2014年11月10日

「メキシコは安全性(日本)より価格(中国)を取ったのか」     No1

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http://diamond.jp/articles/-/61736

メキシコ高速鉄道プロジェクトに三菱重工が応札を「断念」?
話しは少し前の10月19日にさかのぼる。この日、10月19日、レコードチャイナは「メキシコの高速鉄道プロジェクト、中国企業が唯一の応札者に=日本企業は断念」を見出しに、中国語記事の日本語訳を掲載した。これをヤフーニュースやエキサイトニュースが取り上げ、記事は瞬時に伝播。すると、日本全国の鉄道ファンから失望の声が上がった。 「メキシコは安全性より価格を
取ったのか」――。

記事はメキシコシティ〜ケレタロ間高速鉄道国際競争入札の結果を伝えるもので、「日本の三菱重工、フランスのアルストン、カナダのボンバルディア、ドイツのシーメンスも入札を検討していたが、最終的には断念した」と報じられた。自称“乗り鉄”の友人にこの話題を向けると、電話の向こうから「ああ、それねえ……」と苦しそうな声が返ってきた。ニュースは彼の聞き及ぶところでもあり、「中国が唯一の応札者になったということは、安さ以外に理由はない。日本が入札断念したのは、メキシコ側がすべて価格で決めるとわかっていたからだろう」と解説を加えてくれた。

一方、時期をほぼ同じくして、日本では10月20日、「海外交通・都市開発事業支援機構」が発足した。鉄道や高速道路などのインフラ輸出に官民連携で取り組もうと、いよいよ本腰が入ったのだ。だがそんな中で流れた「断念」というニュースは、決して幸先のいいものではない。世界の市場が最後には安全性ではなく価格を取るとしたら、高コストと言われる日本勢にとって勝負は見えているからだ。本当に三菱重工は「安い中国」に負けてしまったのだろうか。

ことの次第を三菱重工の広報に問い合わせると、意外な答えが返ってきた。 「メキシコで高速鉄道の計画があるということは知ってはいるが、当社としてフォローはしていません」 「断念」もへちまもない。記事は
事実に反していたのだ。
あたかも「先進国が一斉に手を引いてしまった」かのように伝えるこの“ゆゆしきニュース”は、一体どこから流れて来たのだろうか。 「中国が率いるコンソーシアムがメキシコ高速鉄道プロ
ジェクトの唯一の応札者に」という見出しを掲げていち早く報道したのがロイター(米国サイト)だった。

だが、10月15日付のロイターの記事には「Japan」の「J」の字も見られない。 「先進国が断念した」というくだりもない。あるのは「カナダのボンバルディアとドイツのシーメンスがこのプロジェクトに以前から興味を示していた」というセンテンスだけだ。また、英字メディア「モニターグローバルアウトルック」によれば、メキシコ議会がこの入札を発表したのが今年2月のことであり、日本、韓国、ドイツ、カナダは興味を示すも入札までの準備期間が短すぎたため入札を断念した、という説明がある。

「断念」とはあるが、三菱重工の社名は出てこない。中国メディアがさらに独自に取材をすれば、具体的な社名が出てくる余地もあるが、それにしても三菱重工側のコメントとは合致しない。記者がでっち上げたのだろうか。

なぜ中国が唯一の応札者となれたのか?
一方、中国側の記事は、「唯一の応札者となった中国企業」はあたかも競争力でコンペティターを振り切ったかのような印象を与えるものだ。ところが英字メディアを読むと、なんのことはない、今回は「時間に間に合わなかった」だけだったことがわかる。また、英字紙のチャイナデイリーには「16の国際企業が時間の制限を理由に入札手続きを行わなかった」という、さらに詳細を物語る一文があるのだが、これが与えるのはむしろ、「なぜ中国だけにそれができたのだろうか」という疑問でしかない。

昨年、習近平国家主席はメキシコを訪れ、ペニャニエト大統領との緊密ぶりを披露したが、この外交が奏功したのだろうか。あるいはルールを無視したのかもしれない、ひょっとしたら贈賄など不正を働いた可能性もある。逆に疑惑の臭いすら立ち込めてくるのだ。他方、米メディアのモニターグローバルアウトルックの“落ち”だが、記事は次のように締めくくっている。 「メキシコ政府によ
れば、中国の入札は審査の過程にあり、条件に合わなければ、再び入札が行われるだろう」

記事は、中国が唯一の入札者だったとしても、それが契約を勝ち取ったことを意味するものではないということを伝えていた。

 

 

posted by タマラオ at 04:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記