2015年03月07日

自衛隊出身者初の宇宙飛行士 No5

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安定が求められる環境で新しい成果を出せるのか
――宇宙飛行士として活躍するために必要な資質というものはあるのでしょうか。

地道な努力を続けられることも才能の一つだと思います。それから、気分を切り替えられることも重要です。宇宙飛行士は、常にポジティブな人が多い。よく例に出されますが、グラスに水が半分入っているときに、「半分しかない」と思うか、「半分もある」と思うか。宇宙飛行士には、「半分もある。さあ、これをどう活かそうか」と話を進めていく人が多いですね。根拠なく楽観的なのではなく、最悪の事態を常に考えて、それに対処しようとします。それも宇宙飛行士に求められている資質ではないでしょうか。

――今回のミッションで最も大きなハードルは何でしょうか。
緊急事態の訓練については、自然と身体が動くくらい何度もやっているので、そこに不安を感じることはありません。正直に言うと、成果を出せるかどうかが気になっています。ISSの運用は安定期に入り、これからは民間企業の参加や新しい実験環境(実験装置)による新たな研究など、利用の拡がりが期待されています。いまや、宇宙飛行士が宇宙で仕事をすることは、当たり前のことになりつつあります。ただ、私自身は宇宙に行くのが初めてです。そこで期待される結果を残すことが最も高いハードルだと思っています。

日本のビジネスパーソンのなかには、私と同じような状況に置かれ、悩みを抱えている人も多いと思います。新しいことではなく、恒常的に同じことをやっている方や、仕事を引き継ぐ方もたくさんいるでしょう。そのときに、私がTwitterやブログで素直な気持ちを吐き出して、どう対処して仕事をしているのかを見せられれば、同じような状況にある方々が応援してくれるし、私もみなさんを応援できるいい形になるのかなと思っています。

――失敗してはいけないというプレッシャーは自衛隊でも感じていたと思います。その経験も活かされると思いますか。
それは活かされると思います。飛行機のテストに失敗は許されません。普通の飛行機の操縦もそうですが、テストパイロットはとくにそうです。それは、小さな失敗が大きな損失になるからです。上司からはよく、「テストパイロットのミスは、全世界に日本の恥として伝わる」と言われていました。だからこそ、テストパイロットの世界はいつでもコミュニケーションを取り、常にサポートをし合います。パイロットとテストパイロット、そして宇宙飛行士の世界は本当に似ているところがありますね。

宇宙事業の評価は多面的であってほしい
――目に見える成果を上げられていないのではないか、という厳しい意見も聞こえてきます。油井さんはそれをどう捉えていますか。

莫大なお金を使って計画を進めているので、当然、成果を上げなければいけません。ただ、評価の方法が一面的になってほしくないというのが私の希望です。実験の結果は重要ですし、目立たなくても成果は出ています。それが伝わっていないとしたら、伝え方を真摯に反省したいと思います。また実験以外にも、日本が実験施設である「きぼう」をつくる段階や運用で得た技術、そして、仕事で勝ち得た国際間の信頼はお金では換算できない価値だと思っています。

自衛隊出身であることもあり、人類全体が国を越えて一つの目標に向かうことが平和に与える影響を、心の底から感じている一人です。その実現に貢献できるだけでも、いままで使ったお金に相応する価値ではないでしょうか。平和であることの価値とは、みなさんが想像する以上に重要です。ぜひ、それをわかってもらいたいですね。

――宇宙飛行士になったことで油井さんの夢は一つ叶いました。その先の目標はありますか。
ISSのプロジェクトはこれからも続いていくと思いますが、宇宙探査は一国ではできません。国際協力の枠組みのなかで進んでいきます。宇宙飛行士の代表としてそれに参加したいし、そこで結果を残せる飛行士になりたい。今回のミッションは一つの目標ではありますが、次の目標のための第一歩でもあり、ここで経験を積んで次につなげることが必要だと思います。ただ、私自身の夢は一つではなく、いろいろな夢を持っています。

自衛隊にいるときも、テストパイロットの飛行隊長になるという夢と宇宙飛行士になるという夢があり、どちらを選ぶかという状況でした。いまは次のミッションで宇宙飛行士としての経験を積みたいという夢もあり、また、それと道を同じくするかもしれませんが、国際平和の実現、仲の悪い国があればその橋渡し的な役割を果たしたい。一人で複数の夢を持っていてもいい、そう思っています。

 

 

posted by タマラオ at 05:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記