2014年11月24日

熊本発のブランド魚「田浦銀太刀」 No3

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タチウオの歯は剃刀のようで「うっかり噛まれると血が噴き出してとまらない」(岩田さん)くらいだというほど、鋭利なのだ。タチウオは季節や時間によって浅い場所にいたり、深い位置にいたりと遊泳層が異なる。釣り糸を沈める深さや、潮流に合わせた漁船のスピードは長年の経験と勘がものをいう。ゆっくりと船を走らせながら40分ほど待つ。おおむね田浦ではタチウオ漁は小型漁船に乗り、ひとりで行われる。「ひとりの作業。気兼ねがなくて、よかですよ」と岩田さんが笑う。

漁はだいたい1日に10回程度。ほかの船と「どぎゃん状況とね」と無線で連絡を取り合いながら、タチウオの群れがいる場所へと舵をとる。1日で30キロ水揚げできれば上出来だ。「おっ、そろそろかかったと」。岩田さんが釣り糸を引き上げると、キラキラとしたタチウオが姿を現す。太陽を映す鏡のように 銀白色の眩しい光を放つ。キラキラを超えて「ギラギ
ラ」といったほうが正しいかもしれない。そして、シュッとシャープな姿は太陽に輝く剣のようだ。まさに「泳ぐ日本刀」。その姿は1.5メートルもの長さになることもあるという。本当に「太刀」である。

岩田さんは手早く、そしてタチウオに触れないように慎重に釣り針からはずす。「鱗がなかけんね、ちょっとでもこすれたらあっという間に色が変わるし、シワができるとですよ」。いわば「アルミホイル」を扱うようなものだ。釣り針からはずしたタチウオは、すかさず体表の保護と鮮度維持のため「氷打ち」を行う。田浦の漁師たちが徹底的に研究して開発した独自の方法だ。海水を入れた保存ケースに入れ、直接タチウオの表皮に当たらないようにナイロンでくるんだ氷をバランスよく入れて、冷やす。

一見簡単そうに見えるが、船の揺れを想定して、入れる海水の加減ひとつも気を遣う。「みんなで本当によく勉強して、覚えて、しっかりそれを守ってここまできました。どこにも負けん田浦の太刀魚ば食べてもらうために、徹底して取り扱わんと」と岩田さんは語る。港に戻ると、次々と選別、箱詰めを行う。もちろん慎重な手作業だ。水揚げされたタチウオのなかでも大きく、肉厚で、見た目も美しいものだけを選び「田浦銀太刀」として出荷する。選り抜きの「ギンギラギン」効果で価格上昇!焼いても煌めきが美しい田浦銀太刀。
ふっくらした身、上品な味わいがたまらない すっかり「切れ味のいい日本刀揃い」となった田浦銀太刀は新風を巻き起こす。ブランド化後、だんだん価格が上昇し、現在は約2倍近い値がつくこともある。タチウオの値段が上がり、有名になるにつれて、漁師たちの意識も変わり「もっといいものを」と、たゆまぬ努力を始めるようになった。少ない漁獲量でも利益を生む「やりがいのある」漁業が始まったのである。

タチウオ漁専門の船も増え、嬉しいことに新たにタチウオ漁に取り組む若い人も出てきた。田浦銀太刀を食べてみた。刺身はコリコリ、そして脂がのって口の中でとろけるよう。食べた後にも、じんわりやさしい後味が残る。余韻のある美味しさだ。着物の柄のように美しく輝く皮目の塩焼きは、ふんわりした身がホクホク、もちもち。じつに上品な味わい。タチウオはこんなに旨い魚だったのかと驚く。田浦銀太刀は関東へも出荷され好評となっている。組合では、今後はネット販売含めて、さらに田浦銀太刀の名を日本中に広めたいと意欲を燃やしている。

 

 

posted by タマラオ at 05:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記