2015年03月10日

「虚飾の消費」に飽きた中国人

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https://www.blwisdom.com/strategy/series/china/item/9813-63.html

人気がなくなった「ブランド上海蟹」
最近、中国の消費に大きな変化が表れている。かつて中国では、ぜいたく品がよく売れ、贈答品は高額化する一方、レストランは高級店ばかりがはやるという現象が広まった。しかし、この1〜2年、その動きが目に見えておさまり、より落ち着いた、成熟した「大人の消費」が目立ってくるようになった。これは大きな変化で、中国社会の大きな前進であると私は思う。この変化は日本人や日本企業にとっては大いに歓迎すべきもので、チャンスは大きくなっている。

私が最近、最も大きな変化を実感したのは、秋の名物である本場、陽澄湖産上海蟹の値段が暴落したことである。俗に上海蟹と呼ばれる大閘蟹の中でも同湖産はミソが多く、肉に甘みがあるなどとして珍重される。今年は夏の気温が低く雨が多かったことなどから生育状態がよく、味もよいと言っていた。今年の生産量予測は2300トンと去年よりも20%近く多いという。  今年の出荷は9月下旬に解
禁となったのだが、出荷価格は一斤(500g)あたり130元(1元は約20円)と同200元だった昨年と比べて35%も下がった。

過去10年で同湖産の出荷価格が前年を下回ったのは初めてのことだという。これまでの出荷価格は2009年が120元(500gあたり、以下同)だったものが、10年140元、11年150元、12年180元、13年200元と急速に値上がりしていて、養殖業者は投資を増やしていただけに予想外の減収にがっかりしている。中でも影響が大きかったのが、主に贈答用に用いられる「生きた上海蟹の詰め合わせ」だ。オスとメス各5匹のセットは、昨年は588元のものが主流だったが、今年は中心価格帯が528元もしくは488元に下がってしまった。

ではみんな上海蟹を食べなくなってしまったのかといえば、そんなことはない。近所のスーパーでもたくさん売っているし、レストランでも食べている人は多い。むしろ私の印象では、上海蟹の存在がポピュラーになったぶん、庶民レベルの消費量は増えているのではないかと思う。でも陽澄湖産ブランド蟹の価格は大きく値下がりした。人々の消費行動のパターンが変わってしまったのである。

「ラグジュアリー月餅」も大暴落
上海蟹と並ぶ秋の伝統的食品として欠かせないのが、中秋節に食べる月餅だ。中秋節は日本でも「十五夜のお月見」として知られるように、旧暦8月15日に満月を鑑賞する風習がある。日本では月見といえば団子だが、中国では月餅である。丸いところから「円満」の縁起を担いだものだろう。今年は9月8日がその日にあたっていた。  しかし近年、都市部では月見で月餅を食べ
る習慣は薄くなり、日本のお中元やお歳暮のように「季節の挨拶」として取引先などに贈答品として月餅を贈る需要が中心になってきた。

有名レストランや5つ星ホテルなどが日本円で数万円もするラグジュアリー月餅セットを発売し、それが予約だけであっと言う間に売り切れになる。ある程度の社会的地位のある人の自宅は月餅の山となり、高級幹部や役人などへの付け届けに使われる例も多く、社会問題化するほどの過熱ぶりだった。  最近では贈答の習慣が「進化」し、月餅が一種の「疑似
通貨化」する現象が起きていた。つまり、この時期になると街角に月餅の回収業者が登場し、月餅を定価の1〜2割の値段で買い取り、定価の半額ぐらいで販売する。

月餅メーカーも心得たもので、こういう事態を想定して市販の多くの月餅は日持ちがするようにできているし、人から人へ転々としても大丈夫なように真空パックなどでしっかりと包装してある。極端な話になると、月餅を販売しているその菓子店で、脇に「月餅、高価で買い取ります」という貼り紙がしてあったりする。 昨今ではさらに一歩進んで、月餅そのものではなく引換券を贈り、もらった人はそれを換金するようになった。

月餅を売っている店の近くにはこの時期、換金業者がたむろしていて、「券買うよ、券買うよ」と道行く人に声をかけていたものだ。最初から換金が前提になっているわけで、日本のパチンコ店の景品交換を思わせる。最近はその引換券すらなくなって、微信(WeChat、中国版Lineのようなサービス)や携帯電話のショートメールで番号とパスワードだけ送って、それを直接換金できる「バーチャル月餅」もあるというから、さすが中国の資本主義はすごい。

「月餅バブル」の崩壊
ところが今年はこの風景も様変わりだ。習近平政権の誕生後、「三公消費(公費出張、公用車、公務員の接待)」の禁止が厳格化され、「四風(形式主義、官僚主義、享楽主義、奢侈の風潮)」の撲滅など、過剰な接待文化に対する取り締まりが非常に厳しくなった。国家の指導層や大臣クラスの政治家や役人、国有企業幹部、軍の高官などが次々と摘発され、表舞台から消えている。「今度の取り締まりは本気」というのが役人たちの実感のようだ。
 
 そんなことで、どこの店でも月餅の売上高は軒並み昨年より5〜7割もの減少に見舞われた。特に深刻なのは化粧箱入りの高級品で、ほとんど売れなかったらしい。「月餅バブル」の崩壊である。各店では急きょ、個人客の自家消費向けに「散装」と呼ばれる簡易包装のバラ売り月餅を大量に用意、1個10〜20元といった価格で販売した。大衆向けの6個入りの袋詰めで10〜15元ぐらいの低価格月餅は逆に例年を上回る売れ行きだったという。

 

 

posted by タマラオ at 05:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記