2014年07月31日

富士重、大躍進の秘密は発想法にあった  No1

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「欠点の議論はやめ、強みに集中する」  日経ビジネス  2013年10月3日    http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20131002/254124/?n_cid=nbpnbo_rank_n

山根 小雪日経ビジネス記者日経コミュニケーション、日経エコロジーを経て、2010年1月から日経ビジネス記者。エネルギーを中心に、自動車や素材など製造業を担当する。

国内最小の自動車メーカー、富士重工業。かつては経営危機が隣合わせの不安定で“ひ弱な”存在だったが、いまは違う。「スバル」ブランドの乗用車が好調で、空前の好業績を叩き出している。 2013年3月期決算は、世界販売台数に売上高、営業利益で過去最高を更新した。株価も上場以来の最高値を更新。辛口の証券アナリストをして、当面の好業績に太鼓判を押すほどだ。

売上高の約8割を海外で稼ぎ、国内生産が約8割を占める富士重は、超円高の是正が大きくプラスに働く。加えて、主力市場の北米が復調している。ただし、目先の環境変化が現在の好業績を導いたわけではなく、10年近く前から続けてきた地道な社内改革の賜物であることは、本誌9月16日号の企業研究「富士重工業 常識の真逆を行く」でご紹介した。社内改革の結果、行き着いたビジネスモデルは、大手自動車メーカーとは真逆だ。

トヨタ自動車や日産自動車などは、国内では絶好調の軽自動車を強化し、新興国ではコンパクトカーを中心に市場を開拓している。一方、富士重は軽自動車生産から撤退。コンパクトカーにも手出しをしないと決めた。限られた経営資源は、走行性能や安全性に重きを置いた大きめのクルマに集中投下する。重点市場はあくまで先進国。新興国は富裕層に絞る。 スバルらしいと言われるクルマ作りには、かねて熱狂的なファンが存在する。

世界で独ポルシェと富士重しか搭載していない「水平対向エンジン」と四輪駆動を組み合わせ、ラインナップの大半が多目的スポーツ車(SUV)という独自路線。「スバルらしさが好業績の要因」と言われることも珍しくない。富士重の吉永泰之社長も「スバルらしさ」が好業績の背景にあると認める。 この「らしさ」という言葉は、技術志向の強い企業を形容する際に使われることが多い。例えば、「ホンダらしさ」や「ソニーらしさ」といった具合だ。業績が上向けば、「○○らしい商品だから」と言われ、新商品が芳しくないと「○○らしさが感じられない」と言われる。

富士重の場合、水平対向エンジンや四輪駆動をもって「スバルらしい」と言われるが、吉永社長はこの指摘を真っ向から否定する。「それは機能であって、スバルらしさとは違う。機能なんてどうでもいいんです」。ではスバルらしさとは何なのか。富士重の社内改革がぶれずに進んできた背景には、スバルらしさを社員たちに再認識させるための、発想の転換と経営努力があった。世界の自動車メーカーの中でも規模が小さく、国内では最小の富士重。

販売台数はトヨタ自動車の10分の1に満たず、今なお国内生産が大半を占める同社の生き方には、多くの日本企業にとっての生き残りのヒントが隠されている。 富士重がたどり着いた道を、吉永社長の言葉から紐解いてみたい。

 

 

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2014年07月30日

日産の設計革命、脱プラットホーム共有化戦略 No4

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予め決められた部品や標準化された技術を組み合わせていくという意味で、レゴブロックを組み合わせていくイメージに近い。同じような「脱プラットホーム」に取り組む海外メーカーもあるが、部品のバリエーションを制限するという発想に重点が置かれているように思える。すなわち「部品屋主導」の「脱プラットホーム」といった感がある。これに対し、日産の取り組みは、車の構造全体を見渡す「車両開発主導」の動きに見える。

CMFを進めるにあたって仕事が擦りあわせ的という点では、こんな事例もある。車両計画や車体、電子、部品設計などの関係部署を全部集めて、CMFの事務局がモジュールの構成と部品の共用化案を提示した後、対応できないケースがあれば、その理由をエンジニアに個別に徹底してヒアリングしたというのだ。CMFプロジェクトの初期段階では多くの工数がこのヒアリングに当てられたという。

未知の世界への挑戦でもあり、本当にできるかできないかを慎重に判断しなければ、プロジェクトがスタートしても暗礁に乗り上げるリスクがあったからだ。  09年5月にプロジェクトがスタートし、09年
11月時点で850の「できない課題」があった。現状ではできないが、これをどうすればできるのかを解決していくことが次の仕事となった。  たとえば、ステアリングの上に「コンビスイッチ」
あるが、日産とルノーでは位置も操作方法も違うし、日産車とインフィニティ車でもまた違う。

経験や文化の違いが影響しているからだが、スイッチひとつとっても設計の考え方を共通化していく必要があった。たかがスイッチだと思うかもしれないが、ここをクリアしないとステアリングコラムやパワステなど設計にまで影響してくるのだ。 こうした課題を整理して一つひとつ解いていくためにルノー側も入って「JWT(ジョイント・ワーキング・チーム)」ができた。(1)大きな車両構成を考える(2)CMFのスコープを定義する(3)部品ごとの問題解く――といった観点で活動するチームだった。

特に(3)の活動のウエートが大きく、「USFT(アップ・ストリーム・ファンクショナル・チーム)と呼ばれ、ランプやサスペンションといった機能ごとに78チームできた。そのチームリーダーに共通化とモジュール設計を可能にするための権限を与えた。 さらにCMFによってサプライヤーも含めた製造現場の在り方も変わってくる。た
とえば、これまでは車種ごとにシートフレームが違っており、1タイプで10万台程度しか生産していなかったが、CMFで共通化を推進することで、1タイプでルノーと日産を合わせて300万台以上をカバーしなければならなくなる。

そうなると、「溶接手法から見直さなければ1タイプで300万台以上の大量生産はできないかもしれない」と坂本常務執行役員は語る。さらに「自動車産業ではこれまで、部品メーカーは完成車メーカーの海外進出に合わせて一緒に海外に出ていたが、先進国で自動化による大量生産で対応し、輸出する方がメリットも出るケースがあるかもしれない」と言う。  CMFを成功させるためには、
開発と生産技術の融合もひとつのポイントとなるのだ。

CMFプロジェクトを牽引してきた坂本常務執行役員の担当は今年4月1日付で生産技術本部に変更になった。開発から生産技術への異動はこれまでの日産では極めて異例だ。 日産のCMFは大きな「設計革命」である
と感じる。世界の競合メーカーも、手法は違いながらも同じような狙いで、車造りの改革に取り組んでいる。優劣はつけられないが、自動車の設計に大きな変革の波が押し寄せているのは確かだ。

 

 

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2014年07月29日

日産の設計革命、脱プラットホーム共有化戦略 No3

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CMFではこうした上位統合の概念を捨て、車体重量が近い車同士で部品の共通化を進めていくことも大きな特徴であろう。 CMFではこれまで「聖域」とされていた電子の共通化に力を入れ
たことでも注目される。「プラス1」の部分に当たる電子制御のモジュール開発のことだ。電子制御は、同じ日産社内でもブラックボックス化され、車種間で電子部品の共用化がいつまでたってもできなかった。

「機械屋」中心の車体設計から見れば、電子部品のスペックや通信方法は口が出せない世界だったが、ここにメスを入れ、電子制御ユニットのインターフェースや通信のルールといった「電子のアーキテクチャー」を決めた。たとえば、速度調整やエアコンコンプレッサーの制御は、日産ではエンジンの電子制御ユニットで対応していたが、ルノーは別のユニットが制御していたのを統一化した。

このCMFを推進していくと、車の構造がモジュール製品であるパソコンと似てくる。しかし、違う点もあるし、そこが自動車メーカーの競争力を握る点である。  パソコンはモジュール部品間のインター
フェースを公開しているが、CMFは公開しない。自動車の場合、モジュール間の相互作用が安全や騒音に強く影響するため、シミュレーション技術などを駆使して最も適切な組み合わせを実現させることが自動車メーカーのノウハウである。

加えて、共通化を推進していく開発プロセスで、どこが固定部で、どこを変動部として残すのか、ルノーも交えて関係部署が徹底的に議論している点も興味深い。固定部がコストを意識して共通化する部分で、変動部が車の味を出して他社製品との差別化につながる商品力に直結する部分である。固定部を多くすれば特徴のない車となり、変動部を多くすれば、CMFの意義が失われてしまう。

筆者が興味深いと言ったのは、車の構造は一見パソコン的になるが、仕事の進め方はより「擦り合わせ的」になっているからだ。日産車の開発では大きく3つの機能がある。プラットホームを開発したり標準技術を作ったりする車両計画と、個別の車種を開発するチーフビークルエンジニア(CVE)、サスペンションや電子制御といった個々の部品開発の3つだ。この3機能が、開発の源流段階で固定部と変動部をどう区分けするかを徹底的に詰めた。

車両計画は標準化を推進することで固定部を増やしたい流れに陥る傾向にある。一方でCVEは特徴ある車を世に送り出すために変動部を多くしたい。部品開発は車の構造が複雑化したことで細分化されている。ややもすれば、意見の食い違いで調整がつかない。しかも、日産だけではなく、これにルノーの開発も加わるから複雑さが増す。  こうした時に、ルノー日産アライアンス
CEOオフィス室に所属する山本部長らが調整役となる。

他社とのベンチマーク、これから出てくる新しい技術や規制、長期の製品戦略を考慮し、固定部と変動部を決めていった。 「変動部はこれまでは完全フリーでCVEの裁量に委ねられていま
したが、変動部であっても予め決めた技術や部品のバリエーションの中から選ぶ方がいいケースもある。一方でそれをやり過ぎると、固定部を増やし過ぎるのと同様に車の魅力が低下するかもしれない。どこまでなら大丈夫なのかを見極めることも自動車メーカーのノウハウです」と山本部長は言う。

 

 

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2014年07月28日

日産の設計革命、脱プラットホーム共有化戦略 No2

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筆者は日産の発表会に参加するともに、キーマンである「CMF」を担当した3人のエンジニアに単独インタビューした。坂本秀行常務執行役員、山本浩義ルノー日産アライアンス共通プラットホーム・共用部品担当部長、吉澤隆ボディエレクトロニクス開発部長の3氏である。以下に述べるのは、3氏のインタビューに筆者が追加取材で得た知見を加えたものである。  まずCMF導入の狙いは、
商品力の向上とコスト削減という一見トレードオフになりがちな課題を、サプライヤーも含めて同時並行で解決するためだ。

CMFでは、車体の構造を大きく、エンジンルーム、コックピット、サスペンション周辺の前部、車体重量を支える後部の4つのモジュールと電子制御という「4+1ビッグモジュール」に分ける。車種や車格の壁を超えて共通化したモジュールの組み合わせで造っていくため、従来の「プラットホーム」という概念が消える。 従来のプラットホームの中核をなすアンダーボ
ディーは、CMFの構造ではサスペンション周辺の前部と車体重量を支える後部がそれに該当する。

そう考えると、CMFではアンダーボディーに加えてエンジンルーム、コックピットまで共通化領域が拡大しており、共通化という概念がこれまでのアンダーボディー中心から車全体に及んだと見ることもできる。

従来のプラットホーム共通化戦略とは、金型など設備投資抑制に主眼が置かれているため、金型投資が大きなウエートを占めるアンダーボディーの共通化のことであった。ところが、前述したように同じアンダーボディーにしていながら、他の部品は別に設計し直すため、かえってコストが上昇するケースもあった。このため、設備投資抑制という考えよりも、1台あたりのコスト低減という考えを強めていくことが必要になった。CMFの究極の目的は、台あたりコストを下げることなのである。

山本部長はこう解説する。
「販売が200万台程度の頃は投資を抑える発想の開発が効率的だったかもしれないが、今やルノーと合わせて800万台近くを売る状況になると、投資抑制よりもピースコストを抑える方が大きな効果があがる。そして浮いた資金を環境や安全といったような新しい技術に回していくというサイクルを作らないと様々なマーケットに対応できない。ピースコスト抑えるということは、部品費を抑えるという考えです。ボリュームを出すことで、効率がもっとあがる」

「CMF」では、C/Dセグメントの13の新型車のアーキテクチャーをカバーする。エンジンルームモジュールは2種類(High hoodとLow hood)、コックピットモジュールは3種類(High position
とMiddle positionとLow position )、前部モジュールは3種類(Heavy weightとMiddle
weightとLight weight)、後部モジュールは3種類(Heavy weightとMiddle weightとLight
weight)ある。理論上、2×3×3×3=54種類のモジュールの組み合わせで車を造ることができる。各モジュールを構成する部品には車種の違い応じて適度のバリエーションを持たせるが、原則、同じ部品から造る。

そして、従来のプラットホーム中心の開発方式と大きく違う点は、「上位統合」という考え方が消えることだ。派生車種をたくさん造るため、これまでは重量が重いミニバンやSUVに耐えられるプラットホーム造る。これが「上位統合」という概念だ。燃費効率の向上を求めて車体を軽量していく方向性とは逆の事態に陥っていた。しかし、燃費効率の良し悪しが商品力を左右する時代になっているため、結局は同じプラットホームなのに軽量化対策で違う部品を設計し、部品の種類が増えてコスト高の大きな要因となる。

 

 

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2014年07月27日

日産の設計革命、脱プラットホーム共有化戦略 No1

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2012/06/25 00:00井上 久男=フリージャーナリスト

1990年代の後半、ダイムラー・クライスラーの誕生(後に合併解消)、米フォードによるマツダの経営権取得(これも後に資本提携解消)、ルノーが日産自動車の筆頭株主となった資本提携など様々な合従連衡が相次いだ。  時をほぼ同
じくして、「プラットホーム共有化戦略」が業界の流行語になった。それ以前からトヨタ自動車における「マークII」「クレスタ」「チェイサー」、日産の「スカイライン」と「ローレル」といった同じプラットホームによる兄弟車種はあったが、こうした商品展開は、国内販売における複数の系列チャネルを効率的に維持するための戦略であった。

90年代後半以降の「プラットホーム共有化」は、ベルリンの壁が崩壊して「グローバル市場」という概念が生まれる中で、開発・設備投資を抑制しながらいかにグループとして世界市場を攻略するかに主眼が置かれたことで、ひとつのプラットホームから外観も性能も違う多くの派生車種を生み出した。投資を増やさずに車種をいかに増やしていくかという意味では、国内における「兄弟車種」戦略と発想は似ており、視点がグローバルになったということであろう。

その後、グローバル化は加速し、世界で約8000万台と言われる自動車販売のうち過半数を新興国市場が占めるようになった。こうした流れは、メーカーに多様な商品を要求した。単純化して言えば、経済成長が進んでモータリゼーションが起きている国では価格が優先されるし、新興国であっても貧富の格差が起こっており、高級車を求める富裕層は増えている。デフレ的な日本では軽自動車が主役になりつつある。

たとえば、同じエンジンであっても外気温などの環境条件やアクセルの踏み込み具合などを加味しながら最適燃焼になるように点火やバルブタイミングを調整する「キャリブレーション」という作業があるが、車種や仕向地が変われば、調整し直す必要があるため、仕向地が増えれば作業工数が増えるケースもある。  多くの派生車種を出すため、同じプラットホーム
でありながら性能や外観などの「味付け」を変えるために、多くの部品を設計し直してかえってコストが上昇するなどの本末転倒的な事態も起こっていた。

このため、自動車メーカーは、「プラットホームとは何か」「その共有化戦略はどうあるべきか」などの技術戦略を見直さなければ収益を出せない状況に直面している。特に2008年のリーマンショック以降、そうした動きは加速したように見える。
そもそも、今のようなプラットホームは必要かといった考え方も生まれた。各社によってプラットホームの定義は異なるが、シャシーなどのアンダーボディーがプラットホームの中核をなすものと考えてよいだろう。

そのプラットホーム戦略を見直している自動車産業は今、技術的に大きな転換点にある。エンジニアが仕事の進め方をゼロベースから再構築する時代が来ていると言った方が適切かもしれない。プラットホームという概念自体が消えてしまうかもしれないし、新しい戦略により、開発や生産の手法も抜本的に見直さなければならないからだ。  こうした中で、日産自動車は今年2
月、2013年から発売する新型車から「CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」と呼ばれる新しい開発手法を導入すると発表した。

これはまさにプラットホーム戦略の見直しであり、自動車のアーキテクチャーが変わるかもしれない「設計革命」であると筆者は感じる。

 

 

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2014年07月26日

グローバル市場で負けないものづくり No5

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個別最適からの脱却のために組織も見直す。車種ごとにいたCEを、車種群担当として大括り化して、車種群全体の開発に責任を持たせる。さらにCEは担当の車種開発が終われば人事異動で交代していたが、こうした習慣も改め、継続的に商品群を改良していく仕事の進め方を導入する。長期的視点で商品開発に取り組むための組織改正と言える。 合わせて調達方針も車種群ごとにまとめて発注するように大幅に見直す。下請け部品メーカーに影響のある部分だ。

部品の共通化が進むことで、複数の車種でまとめて発注する。さらに、これまでは同じ部品であっても国・地域別に発注先が違っていたが、原則としてグローバル規模でまとめて発注することで、コスト削減を進める。

すでにトヨタの小澤哲副社長は昨年11月の中間決算発表の際に、部品や材料の「トヨタ基準」を見直す方針を示している。たとえば、変速機向けの鋳造鍛造品などの材料は日本製を使うといった「トヨタ基準」があったが、それを改めて海外製でも使えるようにする。この背景には、グローバル調達を加速させる戦略がある。 こうした手法で開発した新車が2014年頃から市場投入される。製造原価は2割程度下がる見込みで、浮いた原資は新商品開発向けに回す考えだ。

トヨタに限らず、自動車産業では今、プラットホーム戦略が見直されている。同時にこれまでとは違う長期的な製品計画と連動して部品や構造の共通化を推進している。この2つを捉えて筆者は「設計革命」と呼ぶ。VWが早くからそれに取り組んでいる。日本ではマツダも「コモンアーキテクチャー」と呼ばれる同様の設計革命を展開している。日産自動車の設計革命は「コモンモジュールファミリー」と命名されている。

VWの方式は「レゴブロック」的と言われることがある。玩具のレゴブロックのように車種を超えて共通化した部品の塊を組み合わせていくイメージだ。日産の場合も、車両を大きく4つのモジュール部品に分けて、そのモジュール部品にバリエーションを持たせて組み合わせていく。現時点で54通りの組み合わせがある。VWも日産も「プラットホームという概念は消えた」と説明している。マツダも同様の考えだ。

特にVWと日産の車づくりは「パソコン化」しているようにも見える。車の構造がパソコン化しているという意味だ。ただ日産は「モジュール間の相互作用が安全面にも影響するため、それをどう適正にかつ効率的に繋ぎ合せるかが自動車メーカーのノウハウであり、パソコンとは違ってインターフェースを公開しない」と説明する。 トヨタも含めて各社によって「設計革命」の方法論は違うが、その根底には、前述したように商品力の強化とコスト削減を同時に展開しなければ、国際競争で劣後するとの共通した危機感が流れている。

長中期の商品戦略に基づき車の設計プロセスやそこに至る哲学を変えている点も各社共通のように見える。共通化を進めながらも味付けを変えなければ車ファンは逃げていく。自動車産業のエンジニアの力量が相当に問われてくる。一般の消費者には見えにくい部分だが、自社の命運がかかった新たなる熾烈な戦いが起きている。

 

 

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2014年07月25日

グローバル市場で負けないものづくり No4

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デザイン主導で生産技術の制約を排除
トヨタの開発改革に話を移すと、特徴的なものとしてデザイン至上主義への転換が挙げられる。これまでのトヨタでは製造ラインを構築する生産技術部門の力が強く、デザインを変えてもプレスで生産技術が対応できなければ、デザインを見直す傾向にあったが、こうした仕事の進め方も見直す。生産技術上の制約を排除し、デザイン優先の風土を根付かせるためだ。 たとえば、車体にシャープさを出すために、デザイナーがプレスで深い絞りをいれたいと思った場合、これまでは生産技術は対応する金型がないことを理由にデザイナーの要求を却下できていたが、こうした仕事の仕方を見直す。デザイナーの要求通りに設計し、生産していく体制を確立させたい考えだ。

今回公開したインパネの「ステッチライン」をデザイナーの要求通りに入れていくミシンの開発も、こうした流れの中から出てきた動きだ。これまではインパネの構造上、貼る前に縫い目を入れてそれを貼りあわせていたが、貼り合せた後に新開発の立体構造のものも縫えるミシンでデザイナーの指示通りに縫い目を入れていく。 トヨタはデザインという上流部から自動車づくり全体を見直していくことで、車の開発や生産技術、流通にいたるまで「バリューチェーン」全体の最適化を図る狙いもあると見られる。 もう少し詳細を説明すると、「もっといい車づくり」は(1)トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)(2)R&Dとデザイン体制の強化――によって構成されている。

TNGAではまず、トヨタの総生産台数の50%に相当する前輪駆動(FF)系プラットホームから設計革新に取り組む。「ヴィッツ」「カローラ」「カムリ」の3つのプラットホームに集約し、この3つをベースに複数の車種を開発し、部品や構造(レイアウト)の共通化などを進める。

プラットホーム戦略が大きく転換
冒頭で述べた従来のプラットホーム共有化と大きく違うのは、デザイン・設計の源流段階から10年程度先までの商品を同時進行で開発していく点だ。将来出す製品でも一気に部品の共通化を進めていく。 これまでのトヨタの開発スタイルは、プラットホームを共有化していると言いながらも、個別の車種ごとにチーフエンジア(CE)が存在しているために、搭載する部品は個別に設計したり、後発車種では設計を大幅に見直したりするなど、個別最適の設計をしているのが実態だった。

ここを見直す。プラットホームが同じあれば、部品や構造(レイアウト)を徹底して共通化する。たとえば、同じプラットホームでも、車種によってエンジンルーム内のレイアウトは違っていたが、今後は統一化していく。これにより部品や取り付け作業の共通化も進み、効率性が増すと見られる。 ただし、価格や車格によって性能は当然違ってくるので、性能までも共通化することはしない。部品やレイアウトの共通化を推進しながらも、「車の味付け」は変えるという力がエンジニアには求められる。そこを見誤ると、お客から「コスト優先の車づくり」との批判を招きかねないからだ。

 

 

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2014年07月24日

グローバル市場で負けないものづくり No3

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2日で生産ラインの長さを変更
筆者が注目したのは2点あった。ひとつは「治具」の共通化。エンジンのシリンダーヘッド加工の「治具」は、それぞれのエンジンごとに「治具」が存在していたのを、治具の構造を多軸から1軸化することで、トヨタの直列4気筒ならばすべて対応できるようにした。さらにこれまでの「治具」だと取り替えに約4時間必要だったのが、20分で済むようになったという。「治具」の重さは9割以上、投資も4割近くそれぞれ削減できた。エンジンの開発部署と生産技術部署が共同で取り組んだという。

こうした開発と生産の連動が、前述した製品の多様化とコスト削減を同時で展開していくうえでのカギになる。トヨタでは「工場付き技術部」という考え方をブラジルやインド、南アフリカなどの拠点で導入。本社に依存しなくても現地仕様車を現地主導で素早く立ち上げようという試みだ。こうした発想は、トヨタでは04年から始めた「IMVプロジェクト」で採り入れていたが、これをグローバルに水平展開していく。

話は少しそれるが、トヨタでは水平展開のことを社内用語で「ヨコテン(横展)」と呼ぶ。巨大な企業でありながら、これまでは動きが俊敏だったのはこの「ヨコテン力」があったからだが、「GM化」したことでこの力が弱くなっていた。そうした意味でも、トヨタの強みを再度鍛え直すということであろう。 もうひとつ注目したのは、生産量などに応じて長さを簡易に伸縮できる生産ラインだ。まさに「小さく産んで大きく育てる」ためのラインと言えよう。

これまでは車体を吊るして流していた組み立てラインを変えて、車体を台に乗せるような形で流す方式を採り入れた。生産ラインの構成自体をユニット化して取り付けや取り外しを行いやすくした。土日2日あれば生産ラインを再構築できるという。すでに昨年秋に稼働開始した米ミシシッピ工場で導入したほか、これから稼働する新興国の工場で順次導入する。 この「伸縮ライン」のもうひとつの効果は、生産現場の作業者の熟練度合によってラインを長くしたり、短くしたりできる点だ。

一般的に、ラインの長さが短い方が生産効率は高いとされる。熟練の「多能工」が複数の工程をこなせるため、作業者も減り、作業スペースも省略化されるからだ。ただ、「多能工」が存在するのは日本中心であり、新興国の工場では技能者が熟練するまでには時間がかかる。こうした場合、未熟な作業者に複数の工程を任せると、取り付けミスが起こるなど品質問題に発展しかねないため、ラインを長くしてでも単純工程を増やした方がいいケースもある。

現代自動車では、生産性向上のため、できるだけ工程を細分化して工程数を増やすことで仕事を単純化し、一人の作業者が複雑な仕事をしなくて済む方式に切り替えた。現代の動向に詳しい研究者によると、現代の1ラインでの工程数は日本メーカーの約2倍の300近くあり、ラインが長いという。このやり方だと、言葉が通じにくいうえ、熟練度合いが低い外国人労働者を指導しやすい。

これが現代自動車の海外工場の生産性を高めることにつながり、グローバル市場でシェアを拡大させていく原動力のひとつになったと言われる。 トヨタはこれまで述べてきたような生産改革によって、設備投資額を従来比で4割削減できるとしている。そこで生まれた原資を、よい製品づくりに回していく考えだ。

 

 

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グローバル市場で負けないものづくり No2

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皆さま大変ご無沙汰いたしました。今回の台風で7月15日より本日7月23日まで久しぶりの原始生活を送りました。今回は電気・電話が無い約1週間でしたが、我が家の発電機は近所を巡回しほぼ携帯電話の充電に活躍しておりました。

さて前回からの続きを再開いたします。

日本の自動車メーカーがもともと強かった分野だが、北米で売れる新車開発にリソースが集中的に投入されてきたため、単一車種しかつくれない製造ラインも生まれた。 こうした現状についてトヨタの豊田章男社長は「トヨタはいつの間にか車ではなく『お金』をつくる会社になった」と反省の弁を述べたことがある。「『お金』をつくる」とは、金儲け優先主義になって、多様な価値観のお客に顔を向けた商品をつくっていないという意味である。

前述したように新興国市場の台頭により多様な消費者の価値観に対応しなければグローバルにシェアは取れない時代になった。トヨタはやっとこれに気づき、これまでの車つくりの基本戦略を開発の生産の両面から大幅に見直し始めた。急激に進んだ円高もそれを加速させた。製品の多様化とコスト削減という矛盾することを同時に展開しなければトヨタといえども、生き残ることができない時代に突入したのである。

「いい車づくり」を目指すトヨタの構造改革
前置きが長くなったが、これから紹介するのは、「価値品質」を追求するためのトヨタの生産、開発における「構造改革」である。トヨタ社内では総称して「もっといい車づくり」と呼ばれ、09年に就任した豊田章男社長が掲げる「良品廉価」とい
う発想が根底にある。トヨタは4月9日と24日の両日、2回に分けて豊田市の本社地区で現場を見せながら、その取り組みを一部の報道陣に公開した。筆者もそれに参加した。 まず、生産現場での改革の方向性として3つのキーワードが掲
げられた。
(1)売れるスピードでつくる
(2)1個ずつつくる
(3)小規模につくる――である。これをよく見れば、トヨタ生産方式(TPS)の原点に戻ったことが分かる。

「売れるスピードでつくる」とは、まさに「必要なものを必要な時に必要な量だけ」というTPSの真髄を象徴している。「1個ずつつくる」もTPSで「1個流し」という概念があるように多品種少量生産の基本形である。「小規模でつくる」についても、
車の販売は水商売であり需要変動が大きいため、トヨタは過剰設備に陥らないように工場建設には慎重な風土があった。トヨタは工場を「小さく産んで大きく育てる」ことを得意としてきた。

しかし、トヨタにとって90年代後半からリーマンショックまでの約10年間は「バブル期」であり、身の丈を超えた急拡大が続いた。その象徴が米国テキサス州に巨額投資で新設したフルサイズピックアップトラック「タンドラ」の専用工場であった。そもそも「専用」という概念自体が、多品種少量生産を旨とするTPSの哲学に反していた。リーマンショック直後、このテキサス工場は閑古鳥が鳴いていた。 バブルで小回りの利かないトヨタは、いつの間にか「GM化」してしまった。

こうした反省を踏まえての生産改革であると筆者は受け止めている。 元町工場(豊田市)内にある生産技術開発棟で、新美篤志副社長(生産担当)らの実験ラインなどを見せながらの説明でも「シンプル・スリム」「変種変量」といったキー
ワードが強調された。

 

 

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2014年07月15日

グローバル市場で負けないものづくり No1

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Tech-on 2012/05/07 トヨタの革新は本物か   井上 久男=フリージャーナリスト


自動車産業ではこれまで、「プラットホームの共有化によってコスト削減を狙う」としばしば言われてきた。プラットホームという概念自体が各社によってバラバラではあるが、アンダーボディーなど車の骨格的なものの一部を共有化する(一つのプラットホームで派生車種を多くつくる)ことで開発投資を抑制する狙いがあった。 しかし、こうした従来の開発手法に限界が来ている。その大きな理由は、多様化する顧客の価値観にきめ細かに対応しなければならなくなったからだ。

2008年のリーマンショックを境目に中国や南米など新興国市場が急激に拡大し、市場のニーズの多様化が加速した。「車は文化」と言われるように、乗り方や求められる品質などは地域や国や道路環境によって違ってくる。これまでのプラットホームの共有化では、製品の多様化とコスト削減という二律背反的なことを同時に進めるのには限界が出始めているのだ。

工場で生産された段階の品質チェックで太鼓判を押された製品であっても、お客が求める品質水準と一致しているとは限らない。お客が求めている水準以上のものをつくればそれは過剰品質であり、以下のものをつくれば不良品である。当然、品質に対する顧客の価値観は地域や国によって違う。また同じ国や地域であっても所得水準など経済環境の差によっても違ってくる。過剰品質に陥れば利益は出にくいし、不良品を売れば顧客は逃げて売上は落ちる。

工場で検査される品質は「製造品質」、顧客が求める水準の品質は「価値品質」だ。そこのバランスを取る力が収益力を左右する時代になった。そして「価値品質」を向上させていくには、設計の発想やプロセスを抜本的に変えていく必要がある。

「価値品質」づくりが苦手なニッポン
これまでの日本の自動車メーカーは「製造品質」では世界を席巻してきたが、多様化した世界市場の中で「価値品質」が一流かと問われれば、筆者は疑問符を付ける。BRICS市場における日韓独のトップメーカーの販売台数(2010年)がそれを如実に物語っている。日本のトヨタ自動車がやっと100万台を超えたのに対して、韓国の現代自動車は約170万台、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は300万台に迫る勢いである。

トヨタだけに限らず日本勢は「価値品質」づくりが苦手だ。日本の自動車メーカーは北米市場で「ピックアップトラック」「ミニバン」「SUV」などの大型車をつくれば飛ぶように売れ、それらが利益面でも多大に貢献してきた。セダン系乗用車も北米市場に合わせて高級大型化してきた。 そこに安住してきた面も否めない。その結果、「多品種少量生産」「フレキシブル生産」といったものづくりの現場での多様化対応能力でさえも、いつの間にか劣化した。

 

 

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2014年07月14日

ビール通の素朴な疑問に No3

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「糖質ゼロで濃い味」ができた
普段は朴訥としているのに、技術的な話になると途端に目を輝かせて語り出す蒲生さんは、まさしく典型的なクラフトマン(職人)だ。プライベートでも大のビール好きという彼がキリンビールに入社したのは、同社のクラフトマンシップに強く憧れたから。そして、自分もその精神をしっかりと受け継いで研究を重ねていけば、必ずや答えに辿り着くと信じていたという。悩み続けていた蒲生さんだったが、とうとうブレイクスルーの瞬間がやってくる。

「繰り返しになりますが、糖質をカットするためには麦芽の使用量をかなり減らさなければなりませんが、そうなるとビール本来の美味さがどんどん弱まってしまいます。だから、この商品は最大限レベルまで使用しています。また、ローストした麦芽を使用していますが、その使用を思いついたことによって、糖質をカットしながらも麦の香ばしさが拡がる味わいを実現できました」麦の香ばしさ――。それは多くの人がビールをゴクゴクと喉の奥に流し込んだ直後に鼻孔のあたりで感じるフレーバーのことだろう。「とにかく、開発中は1日中ビールのことばかり考えています。それに、並行して他
の商品の開発も任されていて、そちらで用いている素材やアイディアなどが意外なヒントをもたらしてくれるケースも多い。カラメル麦芽も然りです。さらに、ファインアロマホップを使ったことで、引き締まった苦みと豊かな味わいを加えることができました」(蒲生さん)ビールの苦みを美味いと感じたらオトナの味覚になったとよく言われるが、それを醸し出すうえで大きく貢献しているのがファインアロマホップだろう。

こうした素材を惜しみなく用いることで「飲みごたえ」が実現されたわけだ。蒲生さんがたどり着いたこの「糖質ゼロのスペックと、コクや苦みの味のバランス」は、「まるで針の穴に糸を通すような、『ここしかない』という一点だ」、と工場の担当者から絶賛されたほどのものだという。長い歳月を経てついに大命題を解き明かした蒲生さんはその夜、同僚と祝杯を上げたそうだ。

「『濃い味〈糖質ゼロ〉』の開発期間中のことを思い出すと、胃の痛みが蘇ります……」と苦笑いする蒲生さんに、もう思い出したくない商品ですか?と問うと「いえいえ、むしろ、これだけ制約がある中で作り出さなければならないのはおもしろいです」という職人気質な答えが返ってきた。 「私もかなりのビール好きですが、中でも香りや苦味が強い
飲みごたえがあるものが好きなんです。そういう好みの私が、一消費者としても機能系だったらこれを選ぶ。自分が飲みたいものを作った、という思いがあります」

さらに、蒲生さんは満面に笑みを浮かべてこう言った。
「これからの季節はよく冷やして飲むのが格別でしょうが、奥深い味わいがあるだけに、個人的には常温で飲むのもお気に入りです。とにかく、ビールが好きな人に、もしくは、本当はビールが飲みたいのに身体を気遣って我慢して機能系ビール飲料を飲んでいる人に、ぜひとも一度飲んでみていただきたいと思っています」蒲生さんから開発の顛末について根堀り葉掘り話を聞いているうちに、「濃い味〈糖質ゼロ〉」が飲みたくなっている自分に気づく。

取材を終えるとその足で直ちに近所のスーパーに足を運び、蒲生さん自慢の1本を手に取った。そして家に着くや否や、喉を鳴らしながら瞬く間にそれを飲み干した。次の瞬間、脳裏に浮かんだのはこんな感想だ。 「なるほど、商品
名にもなっている"濃い味"とは、こうした味わいを表現していたのか。確かにこの味は……」最終的に味覚は個人の好みに帰着するので、あえて具体的な形容は控えておこう。

とにかく、健康に気を遣いながらも、けっして味でも妥協せずに愛飲できると確信したことだけは間違いない。

 

 

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2014年07月13日

ビール通の素朴な疑問に No2

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糖質ゼロと「コクや苦み、飲みごたえ。」これらを両立させるのが難しい
商品開発の大命題は「新ジャンルの商品で、糖質ゼロ、カロリーオフ、プリン体カット、そしてコクや苦味・飲みごたえはしっかり」。これは開発者にとって、「非常に高いハードル」なのだという。 「特に糖質をゼロにして
しまうと、どうしても味が薄くなってしまいます。どうやって飲みごたえのある味を出せるか。『糖質ゼロ』というスペックの部分と『飲みごたえ』という味の部分を両立させるバランスを見つけるのが非常に難しいんです」ビールを飲んで「ウマい!」と感じるキモは麦芽。

麦芽が多ければ飲みごたえは増すがその分、糖質も高くなる。麦芽に含まれるものをいかに減らすか。だが、減らしすぎてしまうと美味しくない。 「麦芽から糖質を削るのは『糖化』という工程の中
で行うんですが、ここで酵母が糖を食べることができる状態にするんです。だから糖を、酵母がいかに食べやすい状態に調整するかが大事になるんです。そういうことを何度も重ねたり……」。

味の引き出し方も難しい。使える範囲で最大限麦芽を使っても、飲みごたえが弱い。
「それをカバーするために、ブラウニングといって、アミノ酸と糖に熱を掛けてコクを出す、という技術があるんですが、それを組み合わせてみたり……。味わいを引き出す苦味にはホップが大きく影響しますが、多ければいいというわけではなく、その苦味を受け止められるベースが出来てないと、苦味ばかりが立ってしまってダメなんです」。

この他にも、蒲生さんは数え切れないほどの手法で試行錯誤を繰り返している。「何度も試験醸造を行っては、失敗を重ねていきました。当初の想定以上に膨大な時間を費やしましたし、なかなかバランスがとれなくて大いに悩みました」
商品開発研究所内では様々な新商品の開発が並行して進められており、同施設のエレベーター内には担当者たちを励ます意図で、「挫けそうになってもがんばろう!」といった趣旨のメッセージ文が掲示されている。

失敗が続いた時期は、あまりのプレッシャーから、それさえも直視できなかったと蒲生さんは振り返る。「ついに完成したと思って喜んだのに、改めて分析し直してみると、ごくわずかながらも糖質がゼロになっていないこともありました。そうなると、すべてやり直しです。研究の段階で着実にゼロを達成できるレベルまで達しなければ、大量生産の工場においてスペックを達成できる製品を製造するのは不可能ですから」(蒲生さん)

 

 

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2014年07月12日

ビール通の素朴な疑問に No1

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DIAMOND http://diamond.jp/articles/-/52760

節約志向を反映してビール業界でも価格が安い「新ジャンル」に人気が集まる中、糖質やカロリー、プリン体を抑えた「機能系」商品が続々登場。だがこれらは「味が物足りない」イメージがあるのも事実。そこで『ダイヤモンド・オンライン』きってのビール好きライターが、新ジャンルで「糖質ゼロ」のロングセラーになっているという「キリン濃い味〈糖質ゼロ〉」の開発者を取材。ビール通が抱く、味に関する疑問をぶつけた。果たして、本当にウマいのか?

「キリン濃い味〈糖質ゼロ〉」生みの親・キリンビール商品開発研究所の蒲生徹さんに聞いてきた! ビール職人も“糖質ゼロ”の商品は「味が薄く、少し物足りないなあと
思っていた」
ここのところ飲料業界で、血圧や血中コレステロールなどを正常に保つことを助けたり、脂肪分を吸収しにくくしたりする特定保健用食品(通称:特保)など、健康を気遣った商品が人気を博している。「特保コーラ」といった、今まで想像もつかなかったような新商品まで登場している。ビール業界にもその流れは押し寄せてきた。価格が手ごろで人気の「新ジャンル」に
おいても、「糖質ゼロ」や「カロリーオフ」、「プリン体カット」などの「機能性」を特長とする商品が目立つようになっている。だが、率直に言わせてもらえれば、こうした商品は「味が薄い」「物足りない」という感が否めなかったのも事実ではないか?特に大の"ビール党"ほど、そういった思いが強い気がする(事実、筆者もその1人だ)。実際、キリンビールが以前実施したアンケート調査で、「機能性」を謳ったビール系
飲料を過去に試したことがあるものの、今は飲んでいないと答えた人の中で、「味がおいしくない」との理由が最多を占め、それに次ぐのが「味が薄い」だったという。この消費者の声をビール会社はどう捉えているのだろう?そんな疑問を持って調べてみると、すでにキリンビールはこうした消費者の"不満"に応えるべく、「機能性」と「飲みごたえ」を両立させた商品の開発に注力していた。

その結果、ビール好きにも納得される飲みごたえを持った「糖質ゼロ」の新ジャンルの商品を2011年2月から市場投入。それが「キリン濃い味〈糖質ゼロ〉」だ。発売から3年たった今も飲み続けられるロングセラーとなっているという。ビールのうまみに大きくかかわる糖質をゼロにしつつ、しかも飲みごたえを出すという相反する特長を両立させることは、技術的にどう可能なのか?そもそも、本当に飲みごたえがあってウマいのか?

これは、「キリン濃い味〈糖質ゼロ〉」の開発を担当したビール職人から直接話を聞くしかない。そこで、キリンビールに取材を依頼すると、対応してくれたのがキリンビール商品開発研究所の蒲生徹さんだった。そう、彼こそが「キリン濃い味〈糖質ゼロ〉」を世に送り出したビール職人だ。ビール職人にとって、「機能系」はどんな味と感じていたのか、最初に疑問をぶつけてみると、返ってきたのは次の答えだった。 「味が薄く、物足りないなと私も思っていました」

「でも、その消費者の“不満”、つまりニーズから、この『濃い味〈糖質ゼロ〉』の開発がはじまったので、何としてもやってみたいと思ったんです」(蒲生さん)

 

 

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2014年07月11日

大阪の外国人観光スポット黒門市場    No4

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アジアからの客に人気の「フグ刺し」「イチゴ」
黒門市場の魅力は、日本らしい市場の雰囲気があり、地元の食材が豊富な点。珍しい野菜やきれいなフルーツ、日本の和菓子、お餅なども充実。おでんやコロッケなどを買ったその場で楽しめるのも人気
では、具体的に黒門市場ではどんな「日本の食」が人気なのでしょう。

 1位は「新鮮な刺身」「寿司」。中でも「フグ」は人気だそうです。香港ではフグは禁止されており食べられないとか。2位はお好み焼き・タコ焼きなど、大阪ならではの食べ物、3位にはラーメン・うどんなどの麺類。

 意外なところでは日本の菓子やフルーツも好評です。台湾の人たちには干し柿が受けているようです。一番人気はイチゴ。日本のイチゴは甘く、洗わずにそのまま食べられることに驚くといいます。

香港や台湾でも食の安全性に対する不安は強く、試食をして本物かどうか確かめたがる人が多いそうです。日本食はアジア各国のスーパーや百貨店でも売られていますが、非常に高価なため、日本で購入すると割安に感じるのでしょう。新鮮でおいしいものが安くたくさん食べられるという日本では当たり前のことが、海外ではとんでもなくすごいことで、私たち日本人が考えるよりもはるかに大きな、日本に来る動機付けになるのかもしれません。

黒門市場最大の魅力として挙げられているのが「食べ歩き」ができることです。黒門市場には買ってすぐその場で食べられるものも多く、食に興味があるアジアの人々には刺激的に映るようです。とにかくいろいろ食べてみたい、食べられるなら何でも食べたいという声も多いといいます。カニの刺身やウニがその場で食べられる。食材が豊富で、珍しい野菜やきれいなフルーツが並んでいる。おでんやコロッケなど地元の食、和菓子や餅などのスイーツも充実。独特の雰囲気があり、マグロの解体ショー、お茶屋、着物屋など日本らしさを楽しむこともできる。写真を撮影してブログに載せる人も多いといいます。

日本食への関心を国・地域別にみると、欧米は54.1%なのに対し、アジア・オセアニア地域ではオセアニア78.9%、香港78.6%、東南アジア77.4%、台湾71.4%と関心の高さがうかがえます。2013年の訪日客1036万人のうち、アジア全体で795万人(76.7%)を占めています。1位・韓国246万人(23.7%)、2位・台湾221万人(21.3%)、3位・中国131万人(12.7%)、4位・香港75万人(7.2%)、タイなど東南アジア6か国で115万人(11%)。訪日観光で「日本の食」がリピーターを呼ぶ、観光の起爆剤となる可能性を感じます。

黒門市場は今年度、大阪市営地下鉄、京阪水上バスとコラボを予定しており、黒門市場のマップの設置をそれらの主要駅に拡大。ヤマト運輸の香港支店ともタイアップし、ヤフー香港の通販ページに黒門市場の個店の商品を掲載、通販も開始するとのことです。

 

 

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2014年07月10日

大阪の外国人観光スポット黒門市場    No3

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市場内の無料Wi-Fi整備で高い利用率
調査では「休憩スペースがあって良かった」(61.2%)、「お店で買ったものを食べる場所があって良かった」(45%)、「臨時トイレがあって良かった」(35%)、「Wi-Fiでインターネットが使えて良かった」(31.9%)など、整備した設備がいずれも高い利用率と評価を得ます。この2回目の調査では、黒門市場で困ったことがあったと回答した人はなく、満足度の高さが分かります。

中でもWi-Fiは、実際にインターネット接続した人が65.8%、市場の店舗・イベント情報を検索した人が20.4%と、有効なツールとなっていることが分かりました。検索では繁体字を利用する人が88.7%と大半でした。回答者の年齢では20代(35%)、30代(32.3%)の情報端末を使いこなす若い世代が多く、市場で外国語対応が不十分な店があっても、その場でインターネットに接続できれば店探しやメニュー情報の入手が可能になります。

ちなみに観光庁の調査では、日本滞在中に得た旅行情報源で役に立ったものは「インターネット(スマートフォン)」(46.5%)、「インターネット(パソコン)」(35.5%)、日本滞在中にあると便利なものは「無料Wi-Fi」を挙げた人が47.0%と最も多くなっています。 黒門市場のアンケート調査では「土産物販売所があって良かった」という回答も24.6%と高かったのですが、実は訪日外国人消費動向調査で「観光地の土産店」の利用率は台湾が54.8%、香港が55.4%と高くなっています。

他の国からの訪日客の土産物購入場所は「スーパー・ショッピングセンター」(63.3%)、「空港の免税店」(54.3%)、「百貨店・デパート」(52.9%)が一般的。黒門市場はまさに台湾・香港の観光客の「観光地の土産物店で購入する」というニーズにドンピシャなわけです。 他の商店街や市場ではウインドーショッピングが中心で、実際に商品を購入したり飲食しない観光客も多い中、黒門市場の訪問の目的は「飲食」(50%)、「自分のための買い物」(45%)、「お土産などの買い物」(32.3%)が上位を占め、「見学」は30.4%。

黒門市場には訪日旅行の最終日に来るという人が多いことも分かりました。最後に余ったお金でお土産をここで買う人も多いのでしょうが、黒門市場の人気の理由は新鮮なものが食べられることにあります。黒門市場の食べ物のおいしさを挙げた人は61.5%。旅行の最後に黒門市場でおいしいものを食べようという人も多いのでしょう。 黒門市場の魅力としては、「日本的だ」(55.8%)、「楽しい」(50.4%)、「珍しい」(25.8%)、「活気がある」(25.5%)、「品揃えが良い」(22.3%)と評価されています。

二度目の調査では、黒門市場の情報をどこで知ったかと言う質問に対して、42.7%が「観光ガイドブック」を挙げています。海外のガイドブックでもそれだけ黒門市場が大きく取り上げられているということでしょうか。

 

 

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2014年07月09日

大阪の外国人観光スポット黒門市場    No2

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黒門市場が訪日客誘致を本格化したのは2012年10月。着物姿の女性が外国人観光客に対して市場案内を行う「観光コンシェルジュサービス」を3カ月間にわたって実施するとともに、アンケート調査を実施し、訪日客408名から回答を得ました。その結果、黒門市場に来ている外国人はほとんどがFIT客(個人旅行客)で、特に香港(35%)、台湾(23.5%)からの観光客が多く、中には大阪に4日、京都と合わせて1週間など、関西に長期滞在する人が多いことも分かってきました。

さらに、黒門市場を何で知ったのかについては、インターネットやブログ、友人の口コミ、ガイドブックのほかに、観光案内所やホテルなどに置かれている外国人向け多言語観光マップ「EXPLORER OSAKA/走遍大阪」を挙げる人が
多く見られました。 調査結果から外国語マップの有用性を痛感し、まずは南端の通り(南黒門会)からマップの作成を開始。翌2013年度には「観光対策委員会」を設け、取り組みを市場全体に広げます。

マップへの掲載は有料のため、掲載店舗は現在33店ですが、誌面は英語・繁体字中国語に対応し、黒門の人気コンテンツが魅力的な写真入りで紹介されています。黒門市場の魅力がギュッと詰まったその誌面作りに協力しているのは「EXPLORER OSAKA/
走遍大阪」を発行する会社エースキューブ。外国語版マップ(A5版フルカラー小冊子)は約8万部を発行。大阪市内の観光案内所84カ所、梅田、難波、関西国際空港などの周辺の宿泊施設に置いてもらっています。

また、訪日客に「黒門市場で困ったこと」を聞いた調査結果では、「ごみを捨てる場所が分からなかった」「メニューが日本語しかない」「休憩する場所がない」「自転車が多い」などの意見が寄せられました。黒門市場ではこうした課題に機敏に対応。各店舗に設置するポップの翻訳、自転車やバイクでの走行禁止などに取り組みました。2013年末にはちょうど売りに出た市場内の物件を購入し、無料休憩所とトイレ、さらにWi-Fi環境を整備しました。

市場内では大きな垂れ幕で無料休憩所などの情報を分かりやすく掲示。以前から市場の南端の通りは客数の少なさが課題となっていましたが、休憩所が南側にできたこと、大きな垂れ幕を各所に設置したことで北から南へ客の流れを創ることにも成功しました。 黒門市場では施設整備後の2014年1月、改めて無料休憩所で「WiFi・スマートフォンを使用した集客実験」と、アンケート調査を実施。20日間で260人の回答を得ました。

この時は春節の時期だったこともあり、台湾(48.1%)、香港(31.9%)からの観光客は全体の80%を占め、前回調査の58.5%を大きく上回りました。さらに、黒門市場に初めて来たという人は72.3%、2回目、3回目というリピーターは27.7%という数字が出ます。外国人観光客の4人に1人以上がリピーターという観光地は、果たして日本にいくつあるでしょうか。

 

 

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2014年07月08日

大阪の外国人観光スポット黒門市場    No1

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日経ビジネス    http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140616/266904/?P=1

平日の午前中から多くの買い物客で賑わう黒門市場(大阪市中央区)。地元客に加え、多くの観光客が訪れる。中でもアジア系の外国人観光客の姿が目立つ。商店街のアーケード内には無料休憩所、トイレ、Wi-Fiスポットの施設案内が外国人にも分かりやすく表示され、実際に利用する外国人も多い。  観光地にとって最大の課題はリピーターの獲得です。

観光庁の「訪日外国人の消費動向報告書(平成26年1-3月期)」によると、日本への再訪意向で「必ず来たい」と回答した人は56.6%。「来たい」37.1%と合わせると93.7%の人がまた日本に来たいと答えています。

人気観光地や有名な名所旧跡を、二度以上訪れる人はそれほど多くありません。リピーターは何を求めて再び日本に来るのでしょう。 同調査で今回の滞在中にしたいことを訊ねたところ、1位は「日本食を食べること」(91.9%)で、2位の「ショッピング」(69.7%)、3位の「繁華街の街歩き」(49.1%)を大きく引き離しています。また、「日本食を食べること」は次回したいことでも85.1%で1位となりました。

昨年12月、ユネスコ世界無形文化遺産に「和食」が登録となり、国内では観光資源としての「食」への関心が高まっていますが、海外では「日本の食」はどのように評価されているのでしょう。国や地域によって、そのニーズに違いはあるのでしょうか。 かつて、外国人に人気の日本食は「寿司」「天ぷら」「しゃぶしゃぶ」と言われました。ところが2010年のJNTO(日本政府観光局)「訪日外客訪問地調査」で人気上位となったのは、1位「寿司」(44.0%)、2位「ラーメン」(24.0%)、3位「刺身」(19.7%)で、4位には「うどん」(10.8%)が入っています(「天ぷら」(9.7%)は5位)。

ちなみに台湾では、2009年にラーメンが寿司を上回ったといいます。そこから4年を経て、外国人は今どんな日本食に関心を持っているのでしょうか。 今回は、食で訪日リピーターを呼び込む“天下の台所”、大阪の「黒門市場」の人気の秘密に迫り、訪日観光における食の可能性を探ってみます。買ったものが店内で食べられることを伝える手書きのポップ。:黒門市場の無料情報冊子。/EXPLORER OSAKA黒門市場
特集(日本語)、/英語・繁体字中国語版の市場オフィシャルガイドマップ。:黒門市場では見物や写真撮影だけでなく、実際に食事や買い物を目的に来る外国人観光客が多い

黒門市場には多くの外国人客が訪れています。それを強く意識したのは、2011年の東日本大震災の直後でした。黒門市場商店街振興組合の事務長、國本晃生さんは「震災後、市場内はがらがらになって。こんなにもたくさんの外国人が来ていたのか、という声があちこちで上がった」といいます。半年も経たないうちに外国人客は戻ってきましたが、その時の危機感が現在の訪日客誘致の取り組みに繋がったのかもしれません。

 

 

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2014年07月07日

じつは世界の寿司ブームを支えていた!?      No3

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第二次世界大戦後、酢は不遇の時代へ それでも地方には良いお酢が残っている
「南九州は温暖ですから、今のように空調とかない時代は魚の保存をはじめ酢で保存性を高めるということで酢はよく使われていたと思います」大山食品ではタンクで米酢もつくっているが、それも非常にバランスがよく美味しいものだ。大手メーカーなどが採用している方式を否定するつもりはないが、水と米、それに昔ながらの時間をかけた発酵方法(静置式醸造法)でつくっているおかげだろう。酢は時代に翻弄された調味料のひとつでもある。例えば戦後の食糧難の時代に多く供給された『合成酢』問題がそうだ。

酢にはふたつの作り方がある。酒からつくる『醸造酢』と、酢酸を希釈した中に甘味料や塩、グルタミン酸などを加えてつくる『合成酢』である。戦時中、酒作りに米を使うのを禁じられていたため、やむなく生まれた『合成酢』は、戦後かなりのあいだまで流通していた。1960年代の終わりに社会問題化し、1970年に公正取引委員会によって「食酢の表示に関する公正規約」が定められる。その後、JAS規格の制定により「醸造酢」「合成酢」の表示が義務づけられるのは、1979年になってからだ。それまでの日本の消費者は酢に対してこだわりなどたいして持ってなかったのかもしれない。

『合成酢』に関わる騒動は日本酒の三倍増醸清酒と時期が重なる。いわゆる三増酒は第二次世界大戦後、米が不足したことから、清酒に水やアルコール、酸味料などを添加して味を調えたものだ。これも1970年代までは主流で、後になって日本酒のイメージを大きく傷つけることになる。「この頃の日本酒はまずかった」というのは今ではよく聞く話だが、食をテーマにしているとすぐに『昔は良かった』という話を聞かされる。いつも「本当かなぁ」と半信半疑なのだが、少なくても酢や酒に関しては一昔前は不遇だったといい。

大手メーカーが出している酢にもおいしいものはあるが、そうでないものもある。米酢と穀物酢の使い分けも消費者としてはなかなか難しい。酢は実際に料理に使わないと、その良し悪しがわかりづらい食べものだからだ。かつて、いいものをつくることを志しても、つくれない事情があった。大量生産、大量消費の時代のなかでいいものも埋もれていった。しかし、日本にはまだ良心的な食べ物をつくる人々がいるということを、地方を訪れると実感できる。

「最近はドレッシングとか、加工酢とかが増えてきました。お酢屋さんはご存じの通り、大手のシェアが強くて、他県のお酢屋さんはどんどん減ってきていて。九州にもその流れがあったんですが、地元で固まってそれで残っているという部分もありますね。米酢とかは家でもっと使ってほしいんですけどね」二杯酢や三杯酢の違いなど、改めて聞かれると答えに窮してしまう人は意外に多いのではないだろうか。

ポン酢などの便利な混合調味料の普及によって、家庭で酢を料理に使う機会は減っている。ちなみに二杯酢は醤油と酢をあわせたもの、三杯酢はそれにみりんか砂糖を加えたものだ。旨い酢をつくる重要な要素のひとつである水を生む照葉樹林帯は、林業なくしては存在しえない。自然の恵みを享受しつつ、自然に積極的に介入し、自らその一部になることで、日本人の暮らしは成り立ってきたのだろう。それぞれの土地の自然がもたらす味、日本の味とはその集合体なのだ。

石塚左弦が残した『春は苦み、夏は酢の物、秋は辛み、冬は油』という言葉があるが、時間をかけてつくられた酢は日本人の暮らしを下支えしてきた。梅雨が明ければ、これから暑い夏がやってくる。今年の夏は酢で乗り切るとしよう。

 

 

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2014年07月06日

じつは世界の寿司ブームを支えていた!?      No2

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大山食品では黒酢や米酢をはじめ、果汁を混ぜた飲めるタイプの酢など様々な製品をつくっているが、それらはすべてこの土地の恵みと言っていい。ところで本物の黒酢作りは「畑」で行われることはご存じだろうか?「畑」といっても作物を育てるわけではない。南斜面にある畑には雨よけのアルミ傘をかぶった大きな甕がずらりと並び、太陽の光を反射してまぶしいくらいだ。黒酢を育てるのは南国の太陽の力なのである。

畑と呼ばれる場所。太陽エネルギーを利用してるわけだから、エコ。昔ながらの日本の技術は今の時代にこそ見直されるべきかも。「この甕は元々、焼酎をつくるのに使っていたものを譲り受けたものです。こうした甕をつくっているところももうほとんどないので、なくなってしまうと困るものですね。ちなみに焼酎の甕はいいんですけど、漬け物屋さんの甕は乳酸菌が住み着いているので、酢作りには使えないんですよ。

この瓶のなかで綾産の有機玄米と地下水、黒麹、種酢を入れて、発酵させます。昭和5年の創業以来、なにも変えていません」甕の口は米袋でふたをし、そこに五円玉を置く。五円玉の色の変化で、内部の発酵状況を見極めるそうだ。

「銀行さんには怒られちゃうかもしれないですけどね」
大山さんはそう言って、静かに笑う。酢作りの工程は実にシンプルだ。甕に種となる酢を入れ、米麹と蒸した玄米、水を入れ、その表面に振り麹で蓋をし、真っ赤に焼いた炭を投入してすぐに紙蓋をする。そうしてただひたすら待つのである。待つこと6ヵ月。屋内タンクに移してさらに6ヵ月間待って、ようやくできあがる。機械速醸法という方式で1日でつくることのできる酢も世の中にはある時代に、昔ながらの味をつくるのにはやはり時間がかかるのである。

「通常だと1年や2年、寝かせるものですが、今は試験的に5年寝かせたものをつくっているところです。かなりいい感じに、熟成が進んでいます」気の長い話だが、プレミアムな酢ができるのが楽しみではある。ところで甕で仕込む前に焼いた炭を入れるのが大山食品独特の製法だ。

──それにはどういう理由があるんですか?
「それがよくわからないんですよ。色々調べたんですが、ほかにそういうところをやっているところはない、と。炭は多孔質で微生物にいいとか、場を良くするとか、色々とあるんだと思うんです。でも、昔からやっていたからとにかくそれを守っていこう、と」理由はわからないというが、とにかくそうした製法を受け継ぐことで、大山食品の黒酢の味は守られている。鹿児島の黒酢に比べるとすっきりとした味わいだが、成分分析を見ると酢酸以外の成分の多さに驚くだろう。なにより旨味成分となるアミノ酸が非常に豊富で、直接飲めるのはもちろん料理に使うのにとてもいい。

 

 

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2014年07月05日

じつは世界の寿司ブームを支えていた!?      No1

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http://diamond.jp/articles/-/55417 2014年7月2日

樋口直哉 [小説家・料理人 1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

最古の調味料「酢」に見る控えめな日本らしさ
先日、縁あって宮崎県を訪れた。東京から飛行機で2時間弱、意外と近いというのが印象だ。空港を出ると南国らしい県木、フェニックス、通称ヤシの木が出迎えてくれる。この木は宮崎市内のあちらこちらで見ることができる。「あの木がね、宮崎県人の労働意欲を削いでいると思うんです」案内してくれた地元の人間がのんびりとした口調で言うが、たしかに宮崎はいかにも南国らしいのんびりとした土地だ。日本は小さい島国だが、南北に長く、気候も文化も多様である。

南の気候が育てた食文化のひとつに「黒酢」がある。黒酢といえば鹿児島が有名だが、宮崎でも元々薩摩藩だった東諸県郡では酢作りが行われている。今回はそこで伝統的な酢を製造している大山食品を訪ねた。地方を訪れると思いがけず、いい食材に出合うことがある。大山食品の酢もそのひとつだった。人間の最古の調味料と呼ばれる酢は酒文化とともにあって、その国の特有のものだ。ワイン文化の熟成した西洋ではワインビネガー、あるいはシードルからはりんご酢が生まれた。

モルトビネガーはビール文化圏であるイギリス料理を形作る。我が国には5五世紀頃から米を使った酢が「からさけ(苦酒)」という名前で存在していた。海外に行くと意外と困るのが、質の良い米酢の入手だ。外国人が大好きな寿司も質のいい米酢がなければつくることはできない。酢というのは不思議な存在で、普段は決して目立たない。けれど、たしかに日本の味を支えている。

1日でお酢が作られる今の時代に1〜2年かかる昔ながらの製法を貫く
昭和5年創業の大山食品は綾町にある。綾町は有機農業の里と知られる。“自然生態系を生かし、育てる町にしよう”というかけ声とともに昭和63年から農薬や化学肥料を使わない有機農業を町ぐるみで推し進め、林業が衰退するなか照葉樹林都市・綾として、早くから国有林の保護に取り組んできた。それらのこともあり、綾町は名水百選に選ばれる「綾川湧水群」のある、水のいい土地としても知られる。

大山食品の敷地に入ってすぐの場所にある湧水から、手のひらで水を掬って試飲させてもらった。この湧き水がものすごくおいしかった。僕の生涯でもベスト5に入る水だった。純粋そのものなのに、丸みがある。湧水が美味しいのは山の照葉樹林と腐葉土のフィルターを通り、できたての酸素を含んでいるからだ。だから、味わうと気持ちまで軽くなる気がする。「癖がないのが癖、というか。特徴ですね。殺菌するために沸かしたりすると、もう駄目になってしまいます。

もっと悪いのは塩素ですけど。時々、買い物にきはる人が持って帰ったり、一度ここの水を味わうと他のは飲めないって言いますね。この水の良さはやっぱり山のおかげなんですね。山によって濾過された伏流水です。お酢作りに重要なのは水と米です。米は近隣でとれたものを使っています」お話を伺った大山食品、代表取締役社長の大山憲一郎さんはそう言う。「発酵が大好き」という社長は穏やかな口調で話す宮崎県人だ。

 

 

posted by タマラオ at 06:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記