2014年08月05日

危機で生まれ変わり、素直になれた   No2

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持続的成長のために、社長の仕事のやり方、役割も変えていかなくてはならないということでしょうか。
豊田:私の役割は、目線を中長期に置くことです。クォーターごとの数字に振り回されるのではなく、もっと長い目線です。 今、トヨタは77歳です。人間と違って企業は成長し続ければ未来永劫生きることができます。自分が社長を何年やるか分かりません。でも、次の次の次の社長に、会社をどういう状態で渡せるかを常に考えています。 その時、畑にはまだ耕す部分もあれば、種をまいたばかりの場所、収穫を間近にした場所、収穫がちょうど終わった場所もある。

そんなバランスのいい状態で渡したいんですね。目の前の結果ばかりを追い求めて刈り取ってばかりだと、荒れた畑しか残せなくなります。誰一人「過去最高」と言わない。結果として過去最高の業績を残している中、社員の意識を変えるのは難しくありませんか。

豊田:77歳のトヨタには77年分の成功体験と失敗体験があります。やっかいなのが成功体験で、世の中は変わったのに「前はこれで成功した」とか「何で変えるのか」と言い出した途端、成長は止まります。 だから、絶えず好奇心を持ち、アンテナを高くしておく。決断は3秒でいいんです。その3秒の決断が何年か後になって、「あれが耕したことになったんだ」となればいい。 幸いというのもおかしいですが、リーマン・ショックで1回どーんと落ちました。

そこで改めて、トヨタに期待されていること、やってはいけないことがはっきりした。これが分かっているうちに、今後の成長に向けた体質改善をやっていきたいんです。 そのためには、数値目標や結果を取り出して「ベストを出した」とか「ダントツだった」というのはダメなんです。目標は、到達したら終わってしまう。過去、そうやって引っ張った時代もありましたが、私は言いません。トヨタという会社はトップが正解を言ったら、現場がそれを効率的にやろうと一気に動いてしまう。それではだめなんです。

社内の意識が変わった手応えはありますか。
豊田:結果は私のときには出ないのかなとも思います。ただ、この間の決算発表で、誰も「過去最高」と言いませんでした。私が言うなと言ったわけじゃない。そういう言葉はなかったと発表後に気が付いたぐらいで、まったく意識なしにそうなっていた。その意味では、この4年間で意識は変わってきたんじゃないかなと。

数値目標がないと成長の方向性が外から見えないという声もあります。
豊田:「もっといいクルマをつくろうよ」としか言わない社長に対して、何を言っているか分からないとか、社内外でいろいろなことを言われました。 ですけど、結果はあくまでも結果です。目的は、もっといいクルマを通じて、お客様に笑顔をもらうことなんです。その理解が少しずつ進んでいるのかなとは思います。結果が出るのはまだまだ先になるでしょうが。 そもそも私の中には、「こうすればいい」という明快な回答もなければ、含蓄もない。

でも、もっと多くの笑顔が欲しいとか、昨日より今日をよくしようよねという意志は強い。絶えずベター、ベター、ベターで会社が動かなければ、持続的成長はできません。 そう言い続けてきたことで、現場のリーダーたちが自分の頭で考え、悩み、いろいろな案を出してくれる。回答を言わないが故に、私なんかが考えるより優秀なアイデアが「リーダーズ」から多く出てくるし、それを活用する。トヨタの現場には「考える」というベースがある。

だから、そのスパイラルを増やした方が、これだけの規模の会社にはいいのです。 でも、目標がないと人間は動けないのも事実です。例えば陸上選手がただ走らされるだけで、記録を知らされないとしたら、とてもやっていられません。だから、副社長や地域の責任者、各本部長が数値目標や具体的なことをいろいろ言っている。彼らが実質的な経営者であり、リーダーです。その集合体がトヨタなんです。

 

 

posted by タマラオ at 06:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記