2014年07月24日

グローバル市場で負けないものづくり No3

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2日で生産ラインの長さを変更
筆者が注目したのは2点あった。ひとつは「治具」の共通化。エンジンのシリンダーヘッド加工の「治具」は、それぞれのエンジンごとに「治具」が存在していたのを、治具の構造を多軸から1軸化することで、トヨタの直列4気筒ならばすべて対応できるようにした。さらにこれまでの「治具」だと取り替えに約4時間必要だったのが、20分で済むようになったという。「治具」の重さは9割以上、投資も4割近くそれぞれ削減できた。エンジンの開発部署と生産技術部署が共同で取り組んだという。

こうした開発と生産の連動が、前述した製品の多様化とコスト削減を同時で展開していくうえでのカギになる。トヨタでは「工場付き技術部」という考え方をブラジルやインド、南アフリカなどの拠点で導入。本社に依存しなくても現地仕様車を現地主導で素早く立ち上げようという試みだ。こうした発想は、トヨタでは04年から始めた「IMVプロジェクト」で採り入れていたが、これをグローバルに水平展開していく。

話は少しそれるが、トヨタでは水平展開のことを社内用語で「ヨコテン(横展)」と呼ぶ。巨大な企業でありながら、これまでは動きが俊敏だったのはこの「ヨコテン力」があったからだが、「GM化」したことでこの力が弱くなっていた。そうした意味でも、トヨタの強みを再度鍛え直すということであろう。 もうひとつ注目したのは、生産量などに応じて長さを簡易に伸縮できる生産ラインだ。まさに「小さく産んで大きく育てる」ためのラインと言えよう。

これまでは車体を吊るして流していた組み立てラインを変えて、車体を台に乗せるような形で流す方式を採り入れた。生産ラインの構成自体をユニット化して取り付けや取り外しを行いやすくした。土日2日あれば生産ラインを再構築できるという。すでに昨年秋に稼働開始した米ミシシッピ工場で導入したほか、これから稼働する新興国の工場で順次導入する。 この「伸縮ライン」のもうひとつの効果は、生産現場の作業者の熟練度合によってラインを長くしたり、短くしたりできる点だ。

一般的に、ラインの長さが短い方が生産効率は高いとされる。熟練の「多能工」が複数の工程をこなせるため、作業者も減り、作業スペースも省略化されるからだ。ただ、「多能工」が存在するのは日本中心であり、新興国の工場では技能者が熟練するまでには時間がかかる。こうした場合、未熟な作業者に複数の工程を任せると、取り付けミスが起こるなど品質問題に発展しかねないため、ラインを長くしてでも単純工程を増やした方がいいケースもある。

現代自動車では、生産性向上のため、できるだけ工程を細分化して工程数を増やすことで仕事を単純化し、一人の作業者が複雑な仕事をしなくて済む方式に切り替えた。現代の動向に詳しい研究者によると、現代の1ラインでの工程数は日本メーカーの約2倍の300近くあり、ラインが長いという。このやり方だと、言葉が通じにくいうえ、熟練度合いが低い外国人労働者を指導しやすい。

これが現代自動車の海外工場の生産性を高めることにつながり、グローバル市場でシェアを拡大させていく原動力のひとつになったと言われる。 トヨタはこれまで述べてきたような生産改革によって、設備投資額を従来比で4割削減できるとしている。そこで生まれた原資を、よい製品づくりに回していく考えだ。

 

 

posted by タマラオ at 05:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

グローバル市場で負けないものづくり No2

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皆さま大変ご無沙汰いたしました。今回の台風で7月15日より本日7月23日まで久しぶりの原始生活を送りました。今回は電気・電話が無い約1週間でしたが、我が家の発電機は近所を巡回しほぼ携帯電話の充電に活躍しておりました。

さて前回からの続きを再開いたします。

日本の自動車メーカーがもともと強かった分野だが、北米で売れる新車開発にリソースが集中的に投入されてきたため、単一車種しかつくれない製造ラインも生まれた。 こうした現状についてトヨタの豊田章男社長は「トヨタはいつの間にか車ではなく『お金』をつくる会社になった」と反省の弁を述べたことがある。「『お金』をつくる」とは、金儲け優先主義になって、多様な価値観のお客に顔を向けた商品をつくっていないという意味である。

前述したように新興国市場の台頭により多様な消費者の価値観に対応しなければグローバルにシェアは取れない時代になった。トヨタはやっとこれに気づき、これまでの車つくりの基本戦略を開発の生産の両面から大幅に見直し始めた。急激に進んだ円高もそれを加速させた。製品の多様化とコスト削減という矛盾することを同時に展開しなければトヨタといえども、生き残ることができない時代に突入したのである。

「いい車づくり」を目指すトヨタの構造改革
前置きが長くなったが、これから紹介するのは、「価値品質」を追求するためのトヨタの生産、開発における「構造改革」である。トヨタ社内では総称して「もっといい車づくり」と呼ばれ、09年に就任した豊田章男社長が掲げる「良品廉価」とい
う発想が根底にある。トヨタは4月9日と24日の両日、2回に分けて豊田市の本社地区で現場を見せながら、その取り組みを一部の報道陣に公開した。筆者もそれに参加した。 まず、生産現場での改革の方向性として3つのキーワードが掲
げられた。
(1)売れるスピードでつくる
(2)1個ずつつくる
(3)小規模につくる――である。これをよく見れば、トヨタ生産方式(TPS)の原点に戻ったことが分かる。

「売れるスピードでつくる」とは、まさに「必要なものを必要な時に必要な量だけ」というTPSの真髄を象徴している。「1個ずつつくる」もTPSで「1個流し」という概念があるように多品種少量生産の基本形である。「小規模でつくる」についても、
車の販売は水商売であり需要変動が大きいため、トヨタは過剰設備に陥らないように工場建設には慎重な風土があった。トヨタは工場を「小さく産んで大きく育てる」ことを得意としてきた。

しかし、トヨタにとって90年代後半からリーマンショックまでの約10年間は「バブル期」であり、身の丈を超えた急拡大が続いた。その象徴が米国テキサス州に巨額投資で新設したフルサイズピックアップトラック「タンドラ」の専用工場であった。そもそも「専用」という概念自体が、多品種少量生産を旨とするTPSの哲学に反していた。リーマンショック直後、このテキサス工場は閑古鳥が鳴いていた。 バブルで小回りの利かないトヨタは、いつの間にか「GM化」してしまった。

こうした反省を踏まえての生産改革であると筆者は受け止めている。 元町工場(豊田市)内にある生産技術開発棟で、新美篤志副社長(生産担当)らの実験ラインなどを見せながらの説明でも「シンプル・スリム」「変種変量」といったキー
ワードが強調された。

 

 

posted by タマラオ at 05:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記