2015年02月16日

今回のシュリンク業界――ベンチャー系の広告代理店   No2

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動物的な嗅覚でチャンスをゲット創業経営者に見る「負のエネルギー」
私は、この20年間ほどで創業経営者を百数十人は取材してきた。創業数年間で会社を数百人規模に拡大していく社長の過去を調べると、「傷」を持った人が目立った。たとえば、子どもの頃に親が離婚、父親に家庭内暴力をふるわれた、中学から高校にかけていじめを受けた、非行に走った、社会人になった後離婚や家族の自殺などに遭遇した――そんな経歴を持つ人が多いのである。そこで、「こういう“負のエネルギー”は創業期には必要なのではないか」と聞いてみた。

瀬尾さんは「一時期までは大切なのかもしれない。実際、うちの社長もガッーと行きましたから……。辞めていった社員など、恨んでいる人も多いとは思いますけどね」と言い、少し黙る。どこまで話すべきかを迷っているように見えた。

借金の督促や警察のマークをかわす創業期を乗り切ったパワフルな営業 その後、こう続けた。
「だけど、その路線はどこかで行き詰まる……。他の役員や管理職は、社長が何を言っても聞かないから、自然と避けるようになる。すると、社長は『俺を裏切った』と怒る。その人を重要なポストから外したり、配転でやる気をなくさせ、辞めるように仕向ける」 これは業界を問わず、業績が頭打ちになり、伸び悩むベンチャー企業によく見られる光景である。「ベンチャー企業=実力主義」と称えるメディアや識者は、このあたりは不問にしている。

少なくとも、業績が伸び悩むベンチャー企業は辞めていく人が多く、社員間でノウハウなどが共有されない。組織として安定的に稼ぐシステムがつくれない。創業期に多い、個人事業主の集まりのような状態のままであり、組織の力を生かした戦い方ができない。瀬尾さんは、創業から5年ほどは採用で優秀な人材を選ぶことができなかったと漏らす。 「入っては辞める、の繰り返
し……。クリエイティブ部門は人気があるから、それなりの人を獲得できた。

でも、営業がね……。人気がないから……。広告は華やかに見えても労働集約型産業。うちみたいに営業力を売りとしているなら、なおさら兵隊(営業)の数を維持することは必要」 「創業期で採用力が高くはない
のに、なぜ次々と人を雇うことができたのか」と聞いてみた。私が取材をしてきたベンチャー企業は、中途はともかく新卒の採用については、特に創業期は難しい。そこを乗り越え、新卒採用に早く踏み込んだ企業は、比較的安定しながら業績が上がっていく。

「新卒のほうが定着率は高く、中途半端な力しか持たない中途の社員よりは組織に素直に馴染み、その会社流の仕事の仕方を早く覚える」と、経営者たちは口をそろえていた。瀬尾さんは、なつかしそうな口調で振り返る。 「そうなんで
すよね。新卒採用は大事。うちは社長が、『ハコが大切』と言っていた。オフィスですよ……。それで借金して、立派すぎるビルに入った。その後は新卒も含め、ポテンシャルの高い人が来るようになった」 創業時の借金のことを尋ねると、返すことがなかなかできなかったという。

金融機関から督促もあった。警察から電話が入ったこともある。瀬尾さんいわく「警察は営業マンたちの“つつもたせ”について調べていたのかもしれない」と話す。今は各社のホームページを見ると、様々な案件についてきちんと価格表が載っているから、広告代理店の間で価格競争が起き易い。だが、この会社の創業期には、価格競争は浸透していなかった。そこで、いかがわしい営業も水面下では行なわれていたという。さらに瀬尾さんは言う。

「社長が見栄を張り、借金を繰り返した。社員から金を借りて、返せないこともあった。もう、有象無象ですよ。あの頃、変だなと思ったのは、売上と人の数が正比例すること。営業部員の数がそろわないと、売上が増えない。ITを売りにしていながら……。この収益構造がその後、リーマン(2008年)で破綻しかけるんですよ」

 

 

posted by タマラオ at 05:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記