2015年04月24日

浅草かっぱ橋通りの「藤田道具」店主・藤田雅博さんのケース    No4

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「外食店のオーナーなどから、値切りを求められることがある。それで、値段を安くせざるを得なくなる。そのような関係になると、今度は『ツケで支払う』という条件で購入をしてもらうことにもなりかねない」 藤田さんは、経営者として「ツケ」には注意している。かっぱ通りに面する店の中には、「ツケで支払う」という“約束”を信じ、商品を売ったものの、その代価をお客に支払ってもらえず、ついには倒産した店もあるという。

ここにも、小資本の店や会社が陥りやすい罠がある。競争が激しくなると、弱い者の立場はどんどん弱くなり、強者はますます強くなる。その差は、実はお金などの資本力ではない。自分たちを「強者」にしていく仕掛けがあるかないかなのだ。言い換えれば、弱い立場に甘んじ、搾取される店や会社は、「弱者」になることをあえてしている。そのことに気がつくことなく、無駄な時間やお金を投下し、疲弊していく。冒頭で述べた通り、業界をシュリンクさせる原因は、むしろ自分たちでつくっている傾向が強い。

時代のニーズについていかないと小資本の経営は絶対に行き詰まる
藤田さんは、「時代のニーズについていかないと、店の経営は絶対に行き詰まる」と繰り返す。 「うちは、インターネット販売をすることで息を吹き返した。親父は、
『かっぱ橋通りに店があれば、シャッターを開ければ客は来る』と言っていましたが、その考えでは、今の時代は経営ができない。あのとき、ネット販売に乗り出していなかったら、今頃は危なかったかもしれません。他の店のホームページを見ると、死んでいる場合も少なくない。うちは気をつけていきたいです」

藤田道具のホームページには、多くの商品の写真や値段が丁寧に載せられている。随時、更新もしている。その路線は、これからも守っていくという。たい焼きやたこ焼き、今川焼き、お好み焼きなどのつくり方を学ぶ講習会も開く。さらに今後は、「有名な人に来店してほしい」とも話す。 「アメリカの大統領夫妻などにお出でいただきたい。CNNな
どにも取材に来てほしい」

大きな夢のような話だが、実は一昨年(2010年)、その願いがかなった。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が横浜市(神奈川県)で開かれた。その際、参加したアジアの国の大統領夫人が来店したのだ。インターネットで店のことを知ったらしい。 3〜4台のパトカーに先導され、颯爽と現れた夫人は、店内で40分ほど品を見て回り、4万円ほど購入したようだ。藤田さんによると、焼き鳥を焼く道具を探していたのだという。

「僕らはどうしていいか、わからなかった。社員ら数人で、店内でずっと立っているしかできなかったけど……。ありがたいことだった。これからも、あんな機会が増えるといいな」最後に、社員教育について聞いてみた。私が取材で観察すると、小さな店の経営者は得てして社員に厳しい。藤田さんは苦笑いをして話す。 「僕は、激しく怒ることはしない。言いたいと
きはあるけど……。親父が厳しくて、優秀な人も辞めていった。何人も……。

それで人がいなくなり、1人で仕事をしている姿を何度も見た。僕はあのようにはなりたくない。みんな、よく働いてくれていますから、むしろ感謝している」藤田さんに“社長室”はない。店の奥で、数人の社員と机を並べ、仕事をしている。その周りには、数え切れないくらいの書類や商品が並ぶ。後ろのステンレスの棚には、父親の小さな遺影が飾ってあった。この親子の心は、今も1つなのかもしれない。

 

 

posted by タマラオ at 06:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記