゃいますか。鈍感なんです。真剣に考えたら死にますよ。今でもね」と煙に巻きつつ、過去との決別をしたたかに進めている。

経営再建中のシャープはどこへ向かうのか。危機的な状態はいつまで続くのだろうか。社長の高橋興三(60)は「危機は永遠の問題だと考えています。メディアやアナリストは『構造改革はどこまで進んだのか』と尋ねますが、ゴールはありません。1000年たっても、やっていますよ」と語る。 2013年3月末に6%まで落ち込んだ自己資本比率は、リストラを進めて14年9月末に10.6%になった。しかし変動の激しいエレクトロニクスの世界では、とても安全圏とは言えない。

かつては40%を超えていた。「自己資本比率がたとえ40%や50%になっても、危機はずっと続くんです」と高橋の見方は厳しい。未来永劫、危ない会社のままと言っているわけではない。気を許せば「会社なんて、あっという間にひっくり返ります」との認識が背景にある。1970年に社名を早川電機工業から製品のブランドに合わせてシャープに変えて、70年代には「電卓のシャープ」としてならした。「液晶のシャープ」は、73年に電卓の表示装置に液晶をいち早く採用したことに始まる。

液晶テレビに先鞭をつけ、ソニーやパナソニックを抑えて国内トップの液晶テレビメーカーにのし上がったところまでは、称賛すべきだろう。ところが直後に業績が暗転し倒産一歩手前まで追い込まれた。その結果、1年半前に社長になった高橋は企業の危うさを身にしみて知っている。だから「企業文化の改革が重要になるんです」と言う。

「シャープの人はとにかく威張っている」
シャープは、経営トップの強いリーダーシップの下で成功体験を重ねたため、上意下達が習い性になった。上の意向を下位者が絶えず気にかけ、物事を決めるのに時間がかかり融通がきかない。トップを中心とする一種の天動説経営になり、外に対しては夜郎自大に振る舞う体質が根づいた。シャープの尊大さには定評があった。部品や材料を納めている大小のメーカーから、悪評をよく聞いた。例えば、ある上場企業の役員は「シャープの人はとにかく威張っている」と話していた。

ある部品メーカーの社長からは「シャープは製品を納めた後で契約時の価格を値切ることもある。払いの良いサムスン電子にどうしたって寄って行きますよ」と聞かされた。誇張も多少あるだろうし、今はシャープも姿勢を改めていると思う。業績が傾いたので、抑えられていた悪い話が表に出てきたのである。社長内定後まだ就任前の高橋に取材した時、それを伝えたら、わかっていた。「『ざまあみろ、いい気味だ』といった声が、昨年からぽつぽつと耳に入ります。知り合いの人が『高橋さんだから言うけど』と、悪い評判を教えてくれます」

技術担当の代表取締役副社長執行役員である水嶋繁光はこう語る。「力の弱かった頃のシャープは、外から新しい技術を持ちこまれると『ぜひ、うちも一緒にやらせて下さい』と積極的に対応したものです。大きくなると、『これには、こんな問題があるのじゃないか。それを解決してから持って来てよ』と注文を付けるようになった。相手はシャープと共同で解決したくて持ちかけているのに、そんなことを言われたら、2度と持って来ませんよ」。気づかないうちに、大事なチャンスを逃していたのかもしれない。

 

 

posted by タマラオ at 06:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記