2015年02月24日

『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』 No9

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「フランスは週5日労働が原則。しかも、休憩時間にはみんな一度帰って、短い時間で集中して働くというのが基本です。あと、やっぱり仕事は仕事、プライベートはプライベートで分けますよね。でも日本人には、仕事もプライベートもすべて仕事に費やすような人たちが多い。週に1日多く働いてるっていうことは、年間で何十日、それを10年やれば、1年分ぐらい違います。正直、全然負ける気がしませんでしたし、もし負けたら、今までやってきたことがすべて否定されてしまうというか」

フランスでの修業時代もまた、アストランスという、高いレベルの中で揉まれたことがよかったのでしょう。ここまで自信にあふれた吉武シェフをして「あそこのフランス人はちょっとおかしい」と言わしめるくらいモチベーションの高い人材が集まっていたのです。 「ちゃんと休んではいますけど、仕事のときの集中力は圧倒されるぐらいす
ごいんです。しかも、休憩中もランニングに行ったりしていましたから、ありえないですよ(笑)」

同じ土俵で戦わず、自分の強みで勝負する
フランス人には負ける気がしないとはいえ、彼らにとってフランス料理は自国の料理で、日本人はよそ者。普通なら、対等に勝負していくうえで、かなり不利なのではないかと考えてしまいます。 「今は、世界中でつくられ
ている料理に枠がありませんよね。どこでどんなことを学んだかによっても変わってくるし、どこの国の料理というより、その人自身の料理というか。たとえば僕は、和の食材はもちろん、アジアも回っていたのでそこの食材も使います。

もちろんカテゴリー的にはフランス料理に入りますが、自分で言っているわけでもないし。だから、フランス人だから有利とか、日本人だから不利ということは、まったく感じたことがありませんね」これはフランス料理に限らず、ビジネスでも同じです。現在は、日本だから日本のビジネスのやり方でなくちゃいけない、フランスだからフランスのやり方でなくちゃいけない、という枠はありません。たとえば現にアマゾンは、世界中で同じビジネスをしています。

もちろん、少しそれぞれの国向けにカスタマイズはしますが、国籍は関係ない時代になっているということでしょう。 「伝統的なフランス料理の牛頬の煮込みをつくるとか、もしそう
いう大会があれば、フランス人に比べて不利になるとは思います。でも、いい食材を使って、クラシックな技法で……という、いわゆるフランスの三つ星の料理と、僕のやっている料理では、もうまったくカテゴリーが違う。そもそも同じ土俵に立って戦おうとも思わないし、僕は僕で評価をしてもらえて、それで毎日お客さんが入ればいいと考えています」

自分の強みで勝負する。逆にいえば、欧米人のマネをしたり、フランス人とまったく同じ料理をつくっても仕方がないということ。そしてその強みのひとつが、日本人であることでした。 「たとえばフォアグラのテリー
ヌをつくるのに味噌でマリネをしたり、佐賀県出身なので、唐津焼や有田焼の皿に料理を盛ったり。自分の特徴は何か、っていうことを強く考えるようになったのは、やっぱりバックパッカーをしたときからですね。

いざバッグを背負って出かけてみれば行けないところはないし、飛行機に乗ってしまえば、簡単に世界一周だってできる。せっかく料理の道を目指したんだから、できれば世界で活躍できるぐらいになりたいって」世界を見て自分の強みを知り、さらに高い目標に気づいてアクションを起こす。やはり、あの1年間はたんなる放浪ではなかったのです。

 

 

posted by タマラオ at 06:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記