2014年08月06日

危機で生まれ変わり、素直になれた   No3

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トヨタをパーソナライズする
では、豊田社長の役割は何なのですか。

豊田:責任者です。中長期と言った瞬間に、いろいろ努力しても、結果が伴わないときはある。そのときに責任者がいないと、現代の方々には分かっていただけない。自分が責任者であるということははっきりしています。

リーマン・ショック前の急拡大で、それまでトヨタの強みだった現場がおかしくなったという認識はありますか。
豊田:それは歴史が評価するでしょう。ただ、人材育成のスピードをはるかに超えたスピードで規模が拡大したことだけは確かです。私は最近、「年輪」という表現を使います。持続的成長のために、商品と人材で年輪を1本ずつ刻んでいくのです。 それにはペース配分が大切です。トップが、普通の木を10年で屋久島の屋久島杉にしようと言って突き進むと、どこかで折れてしまう。それを私はやらない。私は太陽となり、土となります。それで、副社長が水をまき、多少色気のある本部長は肥やしをやる。そんなイメージです。

短期の目標を追い求めないという考え方を、果たして株主や市場が理解してくれるでしょうか。
豊田:資本主義にも原理資本主義的なものもあれば、国家資本主義と言われるものもある。私が理想とする姿に一番近いのは、公益資本主義です。以前からトヨタというのは「誰がステークホルダーか」と聞かれた時に、まず「お客様」「従業員」「地域社会」と答える会社でした。 もちろん、そこには株主も入ります。ビジネススクールでは「会社は株主のもの」と教えていますし、私もそう教えられました。

でも、ハーバード・ビジネス・スクールでも「コンシャス・カンパニー(意識の高い会社)」と言い出している。中長期的な目線を持っていない限り、結局は短期の結果も付いてこないということを、いろいろな人が気がつき始めたのではないでしょうか。 ですから、株主や金融機関の方たちに、「持続的成長」や「真の競争」といった、私が使っている言葉の意味を分かりやすく伝える努力を始めています。

最近では、中小企業の経営にも着目されていると聞きます。
豊田:中小企業にこそ立派な経営者が多いのではないでしょうか。トヨタもそうですが、大企業の組織にはいろいろな役者がいます。中小企業の経営者は1人で何役もこなしている。そうして、過去、現在、未来、すべての責任を背負い、「仕入れ先の影響です」とか「環境が悪かった」とか言い訳はしない。 大企業のトップの方が、すぐ金融市場がどうだとか、市場がどうだとか、自分がコントロールできない話をする。じゃあ、自分でコントロールできる世界に、どのぐらい能力と情熱をつぎ込んでいるのかと。その点では、中小企業の方々に学ぶべき点が多い。

トヨタも中小企業流に経営すると。
豊田:もともと私には、大企業のトップにいるという感覚がないんです。だから、トヨタという大企業をパーソナライズ、顔が見えるようにしたいのですね。例えばいろいろなイベントで、サプライズでトークショーに出たりするんですよ。自分のアンテナを、現場に近いところへ持っていって情報を取っているんだと思います。 決して、表に出るのが好きなわけではないです。だけど、ああやって車に乗ったり、レーサーやメカニックからも話を聞いたり、車好きの方々が集まっている場で自分の意見を言ったりしたときに、直接フィードバックをもらえるのはすごくいいことだと思います。

 

 

posted by タマラオ at 05:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記