2015年06月12日

なぜタイで「セキスイハイム」が売れたのか

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http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150225/277976/

2月上旬、タイ・バンコク。市内は渋滞が酷く、屋台から薫るスパイシーな匂いが排気ガスに混じり鼻を突く。日本から遠く離れたこの熱帯の地で、ニッポンの家が売れていると聞き、訪れた。注文住宅「セキスイハイム」を国内で販売する積水化学工業が、タイの建材大手と合弁で展開する「SCGハイム」である。積水化学工業がタイで展開する「SCGハイム」のモデルハウス。このタイプは、居間から出入りする“タイ式”の設計を取り入れている

「セキスイハイム」と言えば、日本を代表する「プレハブ化(工業化)」住宅の1つ。かつて、積水化学工業の住宅部門が「積水ハウス」として独立した後、再度、自社事業として立ち上げたのがセキスイハイムだった。柱と梁を一体化させた鉄骨ラーメン構造のユニットを工場で作り、配線からスイッチ類まで約80%を工場で完成させる独自の「ユニット工法」が有名だ。この工法をそのままタイに持ち込んだ。 積水化学工業がタイ市場に参入したのは2009年。

当初は建物の平均価格が4500万円ほどする富裕層向け商品を中心に展開していたが、2013年からは平均床面積60坪、平均価格500万バーツ(約1900万円)と広さ・価格を抑えた新商品も投入。200万〜300万バーツを中心価格帯とする現地の業者より割高だが、中間層を取り込みながら昨年から販売数が急伸している。昨年の年間販売戸数は約160棟、今年は300棟をうかがう勢いだ。 ただし、ここに至るまでには「品質の理解」という大きな壁があった。

タイ大手、SCGの威光
現地の工務店が手がける家のほとんどが、コンクリートとレンガ、モルタルによるアジア式の家。完成まで1年〜1年半かかるのが当たり前だ。対して、気密性・断熱性に優れ、工期も数カ月で済む日本の工業化住宅が優位であることは言うまでもない。ただ、タイ人によって、鉄で家を作ること自体、あり得ないこと。まして工場で作るとなれば、想像の域を超えた話だ。 「住宅はその国の文化・歴史・風土に根付いているもの。日本のやり方をそのまま持ち込むのはかなり難しい。

品質を理解してもらう認知活動は非常に苦労した。本当に売れるのか、そもそも、そんな必要があるのか、という葛藤すらあった」 積水化学工業でタイ市場の開拓を手がけた住宅カンパニーの藤原雅也・海外事業推進部長はこう振り返る。いったい、積水化学工業は壁をどう乗り越えたのか。そこには3つのポイントがあった。 SCGハイムがタイで放映しているテレビCM
(YouTubeから)。インターネットや電話経由で、モデルハウス見学へと誘導する

見学会は週末に開催され、モデルハウスからバスで工場まで送迎する。15分のプレゼンテーションを経て、20〜30分かけて生産ラインを見学。次に敷地内のモデルハウスに移動し、工場で作られたユニットを組み立て、家にしていく作業のデモンストレーションを行う。工場見学会でのデモンストレーション。クレーンでつり上げられたユニットが別のユニットとはまり、家になっていく  クレーンでつり
上げられたユニットが「ガチャン」と音を立ててつながり、家となる。

その様子にタイ人は拍手喝采で喜び、スマートフォンで写真を撮る。2013年に406組863人だった参加者は2014年、約4000人まで激増。見学会はこれまで月3回程度の開催だったが、人気に応え、今年1月は6回開催した。 「タイ人は新しいもの好き。イベントやお祭りも好きな国民性。見学会は住宅を工場で作るということがピンとこないタイ人に非常に好評」と藤原部長は話す。その場で家が組み立てられる驚きの光景は、即座にフェイスブックなどのSNS(交流サイト)で共有され、拡散する。「評判がすぐにネットで広まる国。工場見学会も、始まって早々、すごい勢いで広まった」(同)。

この口コミの威力が、壁を乗り越えた3つ目のポイントだ。 「ジャパンブランドの復権は可能」
口コミのネタは、工場見学会だけではない。もともと地場の工務店の施工品質は悪く、住宅購入者の多くが不満を抱いている。藤原部長曰く「売ったら売りっぱなしの文化。保証や定期保守という概念はなく、消費者センターの苦情の多くが住宅絡み。建築の質の悪さを身にしみてわかっている」という。 そんなタイ人からすれば、SCGハイムのサポートは別次元。2011年に起きた深刻な大洪水災害の時は、社員総出で点検に回り、荷物を2階に上げるのを手伝ったり、日本から持ち込んだ機材で洗浄・消毒をしたりと手厚いアフターケアを行ったが、このことが「信じられない対応」「素晴らしい」と即座にネットで出回り、SCGハイムの株が上がった。

快適な住環境も、SCGハイムの購入者がタイ最大の掲示板「パンティップ」などで報告している。それを見た閲覧者からの「SCGハイムは日本の家のよう。お金が溜まったら買いたい!」「全てが夢に叶ったような家」といった羨望の声も目立つ。 タイに根付きつつあるニッポンの家。2015年度は完全黒字化させ、2021年には「年間1000棟、売上高300億円」の達成を目指す。藤原部長は言う。「住宅産業は保守的な業界。海外進出は遅れている。でも今回やってみて、やればできると分かった。間違いなく、まだ日本の品質への信奉はある。ジャパンブランドの復権は可能だと思う」。

 

 

posted by タマラオ at 07:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記