2014年07月14日

ビール通の素朴な疑問に No3

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「糖質ゼロで濃い味」ができた
普段は朴訥としているのに、技術的な話になると途端に目を輝かせて語り出す蒲生さんは、まさしく典型的なクラフトマン(職人)だ。プライベートでも大のビール好きという彼がキリンビールに入社したのは、同社のクラフトマンシップに強く憧れたから。そして、自分もその精神をしっかりと受け継いで研究を重ねていけば、必ずや答えに辿り着くと信じていたという。悩み続けていた蒲生さんだったが、とうとうブレイクスルーの瞬間がやってくる。

「繰り返しになりますが、糖質をカットするためには麦芽の使用量をかなり減らさなければなりませんが、そうなるとビール本来の美味さがどんどん弱まってしまいます。だから、この商品は最大限レベルまで使用しています。また、ローストした麦芽を使用していますが、その使用を思いついたことによって、糖質をカットしながらも麦の香ばしさが拡がる味わいを実現できました」麦の香ばしさ――。それは多くの人がビールをゴクゴクと喉の奥に流し込んだ直後に鼻孔のあたりで感じるフレーバーのことだろう。「とにかく、開発中は1日中ビールのことばかり考えています。それに、並行して他
の商品の開発も任されていて、そちらで用いている素材やアイディアなどが意外なヒントをもたらしてくれるケースも多い。カラメル麦芽も然りです。さらに、ファインアロマホップを使ったことで、引き締まった苦みと豊かな味わいを加えることができました」(蒲生さん)ビールの苦みを美味いと感じたらオトナの味覚になったとよく言われるが、それを醸し出すうえで大きく貢献しているのがファインアロマホップだろう。

こうした素材を惜しみなく用いることで「飲みごたえ」が実現されたわけだ。蒲生さんがたどり着いたこの「糖質ゼロのスペックと、コクや苦みの味のバランス」は、「まるで針の穴に糸を通すような、『ここしかない』という一点だ」、と工場の担当者から絶賛されたほどのものだという。長い歳月を経てついに大命題を解き明かした蒲生さんはその夜、同僚と祝杯を上げたそうだ。

「『濃い味〈糖質ゼロ〉』の開発期間中のことを思い出すと、胃の痛みが蘇ります……」と苦笑いする蒲生さんに、もう思い出したくない商品ですか?と問うと「いえいえ、むしろ、これだけ制約がある中で作り出さなければならないのはおもしろいです」という職人気質な答えが返ってきた。 「私もかなりのビール好きですが、中でも香りや苦味が強い
飲みごたえがあるものが好きなんです。そういう好みの私が、一消費者としても機能系だったらこれを選ぶ。自分が飲みたいものを作った、という思いがあります」

さらに、蒲生さんは満面に笑みを浮かべてこう言った。
「これからの季節はよく冷やして飲むのが格別でしょうが、奥深い味わいがあるだけに、個人的には常温で飲むのもお気に入りです。とにかく、ビールが好きな人に、もしくは、本当はビールが飲みたいのに身体を気遣って我慢して機能系ビール飲料を飲んでいる人に、ぜひとも一度飲んでみていただきたいと思っています」蒲生さんから開発の顛末について根堀り葉掘り話を聞いているうちに、「濃い味〈糖質ゼロ〉」が飲みたくなっている自分に気づく。

取材を終えるとその足で直ちに近所のスーパーに足を運び、蒲生さん自慢の1本を手に取った。そして家に着くや否や、喉を鳴らしながら瞬く間にそれを飲み干した。次の瞬間、脳裏に浮かんだのはこんな感想だ。 「なるほど、商品
名にもなっている"濃い味"とは、こうした味わいを表現していたのか。確かにこの味は……」最終的に味覚は個人の好みに帰着するので、あえて具体的な形容は控えておこう。

とにかく、健康に気を遣いながらも、けっして味でも妥協せずに愛飲できると確信したことだけは間違いない。

 

 

posted by タマラオ at 06:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記