2014年08月24日

エボラ出血熱の治療薬が簡単にできない理由 No1

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少ない患者数、しかもアフリカ中心で製薬会社が開発に二の足

感染者が1848人、死者1013人 コートジボワール、エボラ感染国からの航空便の運航停止  「ストップ・エボラ」のプラカードを掲げるコートジボワールのサッカー選手

西アフリカを中心に、エボラの拡大は依然としてとどまらない。世界保健機構(WHO)が発表した最新の数字では、感染者数が1848人、死者は1013人に達している。 前回の記事の後半で、ナイジェリアで亡くなったパトリック・ソイヤーさん(40)が首都ラゴスの空港で倒れ、その前後で接触のあった方が憂慮されると記した。 悪いことに、ソイヤーさんを含めて4人が亡くなり、その他11人がエボラに感染している。その他に約200人が政府の監視下に置かれているという。

今回のコラムで述べたいのは、エボラの治療薬やワクチンの研究開発の難しさである。当たり前と思われるだろうが、それは医学的なアプローチの多難さというより経済的な理由が大きい。 否定的な見解で申し訳ないが、正規ルートを経てエボラの治療薬が世に出ることは簡単ではないと、まず記しておく。 エボラの症例が最初に確認された1976年からすでに38年がたっている。ウイルスが特定され、実験室内での抗ウイルス薬やワクチンの研究開発が世界中の研究者によって進められてきたが、いまだに動物実験の段階までしか至っていない。なぜか。

理由を端的に述べるならば、エボラは「ペイしない」感染症だからだ。
新薬の開発には通常、数百億円という巨額の資金が必要になる。ウイルスの基礎研究に始まり、実験室で抗ウイルス効果のある薬剤が発見され、良好なデータがでれば動物実験へと移行する。 そのプロセスの後、ようやく人間に投与される。臨床治験だ。通常は第1段階から第3段階までで(場合によっては第4段階)、段階ごとに投与される人数が増えていく。

第3段階になったところで薬剤の副作用が強く、中止ということもある。多くの場合、数百人単位の患者を集めて長期間にわたって継続されるが、製薬会社がほとんどのコストを負担する。 途中で中止になると、製薬会社は数百億円をドブに捨てることになる。企業はそのコストをほかの薬剤で穴埋めすることになる。一般的に「薬は高い」と感じるのはそうした背景がある。

エイズ用の薬と何が違うのか
エボラ出血熱の死者、1000人超える 世界保健機関  英ロンドンの病院に作られたエボラ出血熱患者用の隔離施設  ただ同じウイルス感染症であるエイズ(後天性免疫不全症候群)は、すでに抗ウイルス効果のある薬が20剤以上も世にでている。いったい何が違ったのか。 エイズは1980年代半ばから薬剤の研究開発が大変活発化した。それは研究者たちの競争という側面もあったが、エイズの感染者・患者が増え続けていたとい点がエボラと大きく違う。

1981年に世界で最初のエイズの症例が報告されてから、10年ほどの間に感染者・患者は万単位で増えた。現在でもアフリカ諸国を中心に世界中で約3500万人もの感染者・患者がいる。 薬剤を服用する人が多ければ多いだけ研究開発は前へ進みやすい。製薬メーカーの経済的な観点から述べると、エイズは「十分にペイする」病だったのだ。 現実的に、新薬の開発というのはペイしないと、ほとんど前へ進まない。

 

 

posted by タマラオ at 06:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記