2014年04月02日

ベトナムで企業経営のヒント    No2

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一方、ベトナムの自動車産業は、まだ相当に小さい。2012年の新車販売は9万台弱。タイの15分の1程度にすぎない。これでは、ベトナムに人は集まってこない。 自動車の需要が少ない最大の原因は、ベトナム政府の一貫性を欠いた政策にある。政府は、自動車産業を是非育てたいと言う一方で、実際の政策はむしろ需要を抑制してしまっている。 例えば、2012年には、自動車登録料の大幅な引き上げ、ナンバープレート交付手数料の値上げ(10倍)を行った。その結果、自動車販売台数は、対前年で減少している。

もっとも、ただでさえバイクがイナゴの大群のように走る道路に、車があふれかえっても困る。 家の前の道路が大渋滞で、駐車場から車を道路に出すだけで1時間かかる(そして、一度出たら最後、戻るのには、その数倍かかる)と言われた昔のバンコクのようには、誰もなりたくない。 自動車の需要を喚起しつつ、渋滞をコントロールするような政策がベトナム政府には必要とされる。

裾野産業向けの優遇措置(楽市楽座)
一方、次に、裾野産業を育成するための優遇措置が重要となる。これは、一種の楽市楽座のようなものだ。要は、城下町をさらに大きくするために、商人(今回の場合は、裾野産業の担い手)がドンドン集まるための仕かけがいる。 一番分かりやすいのは、裾野産業向けの税金を安くすることだ。かつてタイでは、射出成型などの業種に対して、8年間の法人税免除などを採用していた。 一方、ベトナム政府は、こうした優遇措置はなかなか実現できない。

我々(DI)は、現在、ベトナム南部のバリアブンタウ省という省の戦略アドバイザーをやっている。具体的には、省の産業発展戦略を見直し、日本企業を誘致するための戦略を考えている。 バリアブンタウ省の人民委員会委員長をはじめとする幹部も、我々と議論をすると、二言目には「裾野産業」と言ってくる。 しかし、ベトナムの中央政府は、歳入減少をおそれ、特定産業への優遇税制の適用にはかなり躊躇している。その結果、裾野育成は何も進まないという状況に陥っている。

難しいベトナムの立ち位置
ベトナムは、不幸なタイミングでこの裾野産業の育成という課題に直面していると思う。 裾野産業の育成は、全ての新興国にとって共通の課題だ。タイやインドネシアは、何十年も前からこの課題に取り組んできた。当時は、AFTAのような自由貿易の仕組みはなかった。よって、高関税による保護貿易政策により、現地部品サプライヤーの成長を促す時間的な余裕が許された。今のベトナムには、その余裕はない。ASEAN域内の関税撤廃が、数年以内に、容赦なくベトナムの製造業を襲ってくる。

ちなみに、ミャンマーという国は、この流れを逆手に取って、差別化を図る余地がある。東南アジアの最後発プレイヤーであるため、低賃金を武器にした戦い方をしても、後続ランナーがいない。 ほとんどの日本企業は、ミャンマーの隣のバングラデシュの方が賃金が多少安いからといって、バングラデシュには出ていかない。日本民族にとって、歴史上接点のきわめて薄いインド系文化に対する漠然とした不安感が理由なのだろう。

もし、仮に、本当にトヨタがベトナムから撤退するようなことが起これば、その影響は大きい。自動車産業という基幹産業の1つに蓄積されてきた技術が失われるだけでなく、国際社会に対するベトナムのイメージ上もマイナス要素が大きい。
今後5年でタイやインドネシアに匹敵する裾野産業を育成することは不可能だ。ただし、9000万人の人口を盾に、自動車産業発展の青写真をきちんと描いていけば、トヨタをはじめとする自動車メーカーはベトナムの魅力を捨てることはできないだろう。 ベトナム政府には長期的な視点での政策を打ち出すことが求められている。

 

 

posted by タマラオ at 06:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記